国際原子力機関(IAEA)の査察官が北朝鮮の寧辺核関連施設から国外追放されて4月16日で5年目を迎える。換言すれば、IAEAは北の核問題検証で5年間の“空白”があることを意味する。
そのため、IAEAの天野之弥事務局長は定期理事会の冒頭声明では北の核問題については「まったく情報がない」と言い続けきた。
▲IAEAと北朝鮮の核協議風景(IAEA本部にて、撮影)
例えば、天野事務局長は今月の3月定例理事会で、「北朝鮮の核問題は引き続き深刻な懸念だ。北朝鮮当局はIAEAとの間のセーフガード協定の順守を明記した国連安保理決議の義務を速やかに履行すべきだ」と要求したばかりだ。同事務局長のこの発言内容は昨年11月理事会とほぼ同じだ。北の核問題では進展がないから仕方がない。
一方、IAEAの5年間の空白期間、北側はさまざまな核関連活動を実施してきた。北朝鮮は過去、3回核実験を実施した。最初は2006年10月9日、そして2回目は09年5月25日、そして13年2月12日の計3回だ。そのうち、2回はIAEAの空白の5年間の期間だ。
北は昨年、寧辺の5KW黒鉛減速炉を再稼働したと表明している。実際、同施設周辺の上空から放射性希ガスが検出されている。北はIAEA査察官の不在をいいことにウラン濃縮関連活動も本格化している、といった具合だ。
IAEAと北朝鮮の間で核保障措置協定が締結されたのは1992年1月30日だ。あれから20年以上が過ぎる(イランの核問題が理事会の議題となったのは2003年以降)。
北朝鮮とIAEA間の主要な出来事は以下の通り。
①IAEAが1993年2月、北に対し「特別査察」の実施を要求。北は拒否し、核拡散防止条約(NPT)から脱会表明。
②米朝の核合意(1994年)
③ウラン濃縮開発容疑が浮上
④北は02年12月、IAEA査察員を国外退去させ、翌年、NPTとIAEAから脱退。
⑤6カ国協議の共同合意に基づいて、北は2002年、同国の核施設への「初期段階の措置」を承認し、IAEAは再び北朝鮮の核施設の監視を再開。
⑥北は09年4月、IAEA査察官を国外追放。それ以降、IAEAは北の核関連施設へのアクセスを完全に失う。
IAEA査察局アジア担当のマルコ・マルゾ部長は「6か国協議の再開が実現されれば、IAEAの査察問題が議題となる。IAEAとしては北問題での政治的環境が改善されるのを持つだけだ」と諦観している。
なお、オランダ・ハークで3月25日開催される日韓米首脳会談では核問題を含む北朝鮮への対応が主要議題となる。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。