バンクーバーから車で小一時間のアボッツフォードやラングレーといった郊外でタウンハウスと称される住宅が飛ぶように売れています。日本では割と少ないタウンハウスは分譲型の長屋を想像していただければ分かりやすいと思いますが、通常2階建て、ないし3階建て(半地下を含む)でサイズ的には150㎡くらいが標準的かと思います。
タウンハウスの特徴は多少なりとも庭があるのに戸建てほど価格が高くなく、通常マンションのような管理組合を組成することから居住地全体の統制がとりやすくなっています。
5月のバンクーバー地区の販売状況を見る限り、バンクーバーの郊外地区では前年比19%増の販売となっており、専門家もコンドミニアムから戸建てやタウンハウスのように地面に接した物件にシフトしていると解説しています。なぜ、これらの物件が売れるのか、ある秘密が隠されているように見えます。
まずは価格帯。日本円で換算して3000万円台はごく普通のカナダ人家族には手が出しやすい価格帯であるとされています。2011年のバンクーバー地区の世帯所得は平均が83000ドル(約790万円)中央値が63000ドル(約590万円)ですから中央値から見ても住宅価格が年収の5.5倍程度で収まります。
住宅ローンは金利が2%台後半ですが、物件価格が比較的値上がり(この一年では年3~5%程度)する特性を考えれば日本の金利が1%を割っていても確実に値下がりする日本の不動産よりお得ということになります(土地価格の下落は止まりましたが、不動産は通常、土地と建物の合算価値であることに留意です)。
ちなみにバンクーバーの固定資産税の評価額を見ると私の住むコンドは建物の価値が2013年に5.3%も上昇していますし、マリーナ施設(固定資産)は今年6.9%上昇、商業不動産の建物部分はこの3年、ほぼ変わらずとなっています。この建物の評価の仕方の差が日本の不動産とカナダを含む外国不動産の価値の差なのであります。
バンクーバーはカナダでもっとも不動産価格が高い街と知られ、北米でも有数の水準にあります。ダウンタウンのコンドミニアムならばこれはと思うのは5000万円から数億円ですし、バンクーバー近郊の戸建住宅も同様の価格帯(平均戸建て住宅価格は2014年5月で約9000万円)であることから一般家庭には手が出ないとされています。
富裕層の移民を歴史的に多く迎え入れたカナダでは個人資産が多いアセットリッチの人たちが増えてきました。つまり、ビジネスを通じた収入が多いキャッシュフローリッチではないことからバンクーバーの不動産相場は景気に鈍感とされています。同じことは例えばハワイの不動産相場がそっくりであり、リーマン・ショック後も多少の調整はあったものの大きく下がることはありませんでした。
そうはいっても子供ができたばかりの若い夫婦の家庭の収入が高いわけがなく、都心よりも環境が良い郊外、コンドミニアムより子供を遊ばせられるグランドオリエンテット(Ground Oriented)と称する戸建てやタウンハウスがより人気が高いのであります。
もう一つはダウンタウンからの脱出組。カナダはモザイク文化と称するほど多国籍国家ですが、どうしてもその文化になじめない人もいるものです。「白人が逃げ出す」とも言われる現象は北米でもイギリスでも起きており、ここバンクーバーでも同じことが発生しつつあるようにみえます。あるモーゲージブローカーが郊外の住宅販売場から電話をしてきたので冗談交じりで「買っている人は白人で溢れているだろう?」と聞いたところ、「ご名答!」と言われました。
白人が都心のコンドから逃げ出す理由はもう一つあります。建物の管理に関して長期的視野に立った改修や問題が起こる前に対策を立てるプリベンティブメンテナンスへの投資に積極的なのに対してアジア系の人は値上がりしたら売る前提にあるため、目先の管理費が安くなることに固執し、将来への投資を拒むことで揉めやすいとも聞こえてきます。
こうみると郊外の住宅は白人にとってユーフォリアなのかもしれません。なかなか日本では例のないケースだと思いますが、今日この話題を入れた伏線は日本で外国人の不動産取得がしやすくなるとのことで今後、中国人の不動産購入が増えてくると思います。お隣さんが外国人となった時、あなたならどうするのか、不動産の世界から覗いてみました。参考になればと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。