アメリカでは公的な医療保険制度は日本のように手厚くなく、自分で保険をかけていない多くの人達には病気になったときの保障がありません。この状況を問題視する人達は多く、従って、「公的な医療保険制度の抜本的な改革」がオバマ大統領の選挙時の公約の大きな柱の一つにもなっていました。
しかし、今、この為の法案を通そうという段階になると、これに反対する人達の抵抗が予想以上に強く、なかなか難しい状況になってきています。説得に向かった民主党の議員に詰め寄る反対派の市民達は、米国の建国を支えた「自助努力の精神」を前面に掲げ、「自分のリスクをどのようにして回避するのか、その為に自分のお金をどう使うのかは、自分が決めるべきことであり、政府に決めてもらう必要はない」と主張して、一歩も譲とうとしていません。
日本では、「みんなで助け合うことは美しいこと」といった「情念」だけが前面に出る場合が多く、また、「企業から税金を取って困った人達にまわせばよい」といった「現在の日本は好むと好まざるに関わらず資本主義体制で経済が回っている」という事実を忘れてしまったかのような単純な主張も、未だに口にされている状態ですから、諸外国と比較できる以前の段階です。
しかし、日本でも、やがては、北欧型の「高福祉・高負担」か、これまでの米国型の「低福祉・低負担」かの、どちらにどの程度近づくべきかが、真剣に議論されることにならざるを得ないでしょう。自民党の「中福祉・中負担」は一つの答えですが、「高福祉・低負担」というマジックは残念ながら存在しえないことは、やがて明らかにならざるを得ないでしょう。
しかし、ここで私には分からない事があります。日本で消費税率の事が話題になると、「日本の現在の5%は世界各国に比べて低すぎる。どこかの時点で15%程度まで引き上げるべし」という議論しか出てこないことです。世界の殆どの国が、一般の消費税率と食料品などの生活必需品の消費税率を二本建で決めているのに、何故日本では自民党も民主党もそういう提案をしないのでしょうか?
「WEB金融新聞」のサイトの一覧表を見ると、例えば、英国は消費税率17.5%に対し食料品の消費税率は0。フランスは19.6%に対して5.5%。スエーデンは25%に対して12%であることが分かります。
尤も、「WEB金融新聞」は「政治家は『国の財政を立て直すのには、消費税アップは避けられない』などと嘘吹きますが、騙されてはいけません。財政が苦しけりゃあ、歳出を抑えればいいだけの話です」とか、「消費税は庶民いじめのボッタクリ税です! こんなアホな税制は絶対に認めてはいけません!」とアジっていますが、これもいただけません。こういう言い方をするから、インターネット系の言論の質が疑われるのです。
自民党などの消費税の議論に対しては、「各品目一律の消費税論議は、各国にも殆ど例の無い『生活弱者への配慮を欠いた片手落ちの議論』である」として難詰すればよいだけではないのでしょうか? 「財政が苦しければ歳出を抑えればいいだけの話で、消費税の議論はしなくてよい」と言うが如きは、明らかに暴論です。
さて、話のレベルがすっかり落ちてしまいましたが、オバマ大統領の苦労は十分に察せられます。善玉と悪玉をはっきりさせる事が難しいアメリカでの論争は、日本でも一部参考にすべきでしょう。
松本徹三
コメント
>一般の消費税率と食料品などの生活必需品の消費税率を二本建で決めているのに、何故日本では自民党も民主党もそういう提案をしないのでしょうか?
食料品が最終消費財であるならともかく、大抵は中間財であり、途中でかかった税率を控除できなくなると、利潤は圧迫されるか、かえって最終価格が上がってしまうんです。
わかりやすい例を上げると、あるレストランで、食材仕入れ値が税込み105万円で、それを加工して、315万円で売ったとします。納税額は15万円-5万円で、10万円です。
レストランはサービス業だから、食品非課税の対象になりませんが、食材の消費税額は控除から外れて、納税額は15万円にアップします。
非課税といっても、食材が105万円から100万円に安くなるわけではなく、その製造段階における課税を反映して、ある程度、消費税を転嫁せざるをえないので、せいぜい103万円というところでしょう。
つまり、納税額は10万円から15万円になるのに、レストランの付加価値は、200万円から197万円になってしまいます。
以上が、必ずしも食品非課税に食品業者が乗り気でない理由です。
a_inoue様
そのケースですが仕入れが現行の年商1千万に該当する非課税業者ならその通りなのですが、税率ゼロというのは、その食料品業者の仕入れに含まれている税額が全て返還されるのです。
したがって理屈の上では103万円では無く100万円でレストランは仕入れることができますので、レストラン(実際は消費者です)が負担する税額は変わりません。
また仮に103万円で非課税業者から仕入れたとしても、これには5%の消費税が課税されていると見なして差し支えないので、49048円の税額を控除できます。
さらにもともと105万円のはずが103万円で仕入れられるのですから、レストランは2万円を得することになります。
なんと、非課税業者が真面目に5%の消費税を取らなければ(つまり、仕入れ分の消費税のみ転嫁している場合は)、益税はレストランに移転しちまうんですね。
本文にもコメントしておきます。
アメリカの医療保険はかなり複雑で、一応企業型の保険(日本の組合保険のようなもの)も存在しており、ある程度の機能は果たしております。
最大の問題は国民皆保険では無いということですね。健康な若者が保険に入るはずがありませんから。
医療に対しても市場メカニズムが働く構造になっており、そのための弊害もありますが、最先端高度医療の発達というメリットもあります。
日本の場合は保険適用か否かで支払額が雲泥の差になりますから、実質的に保険適用の医療を受けるという選択に成らざるを得ません。
日本型と比較してどちらが良いかは私にはわかりません。
次に、高福祉高負担、低福祉低負担、中福祉中負担のどれでも良いとは思いますが、高福祉低負担は当然ながら論外ですが、皆さんは低福祉高負担(もしくは低福祉中負担)と思って居られるんじゃないかな。
その差額は官僚の天下り、無意味な業界へのバラマキ等に費やされていると思うと、やはり悔しいですね。
おかしなログイン名はやめてください。このアカウントで投稿されたコメントは、今後は削除します。
失礼しました。
OpenIDが禁止されているとは知りませんでしたので、以後慎むことにします。
>皆さんは低福祉高負担(もしくは低福祉中負担)と思って居られるんじゃないかな。
医療保険を官でやる場合、これが一番懸念されるところですね。これに投入した税金のどれくらいが、官の経費(給料やマッサージ機)や固定資産(庁舎や福祉施設)に消えているのか?
投入税金の何パーセントが医療保険の有効予算になっているのか、数値はないものでしょうか。
OpenIDはOKですが、こういう変なニックネームは不正利用のように見えるので、やめてください。私は今、OpenIDでログインしていますが、普通はこういうふうにニックネームが見えるはずです。
ただヤフーのIDを流用すると、こうなるということだったら、しょうがないですね。
米国人をみて不思議でならないのは貧乏人ほど肥満が多く、その肥満度も半端ではない、老若男女に共通してみられることである。先進国では病気の約6割が生活習慣に起因する心臓疾患、高血圧、糖尿、肺がん等といわれる。私は酒もタバコもやらず毎日運動し、栄養バランスのとれた食事を三食、定時に摂っており極めて健康だ。政府に決めてもらう必要がないと主張する米国人の気持ちはよくわかる。毎日健康に気を配り努力している人とそうでない人を同じ条件の保険でカバーするのは公平ではない。
米国では貧困層にはフードスタンプが配布され食品は好きなだけ購入できる。病気になる前に正しい食生活や生活習慣を付けさせるのが先ではないか。与えられた餌はいくらでも食べる犬や豚と違うというなら出来るはずだ。生活習慣を改めればすぐ改善できる病気には保険が適用できないようにすべきだ。飲酒運転をして事故を起こしても保険が適用されないのと同じ理屈だ。極度の肥満や喫煙者にも保険料率を高くする等の工夫が必要だ。
最後に尊厳死を望む者として尊厳死を選択した者には保険料率を低くしてもらいたい。今後益々進行する高齢化で無駄な終末医療費の占める割合は高くなるばかりだ。
池田様
OpenIDはURL形式だと認識しております。
池田様の仰るように普通のニックネーム形式が可能であるのなら、そのやり方をご紹介していただけると幸いに存じます。(まさかとは思いますが、同じサイトが発行するOpenIDなら可能かもしれませんが、これだとそのサイトのIDを使えばよいわけで、OpenIDを使う意味がありません。)
いきなり「おかしなログイン名」と名指しされたことに大変困惑しております。
失礼しました。OpenIDはURLのままで結構です。
私の場合は、openid.ne.jpで取ったURLを入力すると、上のようにニックネームが表示されるのですが、たしかにヤフーで取ったURLを入力すると、https://…となりますね。OpenIDって不便だな・・・というか、ライブドアのシステムがうまく対応してないのかな。