デジタル教科書教材協議会DiTTシンポ「みんなで考えよう!情報リテラシー教育」を開催しました。
登壇者は総務省、電気通信事業者協会、ソフトバンク、ヤフー、ニフティ、DeNA,LINE、安心ネットづくり促進協議会(安心協)、マルチメディア振興センター、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)、インターネットコンテンツ審査監視機構、全国携帯電話販売代理店協会。
青少年のネット安心・安全対策に関わる行政、通信キャリア、プロバイダー、SNS、ケータイ販売、公益法人などオールキャストです。ここまで一堂に会したことはなかったでしょう。
ネット安全安心対策、いわばネットの「影」対策は、2008年ごろから本格化し、安心協やEMAが設立されました。ぼくは安心協を設立する際の世話人であり、EMAも理事を務めています。通信・プロバイダー・SNSにとっての大きな課題となり、法律、フィルタリング、リテラシー教育という、規制、技術、教育の3本柱からなる対策が立てられました。
一方、DiTTが推進する教育情報化はデジタルの「光」を担当し、2010年から本格化。教材会社やメーカーが中心となって、端末配備、ネット整備、教材開発のこれまた3本柱からなる推進策を講じてきました。
その後、影も光も変化がありました。当初ガラケーを念頭に置いていたネット安心安全対策はスマホが中心課題となりました。教育情報化はPCからタブレットに主役が移りました。家庭でも学校でも、個人が持つフラットなネット端末をどう使うのか、という共通テーマになってきたわけです。
そして2016年、双方に動きがありました。安全安心は総務省にタスクフォースが組まれ、新しい対策を講ずることになりました。ぼくが座長を務めました。教育情報化はデジタル教科書の正規化が政府方針となり、プログラミング教育の必修化も決まりました。
家庭でも学校でも、いよいよ一人一台オールネット利用の時代。使わせるのか使わせないのか、という議論は終わり、どう使わせて何をすべきか、という段階に突入しました。光も影も一体として対策を講ずべきです。それを話し合ってもらいました。
総務省・湯本消費者行政課長は、1)普及啓発:リテラシー教育の教材開発や現場連携、2)フィルタリング改善:サービスの名称統一など、3)体制整備:関係団体の連携など が大事だと説きます。この行政、総務省はきちんと動かしているとぼくは見ています。
ソフトバンク、マルチメディア振興センター(eネットキャラバン)からは、子どもたちのリテラシーは進化しており、今や問題なのは「大人」のほうだという指摘がありました。大人が後れている。これに対しニフティは、大人の疑問に子どもが応える取組をしているそうです。
EMAなどから、「学校」の後れを指摘する声も相次ぎました。子どもはわかっているが、先生がわかっていないので、対応が進まない。家庭との差がありすぎる。いじめ問題も、先生がLINEを使っていないので対応策がわからない、という実態です。
これに対し、ケータイ販売店の団体である全国携帯電話販売代理店協会(全携協)は、全国8500店のうち5222店を「あんしんショップ」に認定し、ショップ店員を学校に派遣するなどして地域としての対策に乗り出しているそうです。これは期待できます。
今後、教育情報化が進展しますが、学校の先生方に期待しすぎるのも厳しいですね。民間企業とも連携して進めましょう。その前に、文科省は人事メールが流れて混乱し、大事な情報は紙で、なんて言い出す始末で、まずはそこから改めてもらわないと・・・。
締めにぼくがコメントしました。
「この問題に取り組むみなさんのご努力により、10年前の不安はかなり解消しました。敬意を表します。しかし、環境は変化しました。当時LINEはありませんでした。子どもは前に進みますが、大人や先生の問題が浮上しています。
一方、全携協のような新プレイヤーも登場しています。この場に集まったみなさんと、教育情報化を推進するみなさんが連携すれば、かなり厚い対策が打てます。ネットの光と影を共に引き受けて、ITを安全・安心して豊かに使いこなす環境を整えましょう。」
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年8月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。