露ヤマルLNGプロジェクト、漸く資金手当て完了

商船三井が2014年7月、最大氷厚2.1メートルまで運航可能な砕氷装置を備えたLNG船を3隻、韓国の大宇に発注したことで我々の関心を引いたロシアの北極海に面したヤマルLNGプロジェクトだが、ようやく中国の国営銀行2行との融資契約が締結された、とFTが報じている。 “Chinese lend $12bn for gas plant in Russia Arctic” (Apr 29, 2016 10:50pm) という記事だ。

本来であれば1年以上も前に資金手当ても完了しているはずだったが、ウクライナ問題に起因する米国の対ロシア制裁が影響し、これまで時間がかかった、という内容だ。

中国輸出入銀行と中国開発銀行が、93億4000万ユーロ(107億ドル)と97億6000万人民元(15億ドル)を融資することで合意した。

総投資額270億ドルのこのプロジェクトは、ロシアのNovatekという会社が主体となって進めているが、同社の有力株主であるGennady Timchenko氏が制裁対象の「プーチン大統領の取り巻き(inner circle)と判断され、米ドルによる融資は禁止、また米欧の銀行が関与できないことに加え、おりからエネルギー価格が低迷していることもあって融資作業が難航していた、とFTは伝えている。

これまで株主が128億ドルを投資しており、ロシアの国有銀行が36億ユーロ、SWFが1500億ルーブル(20億ユーロ)をコミットしているため、必要資金は集まった勘定だ。

ちなみにNovatekが今年初めに9.9%を中国のSilk Road Fundに譲渡し51.1%の株主となり、残りは中国のCNPCとフランスのトタールが20%ずつ保有している。

ヤマルLNGプロジェクトは2017年に初出荷を目指し、最終的には年産550万トン装置を3基、年産1650万トンのLNG生産を目指すプロジェクトであるが、NovatekのCFOは「建設は50%以上完成している」とコメント、FTは「来年にも操業開始見込み」としている。

なお、2014年7月9日の商船三井のプレスリリース「ロシア・ヤマルLNGプロジェクト向け新造LNG3隻の運航契約を締結~世界初の砕氷LNG船によるLNG輸送プロジェクトに参画、北極海航路の商業運航を実施~」によると、中国海運(集団)総公司とのJ/Vを通じて輸送に参画し、7月8日に大宇と造船契約を締結した、最大氷厚2.1メートルまで運航可能で、ヤマル半島サベッタ港から夏季には北極海航路を通ってアジア向けに輸送する、となっている。

当時は地球温暖化が生み出した新ルートと評されていたが、現実問題として一年のうちどのくらいの期間、北極海航路を運航できるのか、興味津々である。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月30日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。