官僚主導からマスコミ主導へ? - 池田信夫

2009年09月26日 19:48

「日本版FCC」がナンセンスなのは、松本さんのおっしゃるような日本の特殊性を知らないで、欧米のまねをすれば先進国になるという思い込みで組織いじりをしようとしているからです。日本の通信・放送行政で最大の問題は、テレビ局=新聞社の情報独占が圧倒的で、彼らが政治部の記者から政治家経由できわめて強い影響力をもっていることです。これはregulatory captureとしてよく知られている現象で、これを是正することが制度設計の最大のポイントです。


この点で日本版FCCは、問題を何も解決しないばかりか、悪化させるでしょう。現在の総務省なら、たとえば放送行政課長がテレビ局べったりの政策を出すと他の課がそれを牽制するといったバランスが働きますが、通信放送部門が独立すると、今の金融庁のように総務省本体のコントロールがきかなくなります。亀井静香氏のような人物が暴走すると、止められない。原口一博氏のようなテレビ局と関係の深い政治家が委員長になると、テレビ局に乗っ取られるおそれも強い。

少なくとも放送については、民放連の広瀬会長もいうようにBPOで十分であり、行政が介入する必要はありません。通信についてはNTTの独占状態という問題があるので、競争政策が必要ですが、これは公取委でやればよい。今の公取委には通信の専門家がいないので、総務省から専門家が転籍すればいいでしょう。あとの問題は、電気通信紛争処理委員会でやればよい。

今回の首相会見の開放をめぐる騒動で明らかになったのは、記者クラブの意向にそって平野官房長官がネットメディアの閉め出しを決めたらしいということです。「官僚主導」をやめるのはいいけれど、その代わり「マスコミ主導」になるんじゃしょうがない。特に小選挙区制によって政治が「劇場化」したため、営業的には沈没しているマスコミの影響力が政治的には強まるという皮肉な現象が起きています。党内基盤の弱い「改革派」ほど、テレビへの露出で勝負せざるをえないので、マスコミを敵に回せないのです。

こういう歪んだ状況を変える上でもっとも重要なのは、日本版FCCよりもメディアの多様化です。この点では周波数オークションよりもUHF帯のホワイトスペースのほうが重要ですが、真野さんもいうように、総務省も民主党もホワイトスペースにはまったく無関心で、地デジ(ISDB-T)を「南米標準」にする不毛なロビー活動に官民の総力を上げています。

残念ながら、今までのトラックレコードをみる限り、鳩山政権の情報通信政策には何の期待も持てない。むしろ電波利用料について問題提起した河野太郎氏のほうが(自民党総裁にはなれなくても)日本を変えてくれるような気がします。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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