台風で裁判員裁判の日程短縮 - 岡田克敏

2009年10月16日 10:35

 10月8日、台風18号が日本列島を通過しました。この影響で2件の裁判員裁判が日程を短縮して実施されました。これらは一部のマスメディアが小さく報じただけであり、重要なこととは認識されなかったようです。

 ひとつは大阪地裁の強盗致傷と覚せい剤取締法違反事件に対する裁判員裁判で、当初予定の3日間が2日間に、もうひとつは名古屋地裁の傷害致死事件に対するもので4日間が3日間に短縮されました。


 判決後の会見で、大阪地裁の裁判員から「(被告の)人生を決めるには短すぎた」「3日間あればもっと議論できた」「せかされたようで、こんなに早く決めていいか不安だった」という意見があったそうです。

 裁判の時間の3分の1、あるいは4分の1をカットするというたいへん大胆なやり方であります。裁判員裁判は裁判員の負担を軽減するため、元々短縮されている上、裁判員に対する説明時間が必要なため、実質的な審理時間はさらに少ないといわれています。その裁判の日程をさらに短縮してよいものでしょうか、しかも台風ごときで。

 日程を大きく短縮して十分な審理ができるのか、大変疑問です。2日間で十分だと言うなら、最初から2日間で日程を組むべきです。台風で1日ダメになれば予定を延ばすのがあたりまえでしょう。どうやら被告に対する十分な審理より、予定を延ばすための関係者の手数の方が重要とされているようです。これは本末転倒ではないでしょうか。

 決められた日程が優先されるということになれば、複雑な事件などで審理が予定通り進まなくても、「はい時間切れでここまで」ということになりはしないでしょうか。裁判は、裁判員など裁く側にとっては多くても数日の問題ですが、裁かれる側、被告にとっては一生の問題です。

 国民の司法への参加を看板にして誕生した裁判員制度ですが、その主目的は被告をより正しく裁くことである筈です。簡単に日程を短縮するようなやり方は裁判本来の目的より国民参加という形式を優先したものでないかと疑われます。もっともらしい理念と美しい言葉で飾られた裁判員制度ですが、早くも形式主義の馬脚を露したのではないでしょうか。

 一方、マスメディアがこの日程短縮を問題視しないことは腑に落ちません。裁判員裁判に関する報道は1回目の派手な報道以降、急速に小さくなっていますが、制度に批判的な報道は影をひそめ、なぜか肯定的な報道が目立ちます。識者のコメントも賛成派ばかりという印象です。

 マスメディアは裁判員制度に対する興味を失ってしまったようです。しかし制度は3年後に見直すことが決まっています。批判的な視点を失なわず報道を続け、問題を提起するのもメディアの重要な役割だと思うのですが。

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