初の砕氷能力搭載LNG船、北極海航海を開始

scf-group.ruより(編集部)

毎日飛び込んでくる人目を惹くニュースヘッドラインの背後で、物事がBusiness as usualで進んでいるのだ、ということを思い出させてくれるニュースが目に止まった。ノルウエーの “The Independent Barents Observer” が8月1日に報じている “Russia’s new Arctic supertanker brings Norwegian LNG to Asia” というニュースだ。

何と船名が “Christophe de Margerie” となっている。すぐに、ムスタッシュが特徴の、あの屈託のない笑顔が思い出された。そう、2014年10月、モスクワの空港で事故死した仏トタールの最高経営責任者だったクリストフだ。

露Novatek80%、仏トタール20%で始めたヤマルLNGプロジェクトは、その後Novatekが51.1%にシェアーを減らし、中国CNPCがLNG引き取りと合わせて20%、さらに昨年資金手当てをしたとき(弊ブログ#173「露ヤマルLNGプロジェクト、漸く資金手当て完了(2016年4月30日)」参照)中国Silk Road Fundに9.9%を譲渡している。

昨年6月、サンクトペテルブルグの郊外で行われた「初の砕氷能力搭載LNG船」の命名式ではプーチン大統領が演説し、ヤマルLNGは露中仏の共同作業で出来上がったと称賛し、当時のトタールCEOだったクリストフの名前を第一船の船名として命名したのだそうだ。

日本との関連は次のとおりだ。
昨年12月、プーチン大統領が来日したおり、JBICが2億ユーロの輸出金融を行うことで合意し、関連契約書が締結された。LNGプラントのEPC(Engineering, Procurement and Construction=設計・調達・建設)を受注した日揮と千代田化工のJVが必要とする資金を手当てするためだ。

また、弊ブログ#173で紹介したように、商船三井が2014年7月、同型のLNG3船を受注し、韓国で建造している。

LNGそのものの引取りについてはまだ何の契約もなされていないが、生産が開始されればおそらくスポット(当用積み以外に、5年未満の短期契約を含む)での引き取りが始まると見られている。

なお、記事の要点をかいつまんで紹介すると次のようになっている。
・世界最初の北極海商用航海が始まった。スタットオイルのスノービットLNGを積載した ”Christoph de Margerie” 号は、7月末日バレント海のメルコヤ・ターミナルを韓国に向けて出航し、もうすぐヤマル半島の沖合を通過する。韓国まで15日かかる見込み。

・同船は、厚さ2.1メートルまでの氷塊を破壊する能力を備えており、韓国の大宇で建造され、ベルギーのジーブルージュで試験を続けていた。

・同船は、15隻からなるヤマルLNG用船団の1隻(ヤマルLNGの能力は約1,600万トン/年)。

商船三井の3船はもう引き渡されたのだろうか。ヤマルLNGからの第一船出航予定と合わせ、チェックする必要があるな。