「ゆうちょの限度額引き上げ」に思うこと   -前田拓生

2010年01月22日 12:58

ちょっと前のニュースですが、ゆうちょや簡保等の限度額の引き上げを検討しているとのことです。引き上げの理由は「利便性の向上や、郵便・貯金の全国一律サービスを維持する収益を確保するため(日経1月19日付朝刊1面)」ということです。

ここでゆうちょ等は、集めた資金のほとんどを国債や財政投融資債などで運用しているのであり、現在、一般の企業等への貸出を行っていません。このような中で「ゆうちょ等の限度額の引き上げ」によって収益を上げるということは、単純に「国債等をもっと買って、利ざやによる収益を稼ぐ」ということになります。

つまり、現在ゆうちょ等は、一般の国民から低い金利で貯金をしてもらい、その資金で国債等を買って“利ざや”を稼いでいるので、貯金の金額が多ければ、それだけ国債等を大量に買えることから“利ざや”を増やすことができるので「全国一律サービスを維持する収益」を確保できるということなのでしょう。

まぁ、この理由も「どうか(民業圧迫?」」と思いますが・・・

実際には「全国一律サービスを維持する収益」を云々するというよりも、やはり、国債増発による安定消化先確保のために「ゆうちょ等を利用しようとしている」と考えているとみた方がいいのでしょうね。邦銀も「そろそろ政府債務残高もまずいよね」と思い出してきているところなので、政府としても「国債増発をしても大丈夫」ということを示すには「ゆうちょの限度枠撤廃」は不可避ということなのでしょう。その布石として日本郵政の社長人事があったとすると合点がいきますよね。

日銀としても、このまま緩和政策を続け、国債を買い続けるということは“理論上”は可能ですが、実際には日銀券の残高以上には国債を保有しないというルールがあるので、これ以上、国債を増発すれば、日本国内に国債を買う主体がいなくなることになります。その前に何か手を打たなければということからの発想が「ゆうちょの限度枠撤廃」ということなのだと理解できます。

ゆうちょの貯金限度枠を撤廃すれば、ゆうちょ自体、“民間”というものの「政府銀行」ですから、リスク考慮後のリターンは高くなるので、国民の貯蓄資金の多くがゆうちょに吸い込まれることになるでしょう。そして、ゆうちょには、貸出ノウハウはおろか、資金運用のノウハウ・人材もいないのですから、国債等を買い切る以外に収益を稼ぐ手立てはないので、政府が増発した国債をせっせと買うことになるのだと思います。

まぁ、これで国債の増発は“当面の間”問題が表面化する心配はなくなり、国債利回りの上昇懸念も薄らぐという意味では「良い法案だ」ということになるのかもしれません。

とはいえ、国債で集められた資金は政府の公共事業に使われます。公共事業として政府支出されるという意味ではGDPを押し上げますが、追加の付加価値は、なかなかそれだけでは生まれません。にもかかわらず、「景気が悪いから」ということで国債に依存すれば、いつかは返済をしないといけないわけですから、そう遠くない将来において「かなり深刻な増税」または「ハイパーインフレ」になってしまうことになるでしょう。

現在、邦銀の多くはゆうちょ同様にナローバンク化してしまっていますが、「だから」といって、完全なナローバンクであるゆうちょ等への資金経路を太くするという政策は「何の解決にもならない」ということだけでなく、結果としての事態を、さらに悪化させているだけだと思います。

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