相矛盾する女性の社会進出と少子化対策 --- 岡本 裕明

アゴラ

安倍政権が掲げる女性の社会進出の支援と少子化対策。一見、よさげに見えますが、普通に捉えるとこの発想は矛盾があります。

一般的に女性の社会進出支援となれば子育て層を働きやすくする保育所などの整備の充実、扶養控除枠の103万円や社会保険の130万円のハードルの税制改革、更に育休3年案といったことが目につきますが、これらの案を想定する対象者はやはり、若い夫婦という気がしてなりません。つまり、社会人を一定年数、経験していて「社会人勘」が残っている人をいかに長く使うか、ということであります。


仮にこれらの対策を完備した後、夫婦が子供をもうけながらも共稼ぎをするとします。この夫婦は二人目以降の子供を作るだろうか、というのが私の最大の疑問であります。現在、出生率が1.43程度ですから対策というのは二人目、三人目の子供を作る勇気を持ってもらうことが少子化からの脱却に必要になります。

ところが、奥さまが子育てをしながら社会人復帰した場合、二つの潜在的問題が生じます。一つは仕事に追われて子作りどころではなくなるというメンタルな面。その上、日本の人手不足は今や、尋常ではなく、残業や無理なシフトはもはや当たり前で、奥様とご主人の勤務時間がずれて家族がそれこそ顔を合わさないという状態すら生まれてくると考えられます。今や24時間、あらゆるものが動いている時代であり、昼夜問わず、労働力は必要なのです。当然、9時─5時の仕事時間で対応できるという時代ではないのです。しかし、保育所は夜中まで預かってくれません。

二つ目に世帯収入の上昇に伴う少子化現象でしょうか? 夫婦に一定の収入増大が見込まれる場合、家庭の行動はまずは家族内の消費の上昇、次いで子供の養育費、塾、習い事などへの出費、更に進学する時代になれば私立入学といったクオリティオブライフへの傾注でしょうか。それに子供が一人増えることに家が手狭になり、引っ越しをしなくてはいけませんが、多額のマンションのローンが残っているうえに日本のマンションは特殊物件を除き、基本的には確実に値下がりしますから、家族構成の変化に伴う転居の自由が少ないということになります。

つまり、役人が考える女性進出と少子化対策はほぼ矛盾が生じてしまうということになります。

では、どうしたらよいか、ですが、私なら抜本的にこう考えます。

持ち家政策の見直し  これは先進国で持ち家比率がやや下がる可能性がありますが、それは持てないということばかりではなく、ライフスタイルに合わせた住居を選んでいくという流れもあります。若い夫婦が無理して長期のローンを組んで25年先、30年先の住居を決め込む理由はどこにもないと思います。賃貸をうまく利用する発想も必要でしょう。

女性は子供が好き  自分の子供の面倒を見るというのは母親の強さと本能であります。ならばその強さはより育めばよいでしょう。私はこの世代に無理に社会進出を促進しなくてもよいのではないかと思います。

女性活用の本命  私は子供が大学生など一定年齢に育った母親に本格的社会復帰をしていただく社会人教育プログラムを作るべきかと思います。子育ては立派な仕事でそのプロジェクトを終えた母親はその経験を通じて十分な能力を備えているかと思います。ならば、この年代のお母様が如何に社会復帰できるか、こちらに最重点を置くべきです。

もちろんこれらは私の考えですので意見もいろいろあると思います。ですが、私のポイントは安倍政権が後押しする政策は時として心地よい言葉が並ぶものの本質を捉えると実現が可能なのか、という点に於いて時として疑問を持たざるを得ないのです。特に女性の社会進出と少子化対策は相矛盾しているように思えてならないのです。

もっとも男の私の目線と女性の目線はまた違うでしょうからご意見頂戴できればと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。