民主党は「岡田代表」でバラマキ政治と決別せよ - 池田信夫

2009年05月13日 11:26

小沢一郎代表は、辞任したあとも党内に影響力を残そうとしているようです。16日に代表選挙を設定したのも、鳩山由紀夫幹事長を後継とするためでしょう。次の首相になる可能性の高い人物を、わずか中4日で選ぶという無造作な日程は、有権者を愚弄するものです。このまま鳩山氏が代表に選出されると、また小沢氏の「二重権力」が続き、バラマキ以外に中身のないマニフェストも変わらない。これでは民主党は選挙に勝てないし、たとえ第一党になったとしても政策は実現できないでしょう。


私は民主党の国会議員とも話す機会がありますが、現場の議員のレベルは高く、政策にもくわしい。ところがまだ党内で大きな勢力をもち、事務局を支配している社民党系の議員のポピュリズムが強く、これが小沢代表と結びついてバラマキ政策を掲げ続けています。鳩山体制になれば、こういう勢力が執行部を握り続け、政権をとったらかつての「革新自治体」のようなバラマキ福祉が行なわれるおそれが強い。

これに対して岡田克也氏は、消費税の引き上げを提唱するなど、そういう路線とは距離を置いています。自民党と民主党が政策で対決するなら、短期のバラマキで目先のGDPを上げれば後は何とかなると思っている自民党と、長期的な経済再建なしでは持続的な成長は不可能だという民主党の対決になることが望ましいと思います。ただし経済の再建は、与謝野馨氏のとなえているような「財政タカ派」路線ではなく、日本経済そのものを立て直す規制改革です。

「アゴラ」で池尾さんや私が書いてきたように、一時的な「需要不足」を補う政策は、緊急避難としての意味はあっても、それ以上の効果はありません。標準的な経済学の理解でも、財政・金融政策によって潜在成長率を引き上げることはできないのです。まして麻生政権の出した新経済対策の中身は、これまで各省庁から出ていた予算要求に「エコ」などの看板をつけて滞貨一掃したもので、需要創出効果は疑わしい。そしてこれによって「2011年にプライマリーバランスを黒字化する」という公約も不可能になりましたが、それをどう変更するのかという議論も行なわれていない。

これに対して民主党の提唱する20兆円のバラマキ福祉政策も、財政的な裏付けがありません。それを「行政のスリム化」で捻出するというのは、かつて革新自治体で首長が公約した空手形と同じです。代表のクビひとつ取れなかった党が、法律も予算も握っている官僚機構の既得権に切り込めるはずもない。

「バラマキ」という言葉には、この20年近い日本の経済政策に国民が抱いている強い不信感が象徴されています。1970年代にスタグフレーションを経験した欧米諸国は、財政赤字が有害無益であることを学びましたが、日本は幸い緊縮財政で石油危機をうまく乗り切ったため、バラマキの恐さを体験しなかった。それを20年おくれて90年代に体で知ったわけです。今回の補正予算についても世論調査で否定的な評価が多いのは、日本人が世界の常識をようやく身につけてきたことを示しています。

今回の世界的な経済危機でも、無条件にバラマキを行なっている国はありません。欧州各国は財政赤字の拡大に慎重だし、巨額の財政出動を行なった米オバマ政権でさえ、それが「財政刺激」ではなく「長期の成長戦略」であることを強調しています。民主党はこうした世界の常識をふまえ、日本経済の向こう10年ぐらいの展望を示した上で、日本経済の成長力を回復するための規制改革を打ち出し、税と年金を含めた国民負担のあり方を抜本的に見直すべきです。

それは補正予算のように簡単ではありませんが、バラマキを打ち出さないと選挙で不利だというのは錯覚です。かつて小泉純一郎氏は、日本経済が信用不安のどん底にある中で「米百俵」の緊縮財政を打ち出し、国民の圧倒的な支持を得ました。岡田氏が「バラマキか経済再建か」という対立軸を掲げて長期的な経済政策を提案すれば、民主党が絶対多数を得ることも不可能ではないと思います。

民主党の若手議員の中にも霞ヶ関の若い官僚の中にも、政治家がバラマキ型ポピュリズムと手を切ることを願っている人は少なくありません。ちょっと手前味噌ですが、アゴラ・シンポジウムに1日で100人以上の申し込みがあったのをみても、変化を求める潜在的エネルギーは意外に大きくなっているような気がします。逆に、ここで民主党が岡田代表を選べないようでは、選挙にも勝てないでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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