中国にも脅威になりかねない北朝鮮の核・弾道ミサイル

高 永喆

9月3日、北朝鮮の6次核実験は米国地質調査所によるとマグニチュード6.3の人工地震を記録した。その爆発力は広島級原爆(15㌔㌧=TNT火薬換算)の10倍以上である160㌔㌧に達するという。1㌔トンはTNT1,000トン規模だからTNT爆弾16万トンの爆発力である事がわかる。

北朝鮮は大陸間弾道ミサイルに搭載できる水素爆弾を完成したと発表した。
小野寺防衛大臣も「水爆実験だった可能性を否定できない」と言及した。原爆はキロトン規模で都市一つを破壊出来るが、水素爆弾はメガトン規模の爆発力で小さい国,一国を焼け野原に変貌させる威力がある。

そのため韓国の親北・対話路線を主張してきた文在寅大統領も厳しい対抗措置と最大の制裁に急旋回した。今年12月1日には斬首作戦実行の特殊部隊を設置すると発表し、渋っていた高高度防衛ミサイル(THAAD)の完全配備も決定した。

しかし、9月6日、韓ロ首脳会談でロシアが示した「北核・ミサイル中断と米韓訓練縮小・中断、日米韓が北と平和協定採決及び東北ア安保協定・駐韓米軍撤収検討」提案は適合性・容認性が欠けている。

米軍撤収は地域勢力均衡が崩され逆に戦争危険性が高まる恐れがある。
文在寅政権の対北強硬対策が一段と求められる。一国を完全に破壊し得る水素爆弾を手に入れた相手から生き残るためには極端な対応策が必要不可欠だ。

戦争は軍隊経験のないデタラメ指導者が引き起こす場合が多い。今回、北朝鮮の危険な核実験は中国にとっても脅威となりかねない。

金正恩は親中派の張成沢(叔父)と中国が保護した金正男(兄)を殺した。また、中国の全都市が弾道ミサイルの射程に入っているだけでなく、北朝鮮の核保有が韓国と日本の核開発に名分を与えかねない。中国が最も恐れるのは恐らく韓国と日本の核開発だろう。

従って、中国も北朝鮮の核を前向きに阻止しなければならない状況に直面している。対北石油供給中止に動く可能性も高まるわけだが、その場合、北朝鮮が核の放棄や凍結という譲歩路線に出るかというと、正面突破と瀬戸際外交を繰り返した前例に照らして見れば、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦搭載弾道ミサイル)の発射を繰り返す可能性の方が高い。

北朝鮮は1992年の韓中国交樹立の時、中国から「裏切られた」と受け止めており、歴史的にも日本より中国に対する恨みが大きい。米本土まで届く北朝鮮ICBMの配備は2018年の年末と見られる。米国にとってその危険性を取り除く期間は1年しか残ってないのだ。米国は本土まで届く北朝鮮のICBMを絶対許せない。

一方で、北朝鮮は体制保護のため、核・ミサイルを絶対手放さないだろう。しかし、それが、逆に3代後継体制の崩壊を招く危険性を抱えている。

現在の危機が平和的にソフトランディングするのが北朝鮮にとっては最善の策である。指導者は自分の命が奪われかねない危険な冒険をやめなければならない。

(拓殖大学客員研究員・元国防省北韓分析官、韓国統一振興院専任教授)

※本稿は『世界日報』2面(2017年9月9日に掲載されたコラムに筆者が加筆したものです。

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