20年前から進歩していない医薬分業論  井上晃宏(医師、薬剤師)

2010年03月31日 10:07

 20年以上まえに放棄されたはずの論点をまた蒸し返す人がいるので、フォローしておく。


・院外調剤によって、医師の不正を薬剤師が糺すことができる
 医師が信用ならないのと同じように、薬剤師も信用ならない。薬剤師(院外薬局)も不正行為を行っている。
 院内調剤であれば、病院ぐるみの不正でない限り、薬剤師が勝手に不正行為を働くことはできないが、院外調剤だと、薬剤師の不正行為は誰も監視できない。

・医師のミスを薬剤師がダブルチェックしてくれる
 それは院内薬局でもできる。薬剤師が常駐していない小規模診療所においてのみ、分業をすると、調剤に薬剤師が関与することになる。つまり、小規模診療所にのみメリットがあるのだから、そこだけ、院外調剤を診療報酬で誘導すれば良いのであって、薬剤師の常駐する病院、診療所まで、院外調剤を誘導する必要はない。

・処方箋を外部に出すことが、医療情報の公開につながる
 院外だろうが院内だろうが、薬の説明書は添付されている。また、それがなくても、「医者からもらった薬がわかる本」を読めば、患者はパッケージの記号やマークから医薬品名およびその効能を知ることができる。
 「薬の専門家である薬剤師が監査することが重要なのだ」と言い募る人がたまにいるが、以前のエントリで書いたように、薬剤師は薬の専門家ではない。

・分業率が60%だから今更元には戻せない
 この人は、分業率が20%だった時には「分業率が低いから分業はできない」と主張したのだろうか。そもそも、院外調剤を強制する法的な規定はない。ただ、院外調剤の保険点数を優遇することによって、経済的な誘導を図っているだけである。点数の優遇を止めれば、自動的に、より効率的な院内調剤に戻ることになる。

・院外調剤だと、医療機関は在庫負担なしで自由に処方ができる
 院外処方をした場合、病院、診療所側に在庫負担はなくなるが、薬局側が在庫コストを払うので、大して変わらない。
 また、処方が完全に自由ということはなく、地域ごとに、医薬品在庫の申し合わせをしなくてはならない。
 院外処方をしていても、休日夜間は薬局が開いていないから、病院、診療所側は、医薬品を在庫しないわけにはいかない。結局、医薬品フリーにはならない。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑