尊皇開国は可能なのでしょうか? ―中川信博―

2009年09月04日 19:00

―保守自由主義陣営の問題点が浮き彫りに―

池田先生が桜プロジェクトへ出演された映像を再度見直しました。私は桜チャンネルを開局以来、応援しているのでそのようなバイアスがかかっていることをご承知の上、本稿を読んでいただければと思いますが、この議論の中に今の我国の保守自由主義陣営の問題点が凝縮されていると感じたのは私だけでなないと思います。

議論は『派遣切りという「弱者」を生んだもの』と題して司会前田有一さん、コメンテーター井尻千男先生、そしてゲスト池田信夫先生で行われました。


―失業が一番不幸な状態―

池田先生の論旨は、派遣切り問題の根本的原因について「正規雇用労働者の流動性を極端に抑える労働行政にあり、その極端な正規雇用労働者保護が非正規雇用労働者の雇用環境悪化の遠因となっている。そしてその解決には解雇規制の撤廃による雇用の流動性を高めるとともに、基本的には経済成長による労働市場の拡大が必要である」と解説しています。
―沈没するタイタニック号の中で椅子取りゲームをしているようなものと表現されています―

よって政策としては「失業をなくす、減らす」―失業率を抑える政策―こと。
そしてその戦略は

1 経営者の経営判断にまかせ解雇規制をなくすこと。
2 解雇された人々が再チャレンジに必要な社会環境(セーフティーネット)を構築すること
3 労働市場の流動性と補完性を高め、さらに労働市場を拡大(経済成長)させること

を掲げておられています。1について90年代にだらだらと続いた日本の「失われた10年」とアメリカのITバブル崩壊からの経済回復の相違を例に説明をされています。2については北欧諸国、特にスエーデンの事例を提示されています。3については「社内失業」という言葉と労働原資―企業からみれば労働力の仕入原価―がマクロで見れば―日本全体の統計で見れば―一定であるとして、―ここ15年くらいの統計で―社内失業者一人を解雇することにより、非正規雇用労働者が二人の雇用が創出できる―正規雇用労働者の人件費が非正規雇用労働者の倍かかるとして―と説明をされています。

―温情主義がにじみ出る戦後教育世代―

この意見に司会の前田さんが「今までかなり儲かってきたのだから景気が悪くなったからといってすぐに解雇というのはどうか」という意見を出します。これは国会でも社民党や共産党などが質問したように、左翼の常套意見ともいえます―蟹工船論法ともいえます―。これをにじみ出る温情主義と呼んでおります。

前田さんはチャンネル桜で司会をなされているくらいですから保守的な考え方をもたれているはずですが、しかし戦後教育の怖さで―私も同じですが―、こういう時のちょっとした考え方が極めて左翼的になってしまうのです。左翼は―当然私達も―いつでも目の前の不幸に対処しようとします。不幸な人がいれば助けようとします。しかしその助け方が枝葉をみて幹をみずなのです。

たとえば川があったとして上流からゴミが流れてきます。左翼は下流でそのゴミを一所懸命掃除します。一瞬川は綺麗になりますが、またゴミは流れてきます。当たり前です、上流でゴミが発生しているのですから、それを何とかしなければいつまでもゴミは流れてきます。その原因を取り除く間、川にはゴミは流れ続けますが、除去出来れば川はその後はなにもしなくても綺麗になります。

非正規雇用労働者の解雇問題では失業している状態の人を出来るだけ少なくすることが重要であると同時に、その受け皿である企業が延命することが第一条件です。そのための業績悪化予測解雇は致しかたない措置だと思います。この解雇する側とされる側のコンセンサスが「保守主義」あるいは「自由主義」という信頼関係だということだと思います。

目の前のかわいそうな―かわいそうかどうかの判断は難しいのですが―非正規雇用労働者の雇用を守る事が、しいては企業をつぶし、日本経済をがたがたにする危険性をはらんでいることに、目を向ける必要があると思います。そして失業という最悪な状態の人を出来るだけ少なくする為に、解雇条件の緩和をして経営者の自主判断に任せることが必要であることを認識しなければいけないと思います。

―なんとか日本的に解決できないものか―

それらをすべて了解された―同意された―上で井尻先生は「日本的やり方はないものか」と問いかけます。以前の大田区の町工場などで自然に行こなわれていた相互扶助などのように、ドラスティックに解雇という道ではなく、苦しいときは互いに我慢しあう文化が我国にはあったはずだ、そのように出来ないものかといいます。井尻先生は拓殖大学日本文化研究所で「新日本学」を学究されている立場でありますので、そのご発言は重みがあると思います。

井尻先生の経営者批判として「株式連動の雇用調整」という言葉を使いましたが、おそらく株価の下落が時価会計の現在では、直接P/Lに影響するので、業績悪化に対する、事前対策としての雇用調整が行なわれることに対してのことを指していわれたと思います。しかしこれは、今の会計ルールの中では致し方ないことでもあります。P/Lが悪化しますと現在日本の株式市場の50%近くを占めている外国からの投資が減少します。この減少がさらなるP/Lの悪化につながるので、経営者は外国人投資家へのパフォーマンスとして雇用調整をしなければならないという側面も大いにあると思います。―誰でも解雇はしたくないと思いますし、雇用調整をすることが雇用を守ることにもつながります―

それらの行為を総じて「株式連動」といわれたと思います。そして外国におもねず、日本の経営者は日本主導で何かできることはないか、すぐに解雇ということではなく、考えて我慢をして嵐が通り過ぎるまで待つことは出来ないのかということだと思います。

―じつはもっとドラスティックだった戦前から戦後すぐの時期―

池田先生の研究論文「情報通信革命と日本企業」を読みますと、戦前などはある意味資本主義の原理がドラスティックに日本企業に働いて、解雇やそれをめぐる労働争議が頻発していたとあります。そしてそうしたなかで大正時代の好景気が労働者不足とその引き抜きなどのため賃金が上昇し経営を圧迫します。その対策が労働者の囲い込み戦略で、いわゆる「終身雇用制」で、熟練工不足のため未熟練工の評価と賃金抑制目的で採用されたのが「年功序列賃金」と指摘されています。そしてそういう雇用戦略は当時の日本の経営者では少数派で、多くが株主による企業支配が普通であったと述べられております。そしてこれら「年功応序列賃金」と「終身雇用」は温情主義からではなく、あくまでも「算盤」から発生した対策だとも示されています。

―両者を結ぶ思想の確立が急がれます―

井尻先生などの日本的保守主義思想の方々―バーク的保守とは若干違うという意味です―と自由主義経済を標榜する経済学者の方々との溝がこの労働問題では顕著化することがわかりました。私は日本の伝統や文化を守るために欧米の啓蒙主義的流れにある程度一線をおきたいと思い、経済発展の為には自由貿易を守らなければならないとも考えております。

井尻先生が池田先生へ「池田さんは原理主義的過ぎるんだよ」と言われたのは象徴的で、自由主義経済の大原則は世界共通の原理の中で自由に経済活動をするということですから原理主義的な姿勢は当然だと思います。しかしそのルールつくりに日本がコミットしていないことが、日本的保守主義思想の方々には納得できないのではないかと思います。

それは80年代後半ホンダがF1に復帰して確固たる地位を気づいたにもかかわらず、度重なるレギュレーションの変更で最終的にはホンダを撤退に追い込んだことや、ノルディックスキー複合やジャンプでも同様に我国への執拗なレギュレーション変更によるバッシングで、その地位を奪ったことへの日本人の憤りに現れています。

私個人は井尻、池田両先生の主張はまったくもって正論であると思います。そして前田さんの心情左翼的なのは戦後教育世代の誰でもが持つ感情です。ですが、かすかにある溝がどうしても今回気になりました。

私達の真の敵は国連や我国中枢に入り込んだ共産分子であると思います。彼らは「人権」を振りかざし、「弱者を保護せよ」と叫びながら、我国の伝統と経済を破壊しようとしております。なにかこの溝を取り除く大きな思想で我国の伝統と自由貿易経済を守る必要があると思います。

追記
タイトルを「尊王」から「尊皇」へ変更
池田先生の論文名「情報通信と日本企業」を「情報通信革命と日本企業」へ変更
同PDFファイルへのリンク追加
H21.9.4 20:18

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