「地域主権」に必要なのは財政の自立だ - 池田信夫

2009年08月08日 14:30

民主党の公約が修正されるようです。第1は日米FTAの撤回で、これはニューズウィークにも書いたように、まったくナンセンスな政策です。小沢一郎氏はFTAを進めるための戦略として農業所得補償を考えていたようですが、その一部を変更したら戦略として意味をなさない。


第2は成長戦略で、これは「アゴラ」などで私の指摘した問題点を是正するものですが、問題はその内容です。朝日新聞によれば、子ども手当やガソリン税の暫定税率廃止、高速道路無料化などを「可処分所得増大を通じた内需拡大」として成長戦略と称するようですが、こんなものは成長戦略とはいわない。こういうバラマキの財源はすべて税金なのだから、ゼロサムの所得再分配にすぎない。

問題は単にGDPを嵩上げすることではなく、直島政調会長の言及した潜在成長率を引き上げることです。そのためには労働市場や資本市場の活性化、あるいは電波の開放などの規制改革が必要です。こういう政策には、ほとんど予算はいらない。必要なのは、民主党がいつもいう「既得権に切り込む勇気」だけです。

第3は地方分権で、これにはあまり異論がないようですが、実態が不明です。民主党の現在のマニフェストには「国から地方への『ひもつき補助金』を廃止し、基本的に地方が自由に使える『一括交付金』として交付する」と書いてありますが、この一括交付金の財源は何なのか。現在の地方交付金のようなものだとすれば、それは「地域主権」に反する都市から地方への所得移転ではないのか。

地方分権の基本は、財政も含めて地方政府が自立することです。これは成長戦略とも関係があります。前にも「アゴラ」の記事で書いたように、日本の成長率が1970年代を境に下がった一つの原因は、田中角栄以来の「国土の均衡ある発展」政策によって人口の都市集中が止められたことにあります。人口が都市に集中するのは収益の高いビジネスに労働人口が移動するためだから、それを止めたことが(都市の産業への)労働投入量と労働生産性を下げ、成長率を低下させたのです。

地方を自主財源だけにすれば、今のようにくまなくインフラを整備できないので、人口は都市に集中し、成長率を引き上げる効果が期待できます。国土の隅々まで人間が住むのではなく、人口はコンパクト・シティに集め、山間僻地からは引き揚げて自然を保存する。この場合、3大都市圏にこれ以上集中するとインフラがもたないので、道州制のような形で地方中核都市に集中させる自民党の政策のほうが合理的です。この場合も交付金を廃止し、道州を独立採算にして都市間競争を進めることが必要です。

今の地方分権をめぐる議論では、この財源の問題が曖昧にされ、テレビの人気者の知事が「ひものついてない白地の手形をよこせ」と要求しているように見えます。地方が完全に自立したら、交付金なんか必要ない。宮崎県で集めた税金を宮崎県で使い、その一部を国に納めるというドイツのような方式が真の地域主権です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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