石原知事の「ご先祖への義理立て」発言と排日思想 - 北村隆司

2010年04月27日 10:00

新聞報道によりますと、石原東京都知事は、永住外国人への地方参政権付与などに反対する集会で、親などが帰化した与党幹部が多いとした上で「ご先祖への義理立てか知らないが、日本の運命を左右する法律をまかり通そうとしている」と発言し「帰化された人や、お父さんお母さんが帰化された、そのお子さんという議員はいますか」と質問。「与党を形成しているいくつかの政党の党首とか、大幹部には多い」として、帰化人は形式的には日本人でも文化や習慣、伝統面で必ずしも日本人と同じとは言えないと言う趣旨の発言をされた由。


同じ日本国籍を有しながら、特定の人種やその先祖をを取り上げて、国家への忠誠を疑う石原都知事の手法は、日本人の血を持つと言う理由だけで日系人の土地や財産を没収し、強制収容所に送り込む事を正当化したルーズベルト米国大統領やウォーレン・カリフォルニア州知事の論理に共通した恐ろしい差別思想を感じます。

排日思想の影響を受けた1942年のロスアンジェルスタイムズ紙のある日の社説は、こんな主張をしています :
“日本生まれの両親を持ち、日本の伝統に育まれ、日本的な家庭環境で暮らした日系人は、偶々米国籍は持っているとは言え米国人として成長するのはごく稀で、殆どは実質的日本人として育って行く。従い、日本人と戦争関係にある現在、日系人を潜在的な敵国人として扱う事は、米国にとっては必要な手段である。”

ひょっとすると、博識な石原さんの発言は、この記事を盗作されたのかも?
同知事は又、「小笠原村長選の当選票数は719票。村が抱える沖の鳥島はグアムと沖縄の中間にあり、その周辺で中国が潜水艦で調査をしている」と指摘した上で、「日本人と違う意思を持つ外国人に(国益さえ)左右されかねない」とも発言。

この発言に刺激されたのか、日本最西端に位置する沖縄余那国町議会や長崎県壱岐市議会、対馬市議会でも永住外国人の参政権賦与の法制化反対の意見書を採択するなど、「国境の島」からの相次ぐ反対決議には、参政権付与で国防上の危険が増すという危機感が醸成されたと聞きます。

与那国島は日本の国防の重要な場所に位置していながら、防衛の空白地同然で、町が自衛隊配置を求めていた経過があり、「参政権付与が現実となると、外国勢力の思惑が島内の選挙に持ち込まれる恐れがある」といった声が出る一方、壱岐市議会の採択文では「永住外国人に参政権を付与されたら、対馬を実質的に韓国領にされてしまうという悪夢が実現するのではないかと大きな懸念を持っている」とも報道されました。参政権賦与の論議が益々過熱して、戦争前夜のヒステリー状態になる事を心から憂います。

真珠湾攻撃を受けた米国の反日ヒステリーは、日系人憎しに凝り固まり 1942年3月になるとデウイット将軍は、日系人は全員スパイの疑いがあるとして「敵国人の血を持つ人間(日系人)は、太平洋岸から160キロ以内に居住する事を禁じ、引越しの予定がある者はすべからく引越し先を登録する事を命ずる。」と言う軍令を発しました。

デウイット将軍は、日系人は米国を裏切る可能性が高いので戦略的に重要な西海岸から内陸部の強制収用所へ収容する必要性があるとルーズベルト大統領に進言し、それが受け入れられると日系人の強制収用を指揮し、収容後の日本人を極めて過酷に扱った悪名高い人種差別論者でした。この様な他人種排斥の歴史は繰り返したくないものです。

人種差別には絶対反対ですが、小沢幹事長の以下の様な意見には賛成出来ません。: 
“参政権が国家主権にかかわるものだという論理は正当であり「参政権が欲しければ帰化をすればいい」という考えは一番いい方法だと思うが、永住外国人の大半を占める在日韓国・北朝鮮の人々は、日韓併合以来、敗戦までは大日本帝国の同じ臣民であった歴史的な経過があり、国籍を取得する要件が厳しく、永住外国人側も過去の併合の歴史やそれに伴う差別や偏見に対してわだかまりがある。 以上のような政治的側面、制度的側面双方から考え、一定の要件のもとに地方参政権を与えるべきで、その結果として帰化も促進され、永住外国人が本当によき日本国民として、共生への道が開かれることになる。”

小沢氏が「参政権が欲しければ帰化をすれば一番いい」と本当に信じているのであれば、帰化の障害になっていると言う国籍取得要件の緩和に努力すべきであり、地方参政権を与える事が永住外国人の日本に対するわだかまりを解いたり、日本人の差別、偏見を無くすと言う主張は余りに政治的で、理屈に合わない珍論としか思えません。私は、本件に関しては政治的側面よりも制度的側面を重視する立場で、地方参政権付与は憲法違反だと思っています。

とは言え、全く知性の感じられない粗雑な言葉で相手を恫喝したり、他人種の誹謗を繰り返す石原知事の言動は、海外のネオナチのアンちゃんと同じレベルで、上に立つ者としては失格です。

EUの様な地域連合社会の到来を迎え、外国人への参政権賦与論議はますます国際的な問題になりつつあり今日、石原知事も国際的に通ずる理性的な論議が出来る様に努力して欲しいものです。

石原知事の暴言に比べると、地方参政権賦与反対の自民党都議が石原都知事に質問した「国会で(外国人地方参政権の)法制化をもてあそぶのは地方に失礼で、地方自治体が議論すべきだ」と言う主張は、地方の事は地方が決めるべきだと考える私には多いに説得力のある主張でした。

              ニューヨークにて        北村隆司

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