ソフトバンク孫社長VSジャーナリスト佐々 木さんの熱いバトルに期待 - 大西宏

2010年05月03日 15:25

もうご存じの方も多いこととは思いますが、念のために、5月13日(木)20時から22時頃迄、ソフトバンクの孫社長と、ジャーナリストの佐々木俊尚さんの対談があり、それがUstreamで生中継されます。今から楽しみですし、どれぐらいの視聴者が殺到するのか、もし殺到した時にUstreamが持つかどうかも興味のあるところです。


現在、総務省の2015年までにブロードバンドの普及率を100%に引き上げるという目標を実現するためのタスクフォース「ICTビジョン懇談会」が開催されています。5月中旬にはなんらかの方向性が打ち出される予定になっていますが、そんななかで、政府の『光の道』構想を支持する、それは税金を使わなくともNTTを解体・再編すれば光ファイバーでできる、利用料金も下げることができ、医療や教育も変わると突然ソフトバンクの孫社長からの提案がありました。それに対して、佐々木さんが、ブログでまっこうから異を唱えたのです。

ソフトバンク『光の道』実現に向けて(PDF資料)

ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(上)
ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(下)

それに対して、Twitterで、孫社長から「日本の将来の為何を成すべきか一度語り合いましょうか」という提案があり、佐々木さんが「それならオープンな場で」という逆提案をされ、Ustreamで公開討論ということになりました。

このいきさつは、この討論で司会をされるそらのさんのブログをご覧ください。
孫正義さん×佐々木俊尚さんの『光の道』対談をダダ漏れします

佐々木さんの主張は、日本の情報通信の発展のネックになっているのは、インフラではなく、むしろ情報通信やインターネットの利活用の低さにあり、やみくもに、離島にまで光ファイバーをつなげても、利活用が進まなければ、やがてそれが不採算に陥り、道路公団のように税金を投入することになりかねないということでした。

佐々木さんに限らず、このソフトバンクの「光の道」構想に異を唱えている人も多いのですが、自ら携帯ビジネスも展開している孫社長が、ブロードバンドの通信インフラが、光ファイバーを全家庭に(FTTH)に普及させるよるだけで達成されると考えているとは到底思えません。なぜ『光の道』構想を、孫社長が光回線の普及に絞って提案してきたのか、その背景としてどのような考えがあるのか、ぜひ佐々木さんは引き出して欲しいところです。
ソフト・バンクの『光の道』は第二の地デジになる。(池田信夫ブログ)
ソフトバンク孫社長が仕掛ける「NTTの構造分離」への疑問(『現代ビジネス』町田徹)

ブロードバンドの普及は、光ファイバーによる『光の道』だけでなく、『電波の道』との両輪で達成できるものであり、離島や僻地などはむしろ電波を使うことがコストとしても安いという話は納得できますが、では、光回線の利用や普及をどう促進するのかということとは別問題ではないかという気がします。

正解は、『光の道』も『電波の道』も広げていくことでしょうが、その一方の柱である光回線の利用がまだ十分でない理由は、もちろん佐々木さんがおっしゃるように、利活用のほうにもネックがあることは事実でしょう。しかしインフラが整っている都市部でも、料金の高さや、集合住宅では光回線を入れることに障害があるといった場合も多く、そういった現状をどう改善するかの対策も必要になってきます。

ソフトバンクの孫社長や、イーモバイルの千本会長は、光回線の6割を超えるシェアを持つNTTの光回線事業を分離させればできる、あるいはそうしないと普及には限界があるという主張です。本当にそうなのか、あるいはそうでないとすれば、どのような方法があるのかということも議論すべきことでしょう。

民間の競争にゆだねることで実現が促進されるという発想から言えば、NTTを解体して、バラバラにして競争を促進するというこの案になってきます。しかし、ことインフラに関しては、必ずしもうまくいっていない、なにもかもバラバラにするというアンバンドリング政策で成功したのは、例外的に日本だけで、それも孫さんの天才的な企業か精神によって成功しただけだという指摘もあります。
「光の道」への疑問 – 池田信夫

政治主導でなければ利害対立は解決しない
日本の情報通信革命を促進するということが理解できない、あるいはピンとこないという人はいても、反対する人はほとんどいないと思います。しかし実際にどう進めるか、つまり「いかに」の道筋をつけることは、道路問題や郵政民営化問題の比ではない複雑さ、利害の対立が起こってきます。

もうすでに、どのように光回線の普及を促進するかということでも、通信業界でそれぞれの利害が対立し合意がとれません。
NTTの持つ光回線を利用した接続サービスを売りたいソフトバンクやKDDI、またイーモバイルは、NTTの解体、再編を迫っています。当然、光回線の高いシェアを握っているNTTは反論しています。また、関西では光回線のシェアが高いケイオプティコムにとっても、回線事業の分離は、回線、接続一体の強みがなくなり、事業が成り立たず納得できないということになります。
ちなみに、ケイオプティコムは関西なら利用者も多く、またテレビCMも多く流れている通信会社です。関電の子会社の通信会社で、関西は、NTTの光回線のシェアも全国に比べれば低く、和歌山や奈良では50%を切り、また競争の結果、光ファイバーの普及率も高かったはずです。
いずれにしても、政治主導で解決しなければ、それはいつまで経っても平行線です。

『電波の道』でも同じことです。ブロードバンド普及のもうひとつの鍵を握っているのは『電波の道』ですが、電波帯には限りがあり、それをを拡充するためには、放送局が抱えている電波帯を解放させることが不可欠になってきます。このことは、池田信夫先生がこれまで一貫して主張されてきたことです。
しかし、『電波の道』に関しては、放送局は自らの利権を削ることになり、そうそう簡単に譲るとは思い得ません。それは認可制度である限り、政府が召し上げるしかないのです。

積極的には取り上げないマスコミ
この問題はマスコミは積極的に取り上げません。なぜなら、電波帯の開放は、放送局の利害と対立します。また、新聞社も情報通信革命の進行は、ただでさえ揺らぎ始めた新聞社の今の「紙」に頼ったビジネスモデルの衰退をさらに加速させなかねないからです。
おそらく、マスコミに関わらず、ブロードバンド普及に、総論は賛成しても、各論になると抵抗するのは、霞が関でも起こってくるでしょう。
厚生労働省が、自らの利権を守るために、制度変更して、医薬ルートを守っただけでなく、露骨に医薬品のネット販売に大きな制約を課すという時代逆行も平気でやりましたが、マスコミからの批判はほとんどありませんでした。

情報通信革命は、それ自体が成長戦略そのものとして焦点を当てるべき分野であり、しかも、医療、介護、環境などの成長戦略を横串で支え、推進するエンジンになってきます。それだけでなく、日本のさまざまな産業のビジネスの進化や国際競争力強化にもつながってくる重要な課題ですが、それは共通認識ができても、「総論賛成。各論反対」の限界を突破しなければ絵に書いた餅になります。

ぜひネットからでも、この議論をさらに深めていくことに期待したいものです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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