「営利を尊重する」という考え方も必要  ‐前田拓生

2010年02月20日 12:52

報道によれば「所得税の最高税率引き上げ」という案が出ているようです。また、少し前には「内部留保に課税」「株式配当への優遇税制廃止」などを今の政府は考えているとのことです。どれをとっても「本当!」と疑ってしまう内容だけに、記者が首相等の話に尾ひれをつけて報道したものだとは思います。とはいえ、もし「本当」なら、由々しき問題ばかりです。

このような露骨な「金持ちいじめ」「グローバルな大企業いじめ」をすれば、「金持ち」や「グローバル化した大企業」などはすぐに日本を離れ、どこか違う国に移動してしまうでしょう。それよりも問題なのは、「お金持ちになるために頑張る」というインセンティブが失われ、悪平等的な風潮が強まることから、さらに一層、人々の期待・希望を奪い、国の衰退化を加速させる可能性があることであり、真偽はともかく、このような話が出るだけでも問題だと思います。

財政には「所得の再分配機能がある」ので、競争激化により、何らかの理由で生活に支障が出るような場合、生活が困窮しないように厚いセーフティネットが必要であるということは当然であり、このような福祉政策は行うべきです。しかし「だから」といって競争の勝者を過度に敵視した政策は問題です。

「友愛」という考え方も、非営利事業体を活用した社会システムの構築も大切なのですが、「利益を出す」ということが、すなわち“悪”のように考えるのは良くないと思います。「利益を出す」ということは、その過程で「費用」として社会に還元している部分が必ずあり、その部分が社会を豊かにしていると考えれば、利益が出た時点で社会貢献になっているわけです。

しかも、「利益(リターン)」は事前に確定しているものではなく、そこには必ず「リスク」を伴います。そのリスクを承知で事業を行うわけですから、結果として「利益が出た」という場合の「利益」はリスクを負った人のモノになるのは当然です。にもかかわらず、「利益(つまり、所得)が多いから」ということで、事後的に過剰に税金を課せば、リスクを負う主体が減少するに決まっています。

況してや・・・

利益のうち「配当等」として社外に流さなかった部分、つまり「内部留保」について課税するというのは大きな問題です(本当に「内部留保に課税」などすることはないと思いますが)。そもそも「利益」として法人税を支払った残りですから、ここにさらに課税するというのは二重課税になります。しかも、一般に「内部留保」というのは、剰余金として「資本の部」に計上されたモノ以外に、減価償却費累計額として資産のマイナス計上されたモノも指します。とすると「費用」に課税されることになります。これは会計原則を揺るがす問題になってしまいます。

このようにリターンである「利益(または、減価償却費などの「費用」)」に対して、合理性のない課税を“事後的に”課すのであれば、企業家は「日本での活動をやめる」ということになるでしょう。また、同様に「株式投資」などというのも、決して事前に利益が保証されているものではないにもかかわらず、確定利付き商品と同様、または、それ以上に重い課税をしようとしているのが「株式配当への優遇税制廃止」です。

人・モノというのは、簡単には物理的な国境を超えることはできませんが、おカネは比較的簡単に海外に流出してしまいます。その上、リスク考慮後のリターンを求めて動くわけですから、仮に今の日本に「チャレンジしよう」とする優秀な企業があったとしても、株式投資によるリターンに過度に課税されるとなれば、資金が回っていかないことになります。

以上のように、「所得税の最高税率引き上げ」「内部留保に課税」「株式配当への優遇税制廃止」などはすべて、市場の効率性を歪めるものであり、このような考え方が、(将来も含めて)現状の民主党政権に「ある」と市場が思い込んでいることから、多くの主体が「リスク」を取りたがらなくなっているのだと思われます。日本国内ではあらゆる主体がリスクを取らない状態になっているので、設備投資にも積極的にならず、不況が長引くことから、さらにデフレを引き起こしていると考えることもできます。

つまり、リスクを取った主体が「それなりに報われる」という制度・システムを作らなければ、各種市場に資金は流れ込まないため、いくら「金融緩和」を行っても、肝心なところに資金が流れないので「デフレからの脱却は難しい」ということになります。

したがって、政府としては「日銀には金融緩和を望みます」という前に、まずは政策的に「おカネの流れを滞らせている部分」の改革をすることが必要なのだと思います。さらに言えば、「日銀の金融緩和」を望むよりも、世界から資金が入り込むような「市場」づくりの方が、デフレ脱却には有効であり、今後の「日本」の進む道も見えてくるように感じます(決してそれだけで良いというのではなく、リアルに経済に刺激を与えることが何よりも重要です)。

当然、市場だけをみた、または、「利益追求だけを望む」という、いわゆる「市場原理主義」を標榜するのは問題です。とはいえ、「市場」というのはできるだけ、変な歪が入らないように規制を掛けない方が良いのです(もともとコントロールが難しい「ブラックボックス」のようなものですから)。今の政権は「市場原理主義が社会をおかしくした」という認識が強すぎるため、今のようなおかしな政策議論が出てきているのでしょうが、市場メカニズムを活用しつつ、その上で「人としての豊かさ」を求めていくことは可能だと思います。

一方に過度に偏るような政策ではなく、バランスを取った、「国民生活第一」の政策議論を望みます。

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