「必要な抑止力とは」 ―吉原修―

2010年02月05日 09:24

アメリカ合衆国が台湾への武器売却を決定したことに、中国政府は怒っている。あるいは怒っているポーズを強調している。

これに対して、2月1日付東京発ロイターは、グレグソン米国防次官補(アジア・太平洋安全保障問題担当)が、国際問題に関するフォーラムで「米国は台湾の自衛能力を確かなものにする義務がある。米国はこの義務を遂行し、今後もそうする意志をもっている」と述べた、と報じた。

この発言に言う義務とは、国際的な約束ではない。1979年以来、台湾に関するアメリカの政策は台湾関係法を基礎としている。同法は、台湾へ防衛的な武器を供与すること、また台湾の人々の安全を危険にさらすような武力や強制力にはアメリカが抵抗する能力を維持すること、をアメリカの政策であると規定している。


この法律はアメリカの国内法であり、政府はこの法律に基づく義務を負っている。国防次官補の言う義務とはこれであり、国際約束ではない一方的なものだ。台湾の安全保障について、アメリカは国際的に拘束されていないだけではない。台湾にはアメリカ軍基地は存在しない。また台湾は独立国家ではなく、中国の一部であることをアメリカは認めている。それでも、中国が強く反発しているのは、台湾関係法とそれに基づく政策が効果的な抑止力を発揮していることを明確に示すものである。効果的な抑止力が働いて、中国は手を出せない。

ひるがえって、日本はどうか。日米安全保障条約という国家間の条約によってアメリカは義務を負っている。そして日本は、台湾や韓国、あるいはイスラエルのように、その存立自体が危機にさらされている状況にない独立国家である。自衛隊の近代的な装備を持った軍事力がある。

それに加えて、日本には、台湾にもイスラエルにも置かれていないアメリカ軍の基地がある。そこに配置されているアメリカ軍は小規模ではない。戦闘地域ではない外国におかれているアメリカ軍としては、ドイツに次ぐ世界第二位の規模である。これだけの規模のアメリカ軍がいなければ、日本の安全保障は守れないと言うのは本当なのであろうか。攻撃部隊である海兵隊は、日本の安全を危険にさらすような武力に抵抗する能力というよりは、敵を先制攻撃したり、あるいは反撃したりする能力を持つものだ。そのような能力を持つ部隊の存在が日本の抑止力を構成することは当然であるが、日本が必要とする抑止力として不可欠であるか否かについては大いに疑問がある。

普天間基地をめぐる議論が長引いているこの機会に、日本が必要な抑止力とはどのようなものなのか、じっくり議論をしてはどうであろうか。

吉原修

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