名護市長選の「民意」を斟酌する必要はない - 池田信夫

2010年01月27日 09:03

名護市長選挙で、米軍基地の辺野古移転に反対した稲嶺進氏が当選したことで、日米合意の実現は絶望視されている。これについて平野官房長官が「民意を斟酌する必要はない」と発言したことが地元の反発を呼んでいるが、市長選で表明された「民意」とは何だろうか。


問題が米軍基地だから大問題になっているが、これは本質的にはゴミ処理場や原発と同じ迷惑施設の問題であり、「沖縄の心」などのセンチメンタルな話は忘れたほうがいい。ゴミ処理場の周辺住民の「民意」を住民投票で決めたら、ノーという結論が出るのはわかりきっている。それを100%尊重したら、公共的に必要な迷惑施設はまったく建設できなくなる。

この種の問題はありふれており、解決策もはっきりしている。地元に賄賂を出すしかないのだ。これは違法行為という意味ではなく、「コースの定理」としてよく知られている考え方によるものだ。迷惑施設に対して政府が補償金を支払い、周辺住民がそれを受け入れれば、双方にとって望ましい状態が実現できる。ただ一方の当事者が政府だと、相手が過大な要求をするので、強制収用というオプションも必要だ。

辺野古についても、基地の補償金として「北部振興策」に8年間で600億円(市民1人あたり100万円)にのぼる国費が投じられている。島袋市長の時代に、名護市は賄賂と交換に基地を受け入れるという意思決定をしたのだから、民意は明確だ。今回の市長選で表明されたのは、それをひるがえして「基地はいやだが補償金だけはもらっておく」という事後的な変更で、こんなただ乗りを容認したら、今後の公共事業はきわめて困難になる。

米軍基地の移転は、日米の政府間で合意し、地元も含めて既成事実になった意思決定だ。それを安易にひっくり返すと悪い前例になり、日米間の信頼関係がそこなわれて安保体制にも悪影響が大きい。辺野古移転は、市長選の結果を斟酌しないで当初の合意を履行すべきだ。名護市民がそれに反対するのは、600億円を返してからにしてほしい。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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