インターネットが民主党を救うかも - 松本徹三

2009年11月09日 10:35

原口総務大臣の提唱による「情報通信の将来を考える四つのタスクフォース」の第一回の合同会合が最近行われ、その内容がインターネット中継されました。これは大変画期的なことだと思います。

これまでも、「各界の有識者を集めた審議会」のようなものは頻繁にありましたが、こういった審議会のメンバーの選定基準は必ずしも明確でなく、そこでなされている審議の内容が公開されることもなかったので、所詮は「官僚の用意した筋書きを追認して格好をつけるだけ」ではないのかという疑念が払拭できませんでした。


「政治的な問題は、何事によらず、一部の利害関係者と政治家、官僚が裏で話をつけて決めるものであり、国民にはその結果が示されるだけ」と、一般の人達はこれまで受け止めてきました。これでは、国民はしらけ、「多くの人達が参加する建設的な議論」も盛り上がりません。

審議会などの結論に対して、「何故議論の過程を明らかにしないのか」と問っても、これまでは、「技術的な難しさ」を理由にはぐらかされました。しかし、「今後は、全ての公的な会合について、『インターネット中継』を原則にすべき」と提案すれば、これを拒否する理由は見出せず、これまでのように、「技術的難しさ」という「言い訳」も出来なくなります。

「インターネット中継」は殆どコストもかからず、どんな議事録よりも正確な記録がほぼ無制限に残せます。(厖大な映像記録を残しても、記録媒体のコストも微々たるものです。)しかも、誰でもが、いつでもこの記録にアクセス出来、支持や反対を表明したり、コメントを書き込んだりする事も出来るのです。

「メディア」という言葉は、本来「媒体」を意味します。まずは印刷機の発明が、続いて無線技術を利用した放送システム(ラジオ・テレビ)の開発が、この「媒体」の影響力を拡大してきました。しかし、インターネットシステムの世界的な普及がこれらをはるかに超えるインパクトをもたらそうとしていることを明確に意識している人達は、未ださして多くはありません。

新聞や雑誌には紙数の制限があり、「何故この事を報道しないのか?」と言われても、編集者は、「限られた紙数の中では自分達が重要だと思ったことしか報道出来ない」という言い訳が出来ました。テレビ・ラジオも同じ事で、限られた電波を使って限られた時間内に報道出来る事は限られています。

報道して欲しい事を発表する側も、「何故限られた人(例えば記者クラブのメンバー)しか傍聴できないのか」と難詰されても、「場所の制限があるので」という言い訳が出来ました。

しかし、インターネットを利用することにすれば、こういった言い訳は全く出来なくなります。全ての情報は、無制限に、全ての人達に公開されることになるのです。

新聞や雑誌、テレビやラジオでどんな間違った事が報道されても、一般の人はその間違いを正す事は出来ず、どんな片手落ちの議論にも、反論する手段はありませんでした。しかし、インターネット上でなら、どんな人にもこれが可能になります。

為政者の側からすれば、これは大変煙ったい事ではありましょうが、考えようによれば、「当初の考えの中にあった誤りや見落としを正してもらえる機会が得られる」ということでもあり、大きなメリットがあるとも言えます。

審議会などのメンバーの選定に対する疑念も解消されます。これまでだと、官僚側から見て御しやすい学者などだけがメンバーに選ばれ、中には、選ばれてから、「自分にはよく分からない分野だが、これから勉強する」などと平気で言う人も居たようですが、インターネットで中継されるということになると、見識のない人は万人の前でそれが露呈されてしまいますから、辞退する人も出てくるでしょう。

似たような考えの人達ばかりが選ばれていて、一向に議論が盛り上がらない時には、「メンバーの人選に対する批判」が巻き起こり、途中で「メンバーの組み換え」を余儀なくされるようなケースも出てくるでしょう。「活発な議論のない審議会」などは、「八百長」と言われても仕方なく、本来意味を持たないものですから、これはとても良い事だと言えます。

インターネットの効用は、何も、審議会や公式の発表の中継に限られるものではありません。何事によらず、インターネットなどを利用して情報開示が徹底して行われれば、政治の透明性は確実に増し、「族議員の跋扈」などの悪習も是正されるでしょう。

色々な利害を持つ色々な団体が、政治家や官僚に「陳情」する事自体は別に悪い事ではありませんが、そこで何らかの「裏取引」が行われる事はあってはならない事です。これに金銭が絡めば「汚職」になります。しかし、この「陳情」の内容と「それに対する政治家や官僚の受け答え」が全て開示されていれば、「裏取引」などはなされようもなく、そういった疑念も完全に解消されます。

今回、民主党では、全ての「陳情」を幹事長のところに集中することになりました。「小沢一極支配体制がますますあからさまになった」として、非難する人達もいるようですが、「政治の透明性を増す為だ」とする小沢幹事長の説明には異論の挟みようがないでしょう。

望むらくは、この「陳情」の内容も逐一ネット上に公開されて、それに対して政府が如何に対応したかが、きちんとトレースされるようにすれば、国民は喝采を送るでしょう。

「インターネットの活用」については、以前から、どちらかと言えば自民党より民主党の方が積極的だったと聞いております。自民党にも熱心な人達は結構居たようなのですが、現実の政治には生かされてはいませんでした。これは民主党によっては僥倖といえるかもしれません。

「マニフェストと現実の間の矛盾」が次第に露呈され、「期待」より「不安」の方が次第に大きくなりつつある民主党政権の今日この頃ですが、インターネットをフルに活用して「情報公開」を徹底し、サイト上で多くの人達の意見を吸い上げる仕組みを作っていけば、前政権と異なり「本気で民意をくみ上げようとしている」ことを印象付けて、流れを引き戻せるかもしれません。

近い将来、種々の問題について、最終的に「マニフェスト遵守か? 現実解か?」を選ばなければならない困難な状況に至っても、この仕組みがうまく動いていれば、「民意に従っての方向転換」ということで、困難を乗り越えられるかもしれません。

それ以上に、「色々な考えを持った人達の寄せ集め」ともいえる民主党にとっては、「政策の内容」より「政策決定のプロセスの明確化」が、党内を一つにまとめる有効な手段になるかもしれません。インターネットの徹底活用は、その為の重要な第一歩になると思います。

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