原口総務大臣の別の発言について - 私自身の独白を含め - 松本徹三

2009年09月20日 10:47

前回は、原口新大臣の発言に驚くあまりに、我ながら少し平静を失いましたが、よく考えてみると、これまでの自分の不勉強こそを、相当恥じなければならないことがよく分かりました。池田先生が、すかさず、「原口大臣と放送業界のズブズブの関係」も指摘して下さいましたが、これも、勤務先での仕事上、色々な遠慮があって、私がこれまで敢えて深入りして来れなかった分野のことです。


これらの事を深く考えてみると、実は、少し大袈裟ではありますが、「自分のこれからの生き方は、今のままでよいのかな」というところまで、私自身の心の中で、葛藤が広がって来ています。

私は原口大臣にはお目にかかった事はなく、これまでサイトを覗きに行った事もなかったのですが、今回総務大臣に正式に就任されたという事で、サイトをチェックしてみました。そうすると、同大臣は、「選挙対策上配慮すべき相手先」としては、強大なNTTでさえとても敵わぬ力を持つ「民放連」にも、既に驚天動地のリップサービスをしておられる事が分かりました。

迂闊にも今回サイトをチェックしていてはじめて分かったのですが、4月9日に日テレの「たかじんのそこまで言って委員会」で、「民主党政権になればテレビは明るくなる?」という質問に対し、原口さんはこう答えておられるのです。

「明るくなりますよ~。 だって今電波料いくらとられてます? 一生懸命稼いでいるのがですよ。天下りとかいろんなのに使われてるじゃないですか。それ(電波料)をおもいっきり下げますから。 それと規制が多すぎるでしょ。放送法の中の規制、これも余分なものをとりたいですね。頑張ります。」

わあ、これはちょっと凄いですね。

まず、携帯通信業界などは相当の電波料をずっと払ってきたのですが、テレビ業界はこれまで電波料を殆ど払っていなかったので、いくら何でもこれはおかしいという事で、最近は何がしかを払うようになったのです。しかし、その料率は、何故か、携帯通信事業者が払っている料率よりも、まだずっと低いのです。

ですから、「この料率は、これからは段々高くしていくのだ」というのが、一般に理解されてきたことなのです。それなのに、原口さんは、これを「思いっきり下げる」と言われたのですから、まさに驚天動地と言わざるを得ません。

そうなると、テレビ業界よりももっと高い電波料を長年にわたって払ってきた携帯通信業界に対する料率の下げ幅は、更に大きいものになるしかありません。そうなると、携帯通信料がその分だけ安くなって、利用者は大喜びですが、これによって大幅に減る国の収入は、誰がどのようにして穴埋めするのでしょうか?

遅ればせながら、この時のテレビ画像をもう一度よく見て、原口さんのご発言を分解していくと、

1. テレビ局は一生懸命働いて(稼いで)いるのに、今は電波料をたくさん払っているので、「暗い」状況だ。
2. しかし、民主党政権になれば、天下りとか色んなものに使われている無駄遣いを減らして、その財源で電波料を思いっきり下げてあげるから、これからは「明るい」状況になる。
3. 自分は、放送法上の規制の緩和とか、その他の事も色々やって、テレビ局の為に「頑張ります!」

というように読み取れます。

さて、今や原口さんは総務大臣になられたわけですから、先ずは総務省関係で、天下りとか色んなものに使われている無駄遣いを減らして、財源をひねり出さねばならないわけですが、総務省からの天下りは、圧倒的な数がNTTグループの会社で受けられています。先ずはこれをどうするのでしょうか?

官僚の天下りを受け入れてもらったからと言って、別に国に直接の損害が生じるわけではありませんから、「これをやめれば国に財務的なプラスが生じる」と大臣が考えておられるとすれば、「天下りを受け入れてもらった見返りに、これまでは国のコストで色々なお目こぼしをしてきたが、これからはそんな事をしないから、その分だけコストが下げられる」というようにしか解釈できません。本当にこのように理解して、これを期待してよいのでしょうか?

大臣就任後に、原口さんは、「電波オークション」の問題にも触れ、「テレビ局は今経営が苦しいのだから、急ぐべきではない」という趣旨の事をおっしゃっておられました。

「アナログ停波」についても、民主党の一部には「子供手当てなどの財源をひねり出すために、凍結」と言っている人も居るようなのですが、原口大臣のご発言は、「あくまで予定通りのスケジュールで、断固やる」ということでした。「たとえ税金を投入しても、アナログ停波は早急にやってもらわねば、いつまでもアナログとデジタルの二本立てでサービスせねばならないから、コスト的に大変だ」というのがテレビ局の立場ですから、テレビ局に対していい顔をしなければならない原口大臣としては、当然のご発言だったと見るべきでしょう。

「一生懸命働いているのに」経営が苦しいのは、電波料が高いからなのか、社員の給料が高いからなのかは分かりませんが、確かなのは、「一生懸命働いているのはテレビ局だけではない」という事です。テレビ局の人よりはずっと安い給料で、殆どの仕事をこなしている下請けのプロダクションの人達は、「一生懸命働いている」見返りに、原口大臣からどんなプレゼントをもらえるのでしょうか?

大臣は、テレビ番組に出演して、テレビ局の為に「頑張る」事を公約されたわけですが、一般国民、納税者や、テレビと競合するサービス業者の為には、(或いは、NTTと競合する通信事業者の為には、)頑張っては頂けないのでしょうか?

さてさて、ついつい口が過ぎてしまいました。よく考えてみると、私は総務大臣から免許を頂き、その監督下で仕事をさせて頂いている一介の携帯通信事業会社の役員です。畏れ多くも所轄官庁の大臣に対して、こんな批判をしてもよいものでしょうか? 私の同僚達は、「松本さん、いい加減にやめといてくださいよ。会社としては、後が怖いから」と言って、私をたしなめないでしょうか?

新聞社やテレビ局が怖いのも、政治家だけではありません。一般の企業だって、マスコミを敵には廻したくはないのです。硬派に徹していると、思わぬところで恨みを買って、仕事に支障が出ないとも限りません。

しかし、私はもう腹を決めました。ブロガーとしては、本職の勤務先の仕事とは関係なく、あくまで一市民の目線から物を見て、あくまで国の将来のための議論だけをしようと決めた訳ですから、今更、卑怯未練な真似はできません。ここまで来たら、もう歯に衣を着せる事は一切せず、何でもずばずば言っていこうと思っています。

私も、もうこれまでに十分実業分野の仕事はしてきたし、これからは、何事ももっと若い人達の方がうまくやってくれるでしょう。ですから、もし「アゴラ」で言いたい事を言って、その為に勤務先の仕事に支障を生じることになったとしたら、その時には会社を辞めればよいだけの事です。

松本徹三

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