世論調査によれば、鳩山内閣は支持率75%とも77%とも報ぜられ、上々の滑り出しです。多くの人達が「新内閣は何らかの大きな変革を行い、現在の閉塞感を打ち破ってくれるだろう」と期待している証左です。私自身だって、一方では大きな不安を感じつつも、一方では何がしかの希望をもって、新内閣の動きを注視しているわけです。
ところが、金曜日の各日刊紙で報ぜられた各新大臣の発言の中で、職業柄最も興味のあった原口郵政相の発言を読んで、私はかなり驚きました。「就任早々そこまでサービスせねばならないのか」と目を疑うばかりに、集票力のあるNTTへの忠誠心の発露が、早々と「前のめり」に出てきていたからです。
ところが、金曜日の各日刊紙で報ぜられた各新大臣の発言の中で、職業柄最も興味のあった原口郵政相の発言を読んで、私はかなり驚きました。「就任早々そこまでサービスせねばならないのか」と目を疑うばかりに、集票力のあるNTTへの忠誠心の発露が、早々と「前のめり」に出てきていたからです。
民主党はマニフェストで相当難しい事を数多く公約したのですから、各大臣は先ずはマニフェストに書かれている事を如何にして実現するかについて語るのかと思っていたところ、総務相はマニフェストでは何も語られていない「NTTの組織見直し問題」にわざわざ触れ、竹中総務相時代の「NTTの市場支配力を弱め、競争を活性化する」という議論を、「2周遅れの改革論議だ」としてこき下ろした上で、「(再統合の可能性も含めて)いろいろな選択肢を排除しない」と語ったと報ぜられています。(9月18日付日経新聞の囲み記事)
「目に余るNTTグループの独占回帰の試み」と題した4月7日付のアゴラへの私の投稿には、各方面から多くの反響を頂きましたが、原口大臣のこの発言を読む限りでは、同大臣は、まさにそのような「独占回帰の試み」をこれから全面的に支援しようとしておられるかのようであり、私の民主党に対するささやかな期待は、早くも無残に打ち砕かれようとしています。(善良な一市民として、色々考えた挙句に、先の選挙では民主党に清き一票を投じた私が、要するに馬鹿だったということなのでしょうか?)
私が早々とこのように疑った根拠は、原口大臣が、「光通信時代にはメタル時代とは異なったルールが必要」という趣旨の発言を既になされ、「熾烈な競争を招き、大幅な価格低下をもたらした『メタル時代の失敗』は、二度と繰り返さない」という、利用者にとっては甚だ有難くない「NTTの社内方針」を、暗にサポートしようとしているかのように見えた故です。
ところで、NTT労組は「アピール21」という政治資金規正法に則った政治団体を作っていますが、原口大臣はこの政治団体が応援を公表している衆議院議員の一人です。また、総務副大臣に指名された内藤正光氏は、そのものずばりのNTT労組の出身で、この「アピール21」という政治団体のサイトでも、真っ先に顔写真が載っています。
労組が特定の議員を応援するのは別に悪い事ではなく、私もこのことだけをとやかく言うつもりは毛頭ありませんが、「大臣と副大臣がそろってNTT労組に足を向けて寝られない人」というのは、やはり「やりすぎ」ではないでしょうか?
国会議員の候補者がある信条を持っていて、同じ信条を持つ企業や労組の支援を受ける事は勿論問題はありません。国会議員は立法府の構成員であり、「立法」は、色々な信条を持ち、場合によれば色々な組織から支援を受けて国会に送り込まれてきた各議員が、それぞれに意見を闘わせ、最終的には投票によって全てが決められるのです。
しかし、「行政」が初めから特定の団体の利益を代表して行われることは、やはり「あってはならない事」だと思います。日本は議院内閣制ですが、内閣総理大臣は国民の付託を受けて「行政」の任に当たり、それを実行する各大臣を任命するのですから、任命を受けた各大臣は、当然「国会議員の立場とは別の使命」を持つのです。それは特定の団体の利益ではなく、国民の利益を守ることです。
通信行政について言うなら、原口大臣は、国民(イコール「通信サービスの利用者」と考えてよいでしょう)にとって何がベストかを考えねばならないのであり、仮にそれが自分を支持してくれた特定の団体の利益に反することであっても、敢えてこれを実行しなければならないのです。
利用者が求めるものは何かと言えば、それは多彩で良質なサービスが低コストで受けられる事に他ならず、公正競争の実現がそのための最も効率的な方法であろう事は、論を待たないでしょう。従って、原口大臣が一つの企業の意見だけを聞き、その企業と競合する他企業や、利用者の声をよく聞かないままに、何らかの予断を持って早々と自分の考えを口にしたとすれば、「行政府のトップとしての適格性」を問われても仕方がないのではないでしょうか?
ところで、今回更に私を驚かせたのは、2006年の自民党時代に、政府与党合意として「2010年まで先送り」と決められていた「NTT組織見直し問題」の議論を、何と「前倒し」しようという動きが出てきているということです。
何故「前倒し」なのかと言えば、「かつてのタクシー券事件に象徴されるように、NTTに近いことで有名な鈴木総務次官の在任中の方が、いろいろとやり易いからだろう」と推測する人も多いのですが、私はその説は取りません。いくら何でも「脱官僚支配」を叫んでいる民主党が「事務次官頼り」では格好がつかないからです。私の推測は、そうではなくて、「原口大臣や内藤副大臣としては、巨大な集票マシンであるNTTと NTT労組に『見返り』を早く渡して、参院選での協力をより確実にしたいからなのだろう」ということです。
(私が新内閣に「参院選準備内閣」という仇名をつけたくなるのも、「記者クラブの圧力に屈して公約を翻し、初の首相会見をオープンにしなかった」という事例を早々と見せつけられた事もあり、どうしてもこういう推測が頭に浮かんできてしまうが故です。)
さて、以前のNTT分割の議論では、先の私の二回にわたるブログ(6月5日付及び6月8日付)でも詳細に分析をしましたように、「国際競争力の喪失」とか「株価の下落」とか、後で振り返ってみると実は根拠がなかった事が分かった「様々な懸念事項」が次々に申し立てられた為に、最終的には、「分割はするが持株会社が実質的に全てをコントロールする」という、玉虫色と言うか、「玉ナシ決着」とも言うべき決着がなされました。つまり「分割」とは名ばかりだったのです。
にもかかわらず、NTTはこの現状にもなお不満なようですから、恐らくは、新総務大臣に、「再統合の可能性も含めた色々な選択肢の検討」を、これまでにしっかりと陳情してきたのでしょう。
「百人を超える政治工作(陳情など)チームが常時存在する」といわれるNTTグループの内部事情を、私は或る程度知っていますが、「陳情の現場を押さえたわけでもないのに、何故そんな事を断定的に言えるのか」と聞かれれば、「それは原口大臣の下記のような発言を読んだからだ」と答えるしかないでしょう。
「NTTは手足を縛って飛べと言われているように見える。それでは飛べない。……」と、原口大臣はおっしゃっておられます。
この発言は、とても総務省のトップの発言とは思えず、どう聞いてもNTTの経営者の発言のように聞えます。
「意見が対立する利害関係者の話を総合的に比較検討し、一般利用者の声なき声にもよく耳を傾けた上で、国民の為にベストと思われる政策を実行する」のが、本来の総務省のトップの使命であることを、原口大臣がもしよく理解しておられたなら、大臣就任後に各方面から十分な意見聴取をする前には、間違ってもこのような発言を早々とされる事はなかったでしょう。
ところが、この発言を「議論は大いに結構だが、手足を縛られて、我々がやろうとしている事をやれと言われてもできない。……」という昔の和田紀夫元NTT社長の言葉(2005年11月22日付読売ONLINE)と照らし合わせてみると、その背景が嫌でも透けて見えてきます。原口大臣もNTTの和田元社長も、期せずして「全く同じ言い様」をしているということは、この大臣の発言が「NTTの陳情の結果であったに違いない」ということが、容易に推測できるからです。
そもそも「手足を縛って」等という言葉は、通常ビジネスで使われる言葉ではなく、試みにこの言葉で検索をかけてみると、出てくるのは、強盗の記事かSM映画の広告ばかりです。にもかかわらず、総務省の新大臣とNTTの元社長が、期せずしてこの同じ言葉を使っているのですから、「お二人とも同じゴーストライターが書いた原稿を使ったのではないか」という「下司の勘繰り」が出てくるのも止むを得ないと思います。
今回の衆院選で民主党が大勝したのは、多くの人達が、民主党が行ってくれるであろう「変革(チェンジ)」に期待したからです。しかし、その「チェンジ」が、せっかく芽を出しかけている「民営化」や「公正競争の導入(独占回避)」に「待った」をかけ、「昔に戻す」為の「チェンジ」だったとしたら、民主党に投票した多くの人達は「騙された」と思うでしょう。
多くの人達が、民主党が提唱した「官僚の支配する行政から、自分達が投票した政治家が直接関与する行政への転換」に賛同し、大きな期待をかけたようですが、「政治家というものは、選挙での支援の『見返り』に使う為に、国の重要な政策を決める傾向がある」ということが明らかになってくれば、多くの人達は、「そんなことなら、昔の官僚支配の方がまだ良かった」と考えるようになるでしょう。
鳩山さんを初めとする民主党のトップは、そんな事にならぬように、一日も早く「李下に冠を正さ
ず」を徹底して頂きたいと思います。
松本徹三
「目に余るNTTグループの独占回帰の試み」と題した4月7日付のアゴラへの私の投稿には、各方面から多くの反響を頂きましたが、原口大臣のこの発言を読む限りでは、同大臣は、まさにそのような「独占回帰の試み」をこれから全面的に支援しようとしておられるかのようであり、私の民主党に対するささやかな期待は、早くも無残に打ち砕かれようとしています。(善良な一市民として、色々考えた挙句に、先の選挙では民主党に清き一票を投じた私が、要するに馬鹿だったということなのでしょうか?)
私が早々とこのように疑った根拠は、原口大臣が、「光通信時代にはメタル時代とは異なったルールが必要」という趣旨の発言を既になされ、「熾烈な競争を招き、大幅な価格低下をもたらした『メタル時代の失敗』は、二度と繰り返さない」という、利用者にとっては甚だ有難くない「NTTの社内方針」を、暗にサポートしようとしているかのように見えた故です。
ところで、NTT労組は「アピール21」という政治資金規正法に則った政治団体を作っていますが、原口大臣はこの政治団体が応援を公表している衆議院議員の一人です。また、総務副大臣に指名された内藤正光氏は、そのものずばりのNTT労組の出身で、この「アピール21」という政治団体のサイトでも、真っ先に顔写真が載っています。
労組が特定の議員を応援するのは別に悪い事ではなく、私もこのことだけをとやかく言うつもりは毛頭ありませんが、「大臣と副大臣がそろってNTT労組に足を向けて寝られない人」というのは、やはり「やりすぎ」ではないでしょうか?
国会議員の候補者がある信条を持っていて、同じ信条を持つ企業や労組の支援を受ける事は勿論問題はありません。国会議員は立法府の構成員であり、「立法」は、色々な信条を持ち、場合によれば色々な組織から支援を受けて国会に送り込まれてきた各議員が、それぞれに意見を闘わせ、最終的には投票によって全てが決められるのです。
しかし、「行政」が初めから特定の団体の利益を代表して行われることは、やはり「あってはならない事」だと思います。日本は議院内閣制ですが、内閣総理大臣は国民の付託を受けて「行政」の任に当たり、それを実行する各大臣を任命するのですから、任命を受けた各大臣は、当然「国会議員の立場とは別の使命」を持つのです。それは特定の団体の利益ではなく、国民の利益を守ることです。
通信行政について言うなら、原口大臣は、国民(イコール「通信サービスの利用者」と考えてよいでしょう)にとって何がベストかを考えねばならないのであり、仮にそれが自分を支持してくれた特定の団体の利益に反することであっても、敢えてこれを実行しなければならないのです。
利用者が求めるものは何かと言えば、それは多彩で良質なサービスが低コストで受けられる事に他ならず、公正競争の実現がそのための最も効率的な方法であろう事は、論を待たないでしょう。従って、原口大臣が一つの企業の意見だけを聞き、その企業と競合する他企業や、利用者の声をよく聞かないままに、何らかの予断を持って早々と自分の考えを口にしたとすれば、「行政府のトップとしての適格性」を問われても仕方がないのではないでしょうか?
ところで、今回更に私を驚かせたのは、2006年の自民党時代に、政府与党合意として「2010年まで先送り」と決められていた「NTT組織見直し問題」の議論を、何と「前倒し」しようという動きが出てきているということです。
何故「前倒し」なのかと言えば、「かつてのタクシー券事件に象徴されるように、NTTに近いことで有名な鈴木総務次官の在任中の方が、いろいろとやり易いからだろう」と推測する人も多いのですが、私はその説は取りません。いくら何でも「脱官僚支配」を叫んでいる民主党が「事務次官頼り」では格好がつかないからです。私の推測は、そうではなくて、「原口大臣や内藤副大臣としては、巨大な集票マシンであるNTTと NTT労組に『見返り』を早く渡して、参院選での協力をより確実にしたいからなのだろう」ということです。
(私が新内閣に「参院選準備内閣」という仇名をつけたくなるのも、「記者クラブの圧力に屈して公約を翻し、初の首相会見をオープンにしなかった」という事例を早々と見せつけられた事もあり、どうしてもこういう推測が頭に浮かんできてしまうが故です。)
さて、以前のNTT分割の議論では、先の私の二回にわたるブログ(6月5日付及び6月8日付)でも詳細に分析をしましたように、「国際競争力の喪失」とか「株価の下落」とか、後で振り返ってみると実は根拠がなかった事が分かった「様々な懸念事項」が次々に申し立てられた為に、最終的には、「分割はするが持株会社が実質的に全てをコントロールする」という、玉虫色と言うか、「玉ナシ決着」とも言うべき決着がなされました。つまり「分割」とは名ばかりだったのです。
にもかかわらず、NTTはこの現状にもなお不満なようですから、恐らくは、新総務大臣に、「再統合の可能性も含めた色々な選択肢の検討」を、これまでにしっかりと陳情してきたのでしょう。
「百人を超える政治工作(陳情など)チームが常時存在する」といわれるNTTグループの内部事情を、私は或る程度知っていますが、「陳情の現場を押さえたわけでもないのに、何故そんな事を断定的に言えるのか」と聞かれれば、「それは原口大臣の下記のような発言を読んだからだ」と答えるしかないでしょう。
「NTTは手足を縛って飛べと言われているように見える。それでは飛べない。……」と、原口大臣はおっしゃっておられます。
この発言は、とても総務省のトップの発言とは思えず、どう聞いてもNTTの経営者の発言のように聞えます。
「意見が対立する利害関係者の話を総合的に比較検討し、一般利用者の声なき声にもよく耳を傾けた上で、国民の為にベストと思われる政策を実行する」のが、本来の総務省のトップの使命であることを、原口大臣がもしよく理解しておられたなら、大臣就任後に各方面から十分な意見聴取をする前には、間違ってもこのような発言を早々とされる事はなかったでしょう。
ところが、この発言を「議論は大いに結構だが、手足を縛られて、我々がやろうとしている事をやれと言われてもできない。……」という昔の和田紀夫元NTT社長の言葉(2005年11月22日付読売ONLINE)と照らし合わせてみると、その背景が嫌でも透けて見えてきます。原口大臣もNTTの和田元社長も、期せずして「全く同じ言い様」をしているということは、この大臣の発言が「NTTの陳情の結果であったに違いない」ということが、容易に推測できるからです。
そもそも「手足を縛って」等という言葉は、通常ビジネスで使われる言葉ではなく、試みにこの言葉で検索をかけてみると、出てくるのは、強盗の記事かSM映画の広告ばかりです。にもかかわらず、総務省の新大臣とNTTの元社長が、期せずしてこの同じ言葉を使っているのですから、「お二人とも同じゴーストライターが書いた原稿を使ったのではないか」という「下司の勘繰り」が出てくるのも止むを得ないと思います。
今回の衆院選で民主党が大勝したのは、多くの人達が、民主党が行ってくれるであろう「変革(チェンジ)」に期待したからです。しかし、その「チェンジ」が、せっかく芽を出しかけている「民営化」や「公正競争の導入(独占回避)」に「待った」をかけ、「昔に戻す」為の「チェンジ」だったとしたら、民主党に投票した多くの人達は「騙された」と思うでしょう。
多くの人達が、民主党が提唱した「官僚の支配する行政から、自分達が投票した政治家が直接関与する行政への転換」に賛同し、大きな期待をかけたようですが、「政治家というものは、選挙での支援の『見返り』に使う為に、国の重要な政策を決める傾向がある」ということが明らかになってくれば、多くの人達は、「そんなことなら、昔の官僚支配の方がまだ良かった」と考えるようになるでしょう。
鳩山さんを初めとする民主党のトップは、そんな事にならぬように、一日も早く「李下に冠を正さ
ず」を徹底して頂きたいと思います。
松本徹三





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NTTをはじめ、労組が民主党の支持基盤ですし。といっても労組が経営に口出ししてくる理由は知りません。NTTの偉いさんに労組上がりの人がいるとか、かもしれません。
いまの鳩山内閣は、参院選の準備内閣でしょう。子供手当てをぜひとも早期にやりたいという姿勢も、その1つと思います。