3分でわかるripple入門~ビットコインとの決定的な違い

大石 哲之

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ripple(リプル、リップル)については、理解したつもりで正確に理解できていなかったが、いくつかの検証をへて、細かい動作も、ほぼ間違いないという理解に達したので、初めて書いてみようと思う。

rippleとビットコインは並べ称されるが、全く違う。

なにが違うかというのは、一言でいうのは難しい。なにしろビットコインも理解できてないひともいるので、理解できてない物同士を比べて語るのは無理筋だとおもうので、最低ビットコインは理解できているものとして書く。

ビットコインは、現物だ。コインが手元にあり、送金したら相手に届く。コインはペーパーウレットなどの形で手元に秘密鍵を保管しておけば、あなたのもとにあり、誰のものでもない。

ビットコインを保有している人は、なににもまして、この現物感を好んでいるだろう。国にも、銀行にも左右されない、絶対的な価値としてのビットコイン。それがビットコイナーを惹きつけてやまない理由だ。

rippleは、全く違う。rippleには現物がない。rippleネットワークでは、USDやJPYといった通貨を送金することができるが、このとき、実際にUSDやJPYを送っているのではない。rippleでは現物を送金できない。

rippleにおいて可能なのは、貸し借りの付け替えと精算のみだ。rippleでは送金ができない。あたかも送金しているように見えるだけだ。

どういうことか?

例えば、私がA後輩に5000円貸しているとしよう。A後輩には借用書を書いてある。

このとき、Aにに飲み代を貸している友人Xが現れるとする。

X 「ねえ、このまえの飲み代5000円、返してくれる?」

A 「あ、すんません。いま、現金無いっす。あ、でも大石先輩に1万円かしてるっす。先輩から5000円回収するっていうのでどうですか?それで精算ってことで。先輩からの借用書もあげます」

X 「そうか。じゃ、お前の代わりに、大石から5000円もらうってことだな。わかった。借用書あずかっとくわ。」

後日。

X「おーい、大石。後輩のAに貸してた5000円だけど、Aじゃなくて、おれに払ってくれってことになったから。よろしく。」

これで行われていることは、私の借金の付け替えである。私はAにカネをかしていたが、実際にはXが回収しに来た。

そして、このとき、お金の現物は全く動いていない。

さて、このとき、AからXへの負債の付け替えは、見た目には「支払」に見える。Aは、私への負債をつかって、Xに5000円を払ったのだ。これは、お金の現物は全く動いていないが「支払・送金」したように見える。

もし、私が、たくさんの友人にカネを大量に貸していたらどうか。それらの友人の間では、実際の日本円をやりとりするのではなく、大石への借用書の名義を書き換えるほうが、簡単かもしれない。これがrippleがやっていることだ。

ビットコインが現物なのに対して、rippleは貸借の付け替えと精算機能を提供する。

ripple

こんな借金の付け替えなんて、ありえないとおもっているが、実はもっとも身近なところで起きている。

銀行だ。

銀行は、貴方のお金をあずかって、代わりに通帳に記録された数字というある種の預り証*を発行している。貴方の預けたお金は、実際には貸出にまわっていたりして跡形もなくなっているが、借用書上はのこっている。銀行預金というは実は預り証であって、現物のお金ではない*2。

そして、銀行内で、誰かに送金したいとき、その預かり証の数字を書き換えれば、銀行は実際のおお金の現物をうごかさなくても、付け替えができ、送金が実現したように見える。これが銀行の振替というシステムである。

実は世の中のほとんどの送金はこのような銀行への預り証の付け替えで実現しており、現物のお金を動かすということは実際には殆ど無い。

rippleの送金も、このような預り証なり借金の付け替えによって実現する。なので、実際にJPYなりUSDは動かない。動いているのは、貸借のバランスであって、それを付け替えたり、相殺したりして、精算する。

もういちどまとめると、

ビットコインは、現物だ。実際にお金が動き、送金したら、ビットコインの所有権が相手に渡る*3。

rippleは借金の付け替えと精算システムであり、お金ではない。できるのは付け替えと精算であり、現物を送ることはできない。貸し借りをしているひとの間で付け替えや精算をすることで、送金したように見える。

rippleは突き詰めると、現在の銀行システムそのものを模したものだ。銀行システムを、インターネット上で効率よく再現したものだといえる。

銀行のネットワークのメンテには少なくとも毎年何千億円、全世界では何兆円ものお金がかかっているが、rippleが十分にセキュリティが高ければ、ripple上にこれをのせれば、わずかなお金で、付替えと精算が行えるようになるだろう。

rippleの欠点は、銀行システムのアナロジーであるということだ。つまり、銀行システムで必要とされることがそのままrippleでも必要とされる。つまり、ゲートウェイ(銀行に相当)が、文字通り銀行並みの信用度を求められる。

ゲートウェイがやっていることは、銀行業務そのものであるので、私はむしろ、rippleは銀行に採用されるべきであると思う。

楽天銀行なり、どこかのネット銀行で、rippleを採用したら、振込手数料はゼロ円になるとおもう。それほどコストが削減できるはずだ。

日本の銀行はなかなかそこまで踏み出さないので、おそらくアメリカの銀行が採用第一号になるかもしれない。どうやら米国のrippleは完全にBtoBに絞って、銀行業界に営業をかけているという話がある。

むしろ発展途上国の銀行が最初に採用するかもしれない。カンボジアの銀行がrippleを採用すれば、インターネットバンキングも出来ず、相手に送金するのに紙をつかって、何日もかかるような事態から、一挙に世界でもっとも便利な送金システムが実現できるかもしれない。

<次回>なお、rippleについては、リスクも有るし、不可解な点もある。その指摘は次回することにする。また、ripple内にも、借用書ではないものが存在する。XRPというもので、これはビットコインのように現物で存在し、現物が送金できるものだ。これが異なる借用書を変換、両替するときのブリッジになる。

*こういう借金証書をIOU(I owe you)という。わたしがもっているのはみずほ銀行のJPY建てのIOUが10万円分だ。

*2 あるいみ銀行預金というのは、もっとも身近なバーチャルマネーだといえる。通常、現金の量より、この銀行預金の数字のほうが遥かにおおい。しかも銀行は、実際にある現金よりより多くのお金を貸しだしている。信用創造といわれるものだ。世界にでまわっているお金と称するものの大半は、実は、銀行によるバーチャルマネーなのである。

*3  もちろん正確にいえば、ビットコインも単一の帳簿のなかの残高の付け替えなのだが、その帳簿がたった一つしか存在しないため、このように見える。いわば、世界中にたった1つの銀行しかなく、全員がそこに口座をもっているという状態とみてよい。そしてその銀行の管理は非中央集権化されている。

#rippleの発音は、リプルだとおもいます。リップルってへんなので、私はリプルと呼びますね。

<参考>
デジタルマネー協会の本間さんと一緒に、リプルの動作について検証をおこなっている動画です。地味ですが興味深いので、ぜひご興味有る方は御覧ください。

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