めいろまさん(@May_Roma)こと谷本真由美さんが3年ぶりに日本に帰国されました。これを記念して、アゴラ編集部では独占インタビューを敢行しました。今回は第三回目になります。(第二回はこちら)
——日本に帰ってきて「マネジメント層がますます決めなくなってきている」とおっしゃっていましたね。
めいろまさん(以下、めいろま):日本は幹部層や管理職の意思決定が遅く、利益率を重視した経営判断や、先送りばかりして損切をしないのが問題です。イギリスの幹部層や管理職は日本では驚くほど迅速な意思決定を行います。普段から業績評価が厳しいからなんですね。日本の場合は彼らが厳しい評価に晒されませんので、決定が行われないのです。
——アメリカでは解雇された人が労働市場に戻ってこずに人手不足になっていますが、イギリスはいかがですか。
めいろま:欧州のコロナ禍における人員削減はアメリカほどではありませんでしたが、しかしイギリスも大陸欧州も日本とは比較にならないような大規模な解雇やレイオフを行いました。私の知人の何人かも解雇になっています。持病や家族の事業があってもおかまいなしです。部署ごとの解雇もありました。
解雇になっても失業保険は週にたった1万円です。
中流階級のサラリーマンの中には住宅ローンや学費が払えず破産した人がかなりいます。私立の学校も、学費が払えないために退学する生徒が目立ちました。競売にかけられる住宅も目立ちます。住宅ローンが払えないからです。
レイオフはコロナ禍後に復帰できるという合意がある場合も多かったのですが、その多くは解雇になってしまいました。
人員整理が顕著だったのは航空関係で、その他小売や流通、建築、サービス業も目立ちました。
昨年後半より雇用は増えてきたのですが、解雇になった人々は同じ仕事には復帰しませんでした。もっと条件の良い仕事に移動してしまいましたので、イギリスだけではなく欧州では人員不足で業務が全く回らないような業界が少なくありません。
例えば今年の夏は欧州の空港業務が麻痺していますが、理由は人員不足です。鉄道やバスも減便だらけで出勤できません。当然生産活動に大きな影響が出ています。
新しい人を雇用するにも訓練にはある程度の時間とコストが掛かりますし、募集コストも安くはありません。その上コロナ陽性で出勤できない人も多いので、要因不足に拍車がかかっています。
要員不足ですので、当然賃金も高騰しています。賃金の高騰は企業経営を圧迫しています。
日本企業はコロナ禍でも、人員削減はかなり抑えましたから、欧州や北米の様な人不足は目立っていませんし、失業率も低い。経済活動における影響が最小限です。日本企業には人員を維持しつつ、コロナ禍でも業務を回すための内部留保や余力がありました。中長期で物事を見ています。大変保守的な経営手法ですが、その保守さがコロナ禍ではかえって良い方向に作用しましたね。日本的な経営にも良い部分があるということです。
——めいろまさんは、結果としてはとても素晴らしいキャリア選択を重ねられてきたように思えますが、ご自身で振り返ってみるといかがでしょうか。
めいろま:私はキャリアと呼べるような立派な物があるとはいえないかもしれないのですが、一般的なサラリーマンの方とはかなり異なる経路をたどってきたのは明らかですね。まあ、あまり普通とは言えないでしょう。
最初は大学院を出た後に、ネットバブルの最盛期で、大学院では情報管理を勉強していたのもあり、日本の某ネットベンチャーで雇ってもらいました。
サンフランシスコのジョブフェアに行った時に幹部の方にお会いしたら「君何がやりたいの?」といわれ「アメリカで鮮魚が買えなくて苦労したのでネットで魚を売りたいのですが」といったら「じゃあ来週から来れば?」と言われたので、卒業してすぐに就職したのです。
帰国子女の方や、海外で学位を取った方、金融や事業会社、ゲーム会社、芸能界など実に様々な業界出身の方が多いチームで、合弁会社の設立や企業買収の事業企画をやらせてもらいました。様々な業界出身の方がおられたので、多様な職場や業界のお話を伺うのが実に面白く、毎日会社に行くのが楽しみでした。女性も多かったです。
官僚主義とは無縁で、非常に柔軟かつ楽しい社風の会社で、管理職方や幹部の方も遊び心がありました。自分が初日にスーツで出社したら「なんか面白い人が来たよ」とどっと笑いが湧いたのを覚えています。
若い人に自由にやらせようという雰囲気だったので自分にあっていたと思います。会社に行っているというよりも、毎日大学の同好会やラボに行く感じでしたね。皆服装も自由で、金髪やパンクファッションでも問題ありません。外国人の幹部や管理職の方もいます。
しかし自分は学生に毛が生えたような状況で、起業家や経験が豊富な方々の働きを目にしたのもあり、もうちょっとビジネスに関して体系的な形で勉強が必要だと思い、先輩に勧められたのもあってコンサルティングファームに転職します。
——現在の分析的な視点はそのころ身につけられたのですね。
めいろま:そうですね。経験豊富なマネージャの方に随分と鍛えていただき、ドキュメントの作り方、文章の細部から挨拶の仕方、戦略的な考え方まで色々と教えていただきました。文章の書き方もほとんどがその頃に身に着けています。
お客様は上場企業の幹部クラスの方や官公庁の方ですので、大企業のトップや経営層の方々が直面する課題に対して提案を行ったり、海外の先進事例の調査やインタビューを行い、それが経営方針に反映されるのには大変なやりがいがありました。
前職では起業のやり方やスタートアップの回し方を現場で学ばせていただき、この仕事ではもう大企業や官庁、研究所などのビジネスのやり方を学べましたので大変勉強になりました。
その後国連専門機関でたまたま募集があり、欧州でも働いてみたいなと思ったので直接応募して採用されました。
この職場では専門職として情報通信官をやっていましたが、事業所がアフリカや中東、紛争地と世界各地にあり、同僚も様々な国の人でしたので、日本では想像できないようなことに直面しました。多国籍組織の仕事のやり方に触れることができて勉強になりました。
国連機関は組織運営や仕事のやり方は、北米や欧州北部のやり方ですので、その後欧州系の金融に転職しますが、その際にもスムーズに働くことができました。
現在も当時からやっているITガバナンス、システム監査、IT規制調査やIT市場調査などもやっています。
——インターネットやツイッターとはどのような出会いだったのでしょうか。
めいろま:ツイッターは今の昔もあくまで趣味でやっています。かなり初期の頃からやっていますが、元々友人が迅速にボカロの作品のリンクを共有したいからアカウントを作ってというのではじめました。メールだと開くのが面倒ですからね。何を発信したかったからというわけではありません。今も基本的に友人や知人との交信に使っています。
初期のツイッターの使われ方は今とちがっていたような気がします。最初は実にゆるいネタの投稿が多く、新しもの好きのユーザーが川柳をやっていたりしましたね。技術の話もゆるくネタ投稿ができてよかったですね。まあ創業者の意図した使い方ではないんでしょうが。テキストサイトのリアルタイム版のような感覚でしょうか。
しかしチャットよりも多くの人と交流できますし、迅速性もあるのでなかなか面白かったですね。感覚としてはパソコン通信の感じに近かったかな。自分はパソコン通信と2chの世代なのでこういうノリには合うのです。ただしスマートフォンから入ってきて使う人が増えて雰囲気が激変しましたのは残念でありますが。
——世代的にとても親近感を感じます。
その4につづく
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谷本真由美さん @May_Roma (めいろま)
ITコンサルタント。専門:ITガバナンス、プロセス改善、サービスレベル管理、欧州IT市場および政策調査。ITベンチャー、経営コンサル、国連専門機関情報通信官、外資系金融機関等を経て日英往復。趣味HR/HM。仕事依頼 Twitter @May_Roma