どのようにして「輝きのある日本へ」向かうのでしょうか?  -前田拓生

2010年01月01日 22:39

新年あけまして、おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて・・・

昨年末の30日に鳩山政権は「輝きのある日本へ」として、今後の経済戦略の基本方針を決定しました。「2020年度までに平均で名目3%、実質2%を上回る成長」「20年度の名目国内総生産650兆円程度」などが挙げられています。かなり勇ましい方針なのですが、具体的な内容となると「かなり怪しい」といった感じです。

ここでも、先日漸く決まった予算案と同様、羅列的であり、てんこ盛り状態という感じを否めません。環境、健康、観光、地域活性化などなど、民主党が政策集INDEX2009で挙げていたものを詰め込んだだけであり、「では、どうするのか」というと、かなり漠としたものしかありません。それ以上具体的なものになると「工程表などは今から(6月までに)検討」となっています。どうも筋道が見えてきませんね。

財政的な手当てだけで「国家が成長する」と思っているわけではないでしょうが、「成長分野」として掲げているのは、「アジア戦略」以外は、政府支出によって何とか持ちこたえている分野が主であり、そこに「どのような成長を求めようとしているのか」がわかりません(「アジア戦略」についても、結構、ザックリですので疑問もありますが・・・汗)まぁ、今から「考える」といっているのだから、工程表等が出てくるまで待つしかないということなのでしょう。

しかしそのような中で、何もしなくても通常の支出だけで政府債務残高(いわゆる「国の借金」)は否応なく増加してきます。その上に、今回の成長戦略に掲げられた分野に体制作りやシステム構築の名目で、成長過程に入るまでの間、政府支出を増加させようとしているとすれば、今後も政府債務が急激に膨らむことになってしまうように感じます。

低金利状態とはいえ、金利水準よりも経済成長スピードが低い状態であれば、政府債務は発散していくことになります。「発散しない」ということであれば、体制づくり等のために“一時的”に政府債務が増加し、増税幅が現在想定している金額よりも増えたとしても、それはそれで耐えられるのかもしれません。でも、今回政府が挙げた成長戦略の分野で、想定通りの経済成長が達成できるのでしょうか???

現在、政府の税収等は40兆円弱に対して、政府債務残高は800兆円を超えています。つまり、収入の20倍の借金をしているのです。これは“政府”が借金をしているので、政府自身が返済をしなくてはいけないことになります。にもかかわらず、年末のTVの特番では「政府には債務の他に500兆円の資産があるので、現状、危機的とはいえない」という論調の話をする人がいました。ところが、その「500兆円」の中には“少なくとも”社会保障基金300兆円弱が入っています。社会保障基金は政府の本質的な資産ではありません。国民から預かっているものであり、それを他に流用することはできないのです。したがって、もし仮に、社会保障基金以外がすべて政府債務に充てられるとしても、つまり、200兆円を引いたとしても、収入の15倍ですから、政府債務は額面通りの危機的な状態には変わりありません。

これを政府自身が返済をすることになります。といっても、政府は自ら付加価値を生みませんから、結局、国民の税金を増加させることになります。まぁ、すでに「増税」はみえているのですが、ここから将来が不透明なままで「さらに増税をする」というのは勘弁してほしいものですよね。

ということであれば・・・

一つの手段として「返済しない」という手もあります。とりあえず、このまま借り換えを続けるわけです。しかし、これは金利が付いているので、雪だるま式に増加していくことから、金利が収入を上回る時点で「アウト」です。

その他としては「インフレ」という手があります。インフレになれば、債務返済における名目金額が実質的に少なくて済むので、債務者(つまり、ここでは「政府」)にとって有利になります。ただ、収入に対して20倍の借金ですから、ひとたび、通貨である「円」が「信用できない」ということになれば、ハイパーインフレになる可能性は否めません。

でも、これも年末のTVの特番を見ていると「ハイパーインフレにはならない」という人がいます。今までおカネをジャブジャブにしてもインフレになっていないというのが、その根拠らしいです。確かにおカネをジャブジャブにしても産業で使われなければ、国内的にはインフレにはなりません。ところが余ったおカネは海外に流れることが多いので、海外流出すれば、円が売られることから円安になります。円安は輸入品の国内価格を引き上げるので、輸入に頼っている財を中心に物価を引き上げることになります。

日本は現在、食物や資源エネルギーの多くを輸入に頼っていることから、急激な円安に見舞われれば、資源エネルギー関連財などの高騰から、コスト・プッシュ・インフレを引き起こし、日本経済を混乱させることが考えられます。ここでは「通貨の減価」よりも、経済的混乱の方が問題になります。このような状況は、世界的に通貨(この場合「円」)の信頼が失われているのだから、円安が加速し、ハイパーインフレになることもあり得るのです。ハイパーインフレになると、これは取り返しがつきません。「円」という通貨を世界的に信頼してもらえないわけですから、円よる財の交換ができなくなり、輸入自体が困難になってしまいます。このようなハイパーインフレは、当然、国民経済に対して深刻なダメージを与えることから、この選択肢を選ぶのも問題でしょう。

ということで、考えられるのは「国債を持っている人から税金を取ろう」ということであり、これが「(国債保有者を含めた)資産課税」です。ただ、これは格付け機関で「デフォルト」と見なされるみたいですから、安易に行うことはできません。

以上みてきたように、収入に対して20倍と極めて深刻な政府債務残高ですから、高度成長期のような経済成長にならない限り、将来は増税になることが決まっていて、これ以上、債務を増やせば増やすだけ、その増税幅が増加していくということなのです。なので、難しいのはわかっていますが、政府には債務残高を如何に増やさず、しかも、日本経済を成長させる道筋を早く示してほしいと願っています。

おそらく国内の産業界としても“次の一手”がみえないので、少なくとも“日本国内”における投資意欲が減退している状態という感じではないでしょうか。投資意欲がないということは、前向きな資金ニーズもないということですから、金融庁等から「貸出を増加させよ」といわれても、邦銀は貸出を増加させることができません。況して、現状の不景気状態の中ですから、銀行が保守的な経営をするのは経営者にとって当然の責務といえます。とはいえ、収益を求めないといけないので、国債等による有価証券ディーリングや対外に融資先を求めることになってしまいます。このような中で日銀にさらなる金融緩和を求めてもほとんど意味がありません。

今回の政府方針は、数字だけは“具体的”で“力強い”のですが、今のままでは「輝きのある日本」のイメージが掴めません。政府としては「甘い夢」を述べるだけでなく、大規模な制度改革なども含めて、早く「現実的な戦略」をしっかりと示してほしいと思います。

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