自民党はどこで間違ったのか? - 松本徹三

2009年09月18日 10:09

今度の衆院選で自民党は予想以上の大敗を喫したわけですが、多くの人が語っているように、「何と戦っているのか分からない」状態で戦い、結局そのまま、なす術もなく敗れたというのが実態ではないでしょうか? 今から考えてみても、「こうすれば勝てた」というシナリオは全く書けませんから、要するに、ずっと以前に既に結果は見えていたといってもよいのではないでしょうか?


それでは、ずっと遡って、何が今回の大敗北の最大の原因だったのでしょうか? その答は、「何故先回の参院選で大敗したのか」という質問に対する答と基本的に同じだと思います。参院選の敗北が「ねじれ現象」を招き、それ故に、歴代の首相は何も思い切ったことが出来なかった。これによる自信の喪失が、次々に襲ってくる困難に対処する姿勢を極めてお粗末なものにしてしまったということも言えるでしょう。

そのように考えると、安部元首相の責任の方が麻生首相の責任よりも重いということになります。

「自民党をぶっ潰す」と叫んで圧倒的な人気を勝ちとった小泉首相がもたらした先回の衆院選での自民党の大勝も、「とにかく政権を変えようではありませんか」と訴えてその目標を果たした今回の衆院選の民主党の大勝も、その根は同じところにあります。民衆は、とにかくこれまでの保守本流的な体制の継続には我慢が出来ず、ずっと「変革(チェンジ)」を求めてきているのです。

それなのに、小泉元首相の衣鉢を継ぐはずだった安部首相は、このことをよく理解してはおられなかったかのようです。もし安部首相が、小泉首相のように声を枯らすまではやらなかったとしても、また髪の毛までは振り乱さなかったとしても、「改革はまだやっと入り口の段階。これからが正念場。何としてもやり抜く」と叫んでいれば、状況は少し違ったでしょう。

しかし、圧倒的多数で総裁選に当選した安部さんは、「既に基礎は固まっている」と勘違いされたかのようで、郵政造反派の復党を許し、お友達内閣をつくり、「美しい国」などという「既に全ての基盤が安定した後でしか持ち出せない筈のスローガン」を掲げたのです。

時あたかも、驚天動地の社保庁の不祥事が起こりました。民衆は「美しい国」などという言葉とはかけ離れた「惨めで、酷い現実」を突きつけられたのです。

その時に、もし首相が、「国民の怒りと同じレベルの怒り」を全身にみなぎらせ、「事実関係の徹底的な究明」「為政者としての深い懺悔」「責任者の厳罰」「当時コンピュータ化に反対し徹底的にサボった官公労の糾弾」などを、断固として行っていたら、民衆は首相を自分達の側の人間と感じたかもしれません。しかし、現実には、その対応は極めて中途半端なものでした。これも参院選の惨敗の一因になったことは否めないと思います。

リーマンショックは世界の為には良いことでした。というか、いつかは破裂するバブルが破裂したような当然の帰結でした。アメリカの野放図な金融資本主義があのまま更に膨張していたら、被害はもっと大きくなっていたかもしれません。しかし、日本の為には、やはり極めて不幸なことだったと言わざるを得ません。

「行き過ぎた資本主義」が未曾有の経済的混乱を引き起こしたことにより、「未成熟な資本主義国」である日本を、一時的にせよ、「やはり資本主義はよくない」という漠然たる空気が覆いつくしました。諸外国に比べれば比較的小さな「格差」が、あたかも「社会的不公正の象徴」のように喧伝されました。この為、今は、「如何にして、正しい(常識的な)資本主義を育てていくのか」という真面目な議論までが中断されかねない状況です。

このことは、自民党にとっても不幸でした。もともと小泉・竹中路線に反対だった民主党に対抗するのに、「自分達だって実は反対だったのだ」と言うのでは、勝てるわけもありません。小泉・竹中路線の一部に対して自己批判をすることは全く問題ではなく、むしろそうあって然るべきだったのでしょうが、その場合は、「何が是で何が非であったのか」を明確にした上で、粛々と議論をするべきでした。

これから自民党はどこに行くのでしょうか? 健全な二大政党制を望む国民は、明確な理念を持った「強い野党」としての自民党の存在を望んでいますが、まだその筋道は見えません。このままの状態で、内部に矛盾を抱えた民主党がもし分裂すれば、日本は、「権力争いの政争に明け暮れる不幸な国」へと転落していかざるを得ないでしょう。

しかし、その方が、「安定多数」の民主党が、その「心地よい権力構造」を維持するために、「労組や既得権者に配慮し、明日の見えぬ経済の停滞の中で、人気取り政策によって借金の蓄積を加速させていくような事態を招く」よりは、まだ良いのかもしれません。

松本徹三

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