9月1日の債券市場では、後場に入り先物が一段高となり、引けにかけて10年国債のカレント(直近発行された銘柄)である347回債がマイナス0.005%をつけ、昨年11月16日以来の長期金利のマイナス化となった。
日本の長期金利は慣例で、10年国債のなかで最近発行されたカレント物の利回り(単利)を差している。実は10年国債のなかでもカレント以外のものはすでに利回りがマイナスとなっていたことで、カレントのマイナス化は時間の問題となっていた。
日本の10年債利回りは7月7日に日銀が指し値オペを実施したあたりから、低下基調となっている。ちなみに7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施されている。
7月7日には指し値オペとともに国債買入で5年超10年を5000億円に増額し、7月12日には3年超5年以下を3300億円に300億円増額していた。その後の利回りの低下もあり、5年超10年以下は8月25日に300億円減額したことで今年1月27日前の水準の4100億円まで戻していた。また、9月1日には3年超5年以下を300億円減らして3000億円と7月7日以前の水準に戻している。
これらの国債買入の減額は売り要因とはならず、むしろ国債は買い進まれている。それだけ地合が好転しているということであるが、その背景には米国の長期金利の低下がある。
日銀が指し値オペを実施した7月7日あたりを天井として、米国の長期金利も低下基調となっていたのである。もちろん米国債が日銀のオペレーションの影響を直接受けて買われたわけではなく、物価上昇が抑制されていることもあり、FRBの正常化の動きがかなり慎重になるのではといった思惑もあろう。この米長期金利の低下もあって日本の国債利回りも低下基調となり、日本の長期金利も再びマイナスとなったといえる。
しかし、日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の背景には、マイナス金利政策への金融界からの批判等があったことで、イールドカーブを立てることが目的としてあったはずである。そもそも20年債利回りまでマイナスとなってしまい運用難となっていたことが長期金利操作の要因となっていた。つまり市場としては、ここからさらなる10年債利回りのマイナス化は受け入れづらいはずであり、日銀としてもあまりマイナスが深掘りされたくはないのではなかろうか。
とはいえ外部環境次第ではさらに10年債利回りが低下してしまう可能性はある。4日の債券市場では北朝鮮の核実験によるリスク回避の動きも手伝って、10年債利回りはマイナス0.010%をつけている。なぜ北朝鮮と地理的に近い日本の国債が、北朝鮮の地政学的リスクが意識されて買われるのかといえば、安全資産とされるものへの資金シフトの動きが連想されたためといえる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。