来年の事業仕分けを改善して欲しい ―西 和彦

2009年12月01日 00:48

私は官僚の経験はないので大蔵省に予算要求したり、予算復活の大臣折衝などは新聞で読んだり、知り合いが話すのを聞いたぐらいしかなかったけれど、この度の一連の事業仕分けを見て、素朴に進め方を変えて欲しいと思った。来年に再び事業仕分けが行われるようであるので、まとめてみた。


テレビの言う問題点
テレビを見ていたら、ビートたけしが出ている事業仕分けを取り上げた番組があった。アナウンサーの言う論点は次のような点であった。私は次のような感想を持った。

1時間は短い
仕分け時間1億円につき、1分にしたらどうか。国の予算が100兆円なら、問題になるのは10兆円ぐらいだろうから、10万分で1700時間。これを一ヶ月ぐらいで仕分けしなければならないから、ワークグループを3ではなく15ぐらい作ってもらって、事業仕分けを行うのがよいのではないか。

判定ルールが不明確
これが政治である。文句を言ってはいけない。今回でも見ていて、「政治だなー」と思われるとりまとめがあった。こども劇団や教育の話である。

法的に拘束されない
裁判のように拘束されるなら、名前を「政事裁判」にすればいい。でも、そうすると運営責任は法務省にいってしまうので、財務省管轄なら、「公開予算折衝」であろうが、あくまで行政刷新会議管轄であるなら、なにか違う名前が必要ではないか。「事業仕分け」という名前が広まってしまったので、これからもそう呼ばれていくのであろう。そして、結果は法的ではないが、政治的に拘束されるのであるということになる。

私は、政治とは何かと言うことの定義から来る理由で、政治に半ば諦めに近い考え方を持っている。官僚から政治家になった知り合いに、あるとき質問したことがあった。「官僚と議員の違いはなにか?」彼は答えて曰く、「官僚は、直接にも間接にもお金を貰うと犯罪である。政治家は間接に政治献金を貰うことが出来る。」知り合いの最高位を極めたことのある元官僚に同じ質問をしたら、「官僚は論理的に説明できないことは出来ないが、政治家は、好き嫌いを政治というロジックとして使い、何でも出来る。」ということであった。

記録
今年は配布資料はWEBで、一部分だけダウンロード可能であった。仕分けはネットで中継された。来年は全ての資料・質問の記録と可視化を、お願いしたい。今年の記録が残っているから会話はすべて速記録に起こされている。読む方が、確実に早く、全体を把握することが出来る。テレビの報道は、一部分だけ。これでは間違いなく歪んで伝わる。
仕分けにリストされたのは、問題のある予算要求だそうだ。予算要求の中からそれをリストしたのは、財務省主計官僚。つまり検察官が犯罪を起訴すると決めたようなリストである。この主計官に対する今後の政治圧力と、政策官に対する圧力の両方を、記録して、公開することに意味があると思うのである。

場所
今年は国立印刷局の体育館であった。来年の場所はその会議の性格を規定する大きな要因となるであろう。行政を刷新する会議で、主役が国会議員であるなら、また、時期が5月初めということなら国会の前庭にテントでも張ってするとか、何か考えて欲しい。財務省のテリトリーで行なうと、「予算縮小のための査定会議」であるのは見え見えである。国民が望んでいるのはそれだけではない。

私の思う事業仕分けの改善点
今までの予算要求は、同じ目の高さの、予算要求省庁と財務省の主計官との省庁間の横横の関係の折衝であった。
それがこのたびの事業仕分けで、国会議員と民間ボランティアの仕分け人と、予算要求省庁とその先にいる現場との間の上下の関係の仕分けに変わったのである。これは、予算折衝における構造改革である。その本質は見事に、関係者の座り方に表われている。

座り方
これまでの予算折衝は
西:主計官
  対
東:要求省庁官僚

今年の仕分けは、
北:とりまとめ仕分け人、
西:仕分け人、
東:仕分け人、
  対
南:担当省庁
がロの字のテーブルにそれぞれ座るようになっている。座ったことはないけど、担当者の座っている場所からは右も、左も、前も仕分け人であるので、そのプレッシャーは、たいへんなものであろうと思う。

来年は
北:代表仕分け人と仕分け人は一列に座る
西:財務省の主計主査官
東:予算申請官庁の主査主計官に相当するクラスの責任者
南:政策の実施を担当する課長と、事業を実行する組織の責任者
が座って行うのがいいと考えている。

裁判は、裁判官が一番上座に座り、傍聴者は柵で仕切られ、下座のさらに下に座る。仕分けの場合、一般の傍聴者が座るべき場所は、仕分け人の後ろか、あるいは政策の実施担当者の後ろかは、議論の分かれるところであると思う。裁判で、弁護士がいなかったら大変であろう。検事に対してしっかりものをいうのが弁護士であるように、財務省の主計官に対してしっかり発言できるのは政策を担当する課長ではなく、それぞれの省庁の政策責任者であるほうがいいのではないか。新しい官職が必要かもしれない。

仕分け人と仕分けられ人しかいない仕分けは、「人民裁判」でも「公開処刑」でもなく、「江戸町奉行所のお白州」になってしまう。僕の好きなテレビの人気番組の「東山の金さん」と「大岡越前守」の録画を引っ張り出して見て、なにか似ていると、ふと思った。

仕分けの結論は合議にして欲しい
仕分け人が記入した用紙を回収して集計し、取りまとめ人がそれをそのままWGの結論にしていなかったようである。他に場所がないという制約や、一時間のうちに結論を出さなくてはならないという時間的な制約があるので、実際にどうするかは考えなくてはならないが、結論は合議にしてほしい。そうでないと、結果には誰も責任をもてない。取りまとめ仕分け人が、ほかの仕分け人を参考にして決めるということであるなら、全くの茶番劇である。実は応えは最初から用意されていたりして・・・取りまとめ仕分け人は、最後にそれを読むだけと、穿った見方をする人もいるかもしれない。

仕分け人を仕分けしてほしい
テレビは仕分け人を「仕分け人」としかテロップで報道しなかった。そういう指示が出ていたのであろう。私は知らない人ばかりだったので、写真と名前を一致させるための一覧表を作って、それを参考にしてテレビを見ていた。肩書きはともかく、名前はテレビに映るたびに、はっきりと報道して欲しい。裁判員は無作為に選ばれているが、仕分け人は政治家が指名しているようなので、名前は公表されている。だから名前はもっとしっかり出してもいいのではないか。

裁判員の入る裁判が行われている。勘違いして、被告人に説教する裁判員もいるそうだ。アゴラの岡田克敏さんの論説「仕分け人の態度と監獄実験」にもスタンフォード大学の実験のことが書かれていた。国会議員でないのに勘違いしている仕分け人もいたと思う。やはり、仕分け人には国会議員をその資格にしてもらいたい。裁判員のような多数決に民間人を入れるなら、仕分け人の任用にはかなりの慎重さが求められる。そうすると、この度、任用された民間人は「仕分け参考人」みたいなものなのではないだろうか。それでは自分のスキルと経験に対するリスぺクトが足りなくて、悔しいと思う仕分け人がいれば、そう言う人は国会議員の選挙に出て、当選して、晴れて仕分け人になればいいのだ。

仕分けに参加するということの結果として、仕分け人も評価されなくてはならない。それを選んだ政府の人だけでなく、情報公開してもらって、WEBでそのようなことが行なわれるであろう。

上級仕分けの設置と公開
最終の仕分け案は、総理大臣と行政刷新大臣と財務大臣が中心となり、民間委員が出席する行政刷新会議で決められるものであろう。しかし、仕分けが終わった翌週にさっさと仕分けの結論を出してしまうのはどうか。

第1仕分けのあとに、財務省の三役(全て国会議員)と政策省庁の三役(全て国会議員)と行政刷新会議の三幹部(1大臣、(副大臣、政務官ではなく、)2国会議員の総括仕分け人、3行政刷新会議事務局長(事業仕分けを発明した元大蔵OBの民間人)による第2仕分けが、行政刷新会議の前に必要ではないか。

仕分けの位置づけ
事業仕分けを財務省の予算査定の下請けイベントにしてはいけない。つまり、予算折衝にしてしまうのではなく、国の施策とその実行をどう効果的に実現するのかというスタンスでこの問題を考えてゆくことが大切ではないかと思った。

財務省の査定を公開可視化し、国会議員とその指名者による「人民裁判」的な無駄決めつけと、インスタントな無駄潰しの「公開処刑」といわれた事業仕分けであってはならないも思う。政策の予算化プロセスの可視化であればよいと考えている。政治レベルの積極的な政策の論議とその妥当性の話が、復活のプロセスで必要である。もちろん、このプロセスも公開して欲しい。

自分で自分を仕分けしなければならない来年
今年の事業仕分けは自民党時代のばらまき予算を裁く政治SHOW的なところもあったが、来年はどうなるのであろうか。予算の査定を政治主導で行うと、民主党は自分たちの決めた予算を自分たちで仕分けすることになる。だから来年は自己矛盾をはらんだ事業仕分けは行われないと思う。しかし、事業仕分けという名前は国民に歓迎されているので、財務省との予算折衝を公開し、事業仕分けという名前を付けて一丁上がりかもしれないと予想する。事業仕分けという制度の本質は来年に問われることになるであろう。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑