「医療保険制度の改革」で苦境に立つオバマ大統領 - 松本徹三

2009年08月25日 23:32

アメリカでは公的な医療保険制度は日本のように手厚くなく、自分で保険をかけていない多くの人達には病気になったときの保障がありません。この状況を問題視する人達は多く、従って、「公的な医療保険制度の抜本的な改革」がオバマ大統領の選挙時の公約の大きな柱の一つにもなっていました。


しかし、今、この為の法案を通そうという段階になると、これに反対する人達の抵抗が予想以上に強く、なかなか難しい状況になってきています。説得に向かった民主党の議員に詰め寄る反対派の市民達は、米国の建国を支えた「自助努力の精神」を前面に掲げ、「自分のリスクをどのようにして回避するのか、その為に自分のお金をどう使うのかは、自分が決めるべきことであり、政府に決めてもらう必要はない」と主張して、一歩も譲とうとしていません。

日本では、「みんなで助け合うことは美しいこと」といった「情念」だけが前面に出る場合が多く、また、「企業から税金を取って困った人達にまわせばよい」といった「現在の日本は好むと好まざるに関わらず資本主義体制で経済が回っている」という事実を忘れてしまったかのような単純な主張も、未だに口にされている状態ですから、諸外国と比較できる以前の段階です。

しかし、日本でも、やがては、北欧型の「高福祉・高負担」か、これまでの米国型の「低福祉・低負担」かの、どちらにどの程度近づくべきかが、真剣に議論されることにならざるを得ないでしょう。自民党の「中福祉・中負担」は一つの答えですが、「高福祉・低負担」というマジックは残念ながら存在しえないことは、やがて明らかにならざるを得ないでしょう。

しかし、ここで私には分からない事があります。日本で消費税率の事が話題になると、「日本の現在の5%は世界各国に比べて低すぎる。どこかの時点で15%程度まで引き上げるべし」という議論しか出てこないことです。世界の殆どの国が、一般の消費税率と食料品などの生活必需品の消費税率を二本建で決めているのに、何故日本では自民党も民主党もそういう提案をしないのでしょうか?

WEB金融新聞」のサイトの一覧表を見ると、例えば、英国は消費税率17.5%に対し食料品の消費税率は0。フランスは19.6%に対して5.5%。スエーデンは25%に対して12%であることが分かります。

尤も、「WEB金融新聞」は「政治家は『国の財政を立て直すのには、消費税アップは避けられない』などと嘘吹きますが、騙されてはいけません。財政が苦しけりゃあ、歳出を抑えればいいだけの話です」とか、「消費税は庶民いじめのボッタクリ税です! こんなアホな税制は絶対に認めてはいけません!」とアジっていますが、これもいただけません。こういう言い方をするから、インターネット系の言論の質が疑われるのです。

自民党などの消費税の議論に対しては、「各品目一律の消費税論議は、各国にも殆ど例の無い『生活弱者への配慮を欠いた片手落ちの議論』である」として難詰すればよいだけではないのでしょうか? 「財政が苦しければ歳出を抑えればいいだけの話で、消費税の議論はしなくてよい」と言うが如きは、明らかに暴論です。

さて、話のレベルがすっかり落ちてしまいましたが、オバマ大統領の苦労は十分に察せられます。善玉と悪玉をはっきりさせる事が難しいアメリカでの論争は、日本でも一部参考にすべきでしょう。

松本徹三

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