携帯電話サービスの地域格差の是正(続き) - 松本徹三

2009年05月05日 05:05

前回の記事に対しHogeihantai様から貴重なコメントを頂きましたので、先ずはそのことから書きたいと思います。私もこの方と同様、通信サービスの整備に税金を投入することには反対です。また、何でもかんでも地方と都市部のサービスレベルを同じにすべきとも思っていません。山の上に家を建てて住めば、日常生活を送るために必要な水も、食物も、燃料も全て高くつくのは当然で、その代わりおいしい空気を吸い、素晴らしい景色を堪能できるのですから、これでおあいこです。情報通信サービスが十分でなくても、これまた文句の言える筋合いではないと思います。それでは、これまで何回にわたって言ってきた「光通信網を全国津々浦々に整備せよ」とか、今回の「携帯電話の『圏外』をゼロにせよ」等という論旨と矛盾するではないかと言うことについて、以下説明をします。


先ず携帯電話については、現在の有線電話の「ユニバーサルサービス」同様に、業界で資金をプールして、総務省の監督下で、公正且つ適切なルールに基づいて整備・運営を行うべきです。
 
勿論、「全国的な光通信網の整備」ということになると、これは壮大な計画ですから、こんなやり方ではとても賄いきれません。結論から言うなら、これに対し ては政府保証の「目的債」を発行すべきです。かつての電話債券は受益者に債券の買取を求めましたが、これは「インターネットを駆使できる次世代の若者の育 成」「遠隔ワークの推進による都市人口の分散」「農業振興」などの「長期的な国家目標遂行の為の手段」として行うべきもの故、受益者負担にはそぐわず、通 常の国債に準じた扱いとすべきです。但し、「目的債」として、きちんとしたプロスペクタスを書き、海外の投資家に対しても鋭意販売していくべきで す。(きっと多くの買い手がつくでしょう。)
 
さて、話を携帯電話サービスに戻すと、「日本では、安い無線システムが開発される以前の段階で、その時点では最も安かった有線電話網を全国津々浦々まで普 及させたのだから、現時点で携帯通信サービスに多少の穴があっても、ケニアより遅れているといわれる筋合いはない」と言うのもその通りではありますが、 「農作業中でも連絡が取れる」「訪問客もいつでも電話がかけられる(受けられる)」などのメリットもあり、現在の携帯電話の方が有線電話より便利なことは厳 然たる事実です。更に、最近の携帯通信システムは既にある程度のブロードバンドの能力を持ってしまっていますから、これまでの有線電話との格差は更に広がっています。
 
遅れていたところがいきなり最新鋭の技術を採用することで、進んでいたところを一気に追い抜くことを、俗に「フロッグ・ジャンプ(蛙跳び)」と言います が、皮肉なことに、これまで地方の通信網に手がつけられなかったケニアの農村に住む人達(或いはそこを訪れる人達)の方が、国力の差のおかげで十分早い時 点から電話を手に入れた日本の過疎地域の人達(或いはそこを訪れる人達)より、現時点ではより多くの便宜を得ているのも事実なのです。
 
話は変わりますが、日本人は優秀であったため、明治維新以来殆ど全ての分野で日本語の教材が整備され、大学でも殆どの授業が日本語で受けられるようになり ました。しかし、そのおかげで外国語の授業がなくなり、学生達は外国語に熟達せずとも卒業できるようになったので、他国の学生達と比べると外国語の能力が 平均的に極めて低くなってしまいました。このことが、各方面での日本の国際競争力と、国際的なプレゼンスの低下の一因になってしまっていることは、「残 念」としか言いようがありません。
 
さて、ここで、先回時間切れとなって触れられなかった「公正競争の実現を図りながら『圏外』を縮小する具体策」について、下記の通り提言させて頂きたいと思います。結構複雑な提案にならざるをえないのですが、何とかお付き合い願います。
 
1)「800MHzの黄金周波数を使わなければ採算をとることが難しい」と判断されるような地域を「ルーラル地域A」(仮称)と呼ぶ。
 
2)「現時点でどの事業者も基地局の施設を躊躇しているような地域」を「ルーラル地域B」(仮称)と呼ぶ。
 
3)「ルーラル地域A」については、そこでサービスしている事業者に、一定の公正な条件で他の事業者の端末のローミングを受け入れることを義務付ける。
 
4)「ルーラル地域B」については、業界でプールした「ユニバーサルサービス基金」を拠出して、800MHzの黄金周波数を使って「全ユーザーの70%近 くが使っているWCDMA/HSPA方式」のサービスを運営することが可能な唯一の事業者であるドコモに対し、適切な方法で基地局を建設・運営し、適切な 条件で他の事業者のローミングを受け入れることを要請する。
 
5)ソフトバンクは、上記3)及び4)で保障されたローミングを行うためには、800MHzを具備したデュアル(またはトリプル)バンド端末をユーザーに 供給せなばならず、また、KDDIは、上記4)で保証されたローミングを行うためには、WCDMA/HSPAを具備したデュアルモード端末をユーザーに供 給せねばならない。これは共に競争上の大きなハンディキャップになる故、上記のユニバーサル基金拠出の算定に際しては、総務省の監督の下に、このことに対 する十分な配慮がなされなければならない。
 
以上で如何でしょうか?
 
いつも繰り返しておりますように、この提言は市井の一人のブロガーとしての私の個人的な提言であり、勤務先のソフトバンクの上司や同僚と相談したものでは ありません。従って、勿論、ソフトバンクの利害を反映した提言でもありません。時が来れば、ソフトバンクを含めた通信事業各社は、総務省のパブリックコメ ントの招請に応える形で、何らかの「会社としての意見」を開陳することになるでしょう。しかし、新聞記事が出た以上、私としてはそれまで待っていられない 気持になり、敢えてこの場を借りて、「個人的な提言」をさせて頂いた次第です。

松本徹三

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