犬と猫のどちらが好きかで、犬派と猫派に分かれるが、当方は久しく犬派だった。猫を飼ったことがないので、猫の愛好家の思いは推し量るだけだ。犬が大好きな当方はこのコラム欄でも少なくとも10本以上、犬の話を書いてきた。
庭のないウィーン市の住宅に住んでいるので昔のように犬を飼うことはできなくなったが、友人や知人が夏季休暇に出かける時など、彼らの犬を数週間、お世話することで犬を飼えない寂しさを紛らわしてきた。
ところで、最近、猫の株が急上昇してくる一方、犬の評判が下がってきたのだ。もちろん、当方が聞き、知った範囲でいっているので、誤解しないようにお願いしたい。
犬は飼い主に忠誠心が強く、奉仕精神に溢れているが、そうと言えない犬の話題が最近頻繁に耳に入ってくるようになった。
「礼儀作法の先生の犬の『不作法』」2013年3月7日)でも書いたが、日本でも知られているエルマイヤーダンス学校のトーマス・エルマイヤー校長の飼い犬が最近も他の犬を噛んだり、襲ったというニュースが流れてきたばかりだ。
オーストリアでは犬が人間を襲って怪我をさせるケースは少なくない。特に、闘犬が子供を襲って大怪我させた時などは大ニュースとなり、闘犬の管理問題まで発展したことがあった。オーストリアでは日本の忠犬ハチ公のような話はめったに聞かない。
特に、観光地ウィーンの生活は街自体が落ち着きがないこともあってストレスが結構多い。デリケートな犬は人以上にストレスに悩まされているのかもしれない。
そのように考えていたら、米国カリフォルニアで起きた猫の話が伝わってきた。隣人の犬が突然、子供(4歳、自閉症)を襲ってきたのだ。それを見た子供の家の猫(ターラー)が猛進してその犬に体当たりした。自分より小さく、本来ならば簡単に逆襲できるが、猫の勢いに驚いたのか、犬は逃げ回った。猫は犬が逃げ去るのを確認すると子供の傍にきたというのだ。
時間のある読者はこの動画を見ていただければ、その猫の勇気が感動的に伝わってくるだろう。それにしても、どうして隣人の犬が知り合いの子供を襲撃したのか。犬の名声を傷つける蛮行以外の何ものでもない。
今年始め、英国のストリート音楽家の青年(ジェームズ・ボーエン)とボブと呼ばれる野良猫の話が大きな話題となった。怪我していた捨て猫(ボブ)を助けたストリート音楽家がその後、さまざまな幸運に恵まれ、ボブと音楽家の話は童話となり、世界的なベストセラーとなったのだ。日本でも「ボブという名のストリート・キャッツ」という名で本が出版されたという。もちろん、実話だ。
それにしても、犬はどうしたのだろうか。猫はここにきてその存在感を如何なく発揮しているのに、犬にまつわる話は悲しいものが多いのだ。犬を愛する当方は犬に奮起を促したい。犬は人間の最良の友だ。たとえ、ストレスで悩む犬が出てきたとしても、本来は優しい存在だ。猫の活躍ぶりを聞くたびに、少し寂しい思いを感じている。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。