20年以上まえに放棄されたはずの論点をまた蒸し返す人がいるので、フォローしておく。
・院外調剤によって、医師の不正を薬剤師が糺すことができる
医師が信用ならないのと同じように、薬剤師も信用ならない。薬剤師(院外薬局)も不正行為を行っている。
院内調剤であれば、病院ぐるみの不正でない限り、薬剤師が勝手に不正行為を働くことはできないが、院外調剤だと、薬剤師の不正行為は誰も監視できない。
・医師のミスを薬剤師がダブルチェックしてくれる
それは院内薬局でもできる。薬剤師が常駐していない小規模診療所においてのみ、分業をすると、調剤に薬剤師が関与することになる。つまり、小規模診療所にのみメリットがあるのだから、そこだけ、院外調剤を診療報酬で誘導すれば良いのであって、薬剤師の常駐する病院、診療所まで、院外調剤を誘導する必要はない。
・処方箋を外部に出すことが、医療情報の公開につながる
院外だろうが院内だろうが、薬の説明書は添付されている。また、それがなくても、「医者からもらった薬がわかる本」を読めば、患者はパッケージの記号やマークから医薬品名およびその効能を知ることができる。
「薬の専門家である薬剤師が監査することが重要なのだ」と言い募る人がたまにいるが、以前のエントリで書いたように、薬剤師は薬の専門家ではない。
・分業率が60%だから今更元には戻せない
この人は、分業率が20%だった時には「分業率が低いから分業はできない」と主張したのだろうか。そもそも、院外調剤を強制する法的な規定はない。ただ、院外調剤の保険点数を優遇することによって、経済的な誘導を図っているだけである。点数の優遇を止めれば、自動的に、より効率的な院内調剤に戻ることになる。
・院外調剤だと、医療機関は在庫負担なしで自由に処方ができる
院外処方をした場合、病院、診療所側に在庫負担はなくなるが、薬局側が在庫コストを払うので、大して変わらない。
また、処方が完全に自由ということはなく、地域ごとに、医薬品在庫の申し合わせをしなくてはならない。
院外処方をしていても、休日夜間は薬局が開いていないから、病院、診療所側は、医薬品を在庫しないわけにはいかない。結局、医薬品フリーにはならない。
コメント
歯に衣着せぬ井上さんの記事、新聞や雑誌でも何故かとりあげない問題で、いつも痛快に拝見してます。医師であると同時に薬剤師でもいらっしゃる井上さんだから書ける鋭い切り口ですね。きっと敵も多いことと推察いたしますが、ひるまず告発を続けて下さい。