マーケティングをキャンペーンと考えるのをやめよう  - 小川浩

2010年02月11日 23:36

マーケティングは企業間の戦争だと僕は思っています。
戦闘ではありません、戦争です。マーケティングの提案にいくと、即効性のあるキャンペーンばかりの話をされてしまうのですが、本来はマーケティングは長期的な視野と成果目標に立って行っていくべきものです。

少し話を変えます。
日本のiPhoneの普及速度は、いまや世界一だそうですね。

僕は2008年9月に、自分のBlogに以下のようなエントリーをしました。

日本のネット環境や、そもそものモバイルインターネットの普及度・成熟度を考えると、欧米よりは遥かに進んでいることは事実であり、それがiPhoneが持つ新奇性を薄め、衝撃を和らげていることは疑いのない事実だ。しかし、何度も言うが、iPhone 3Gの世界的な成功は明らかで、その模倣者もまた大きな成功を求めて続々と登場してきている。GoogleのAndroidはいまのところまだこれといった成果を見せてはいないが、iPhoneのモバイルSafariと同じWebkitエンジンを使った高速ブラウザであるChromeをモバイル対応して、投入してくることは間違いがなく、それらのAndroid携帯電話は、iPhoneと同じジャンルのスマートフォンとしての姿を露にしてくるだろう。

つまり、iPhoneとiPhoneクローンが日本に入り込んでくるに従って、日本の独自仕様のケータイ市場は徐々に浸食される。そうすると、既に台数的には飽和している日本の市場の端末プレイヤーは売れ行きをのばせないから、海外進出を考えるか撤退を余儀なくされるか、二者択一に追い込まれる。今は(僕も含めて)iPhoneと従来型のケータイの二台持ちを強いられているiPhoneユーザーも、いずれはiPhone一台でおおよそのことができるようになるから、二者択一はますます現実のものとなる。

日本のケータイは季刊発行の雑誌のようなもので、非常に短いサイクルで入れ替わるがiPhone 3Gのようなスマートフォンは1年以上売れ続けるし、その間にさまざまなソフト購入やOSのバージョンアップによって機能の改善が図られる。全く異なるマーケティング戦略の元に動いているのである。

だから世界の事情と商品特性、そして長期的な市場の動きを見ていかないと、すっかり価値を見誤ることになるだろう。
僕たちのスタンスはまるで変わらない。3-4年の間に、日本のケータイのプレイヤーの多くはiPhoneやAndroidがもたらす新しいモバイルインターネットに対応を迫られ、日本のケータイの生態系は大きく変わることになるだろう。


商品を消費者が購入しない理由(ある種の負の先入観)を僕はデスマグネットと呼ぶようにしています。消費者の頭にはり付いた磁石というわけです。

iPhone登場時、日本ではiPhoneが流行らない理由として、多くの人が

・絵文字がない
・バッテリー寿命が短い
・タッチパネルは爪の長い女性似は使えない
・電子マネーが使えない

などをあげていました。iPhoneに関するデスマグネットはこうしたものでした。

絵文字とバッテリーに関しては、ソフトバンクの努力もあり、いまではほぼ問題はありません。
しかし、タッチパネルについても電子マネー対応についても、いまのところAppleは放置です。つまり、いまのiPhone人気は、絵文字対応などのメーカー努力もありましたが、結局のところ、時間とともにiPhone自体が持っている革新性がモノを言ったわけです。要するに、デスマグネットは、早めに強引にでも外しておいたほうがよいものと、時間とともに自然に外せるたぐいのものがあるということです。
日本のケータイは非常に短いサイクルで売り抜けることを考えてばかりいたので、全てのデスマグネットを無理矢理外そうとするあまりに、結果として角を矯めて牛を殺すような商品ばかりになったと僕は思います。

いずれにしても、iPhoneを買わない、買いたくないというデスマグネットはいまや「ソフトバンクは電波が弱くてつながらないところが多い」といった不安くらいのものになりました。これがなんとかして外さなければならない磁石なのか、もう少しすると自然に外れる磁石なのかはまだ分かりません。

しかし、iPhoneの勢いは事実として止まらず、そしてGoogleのNexus Oneのように、ほぼiPhone同様のパッケージを持つ製品が登場してきています。

マーケティング イコール広告、あるいはマーケティング イコール キャンペーン、と考える企業や代理店の在り方が是正されない限り、僕は日本のケータイ、いや、さまざまなジャンルの商品力は落ち込んでいくと思っています。
リコールで揺れるトヨタのプリウスですが、ハイブリッドカーという商品の市場をここまで大きくするのに、彼らは10年以上を要しました。同じことが他の日本の大企業にできないわけはないのです。

マーケティングとは、商品の企画から始まります。どんな市場にどんな商品を投入し、そしてどの企業と戦うのか。これらを全部ひっくるめて考えていかなければならない時代が来ています。

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