銀行主導の電子マネーは普及する可能性がある

前田 陽次郎

現在三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行が、電子マネーの開発を進めている。
それと同時に、大幅な従業員削減計画が発表されたりしている。

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この記事にも書かれている通り、電子マネーの発達と銀行員の削減は、密接に関係する話である。

中国ではアリペイなどの電子決済が発達しているのに、日本では何故普及しないのか、という話題になると、必ず「日本人は現金主義だから」などという理由付けがなされる。

しかし特に小規模店舗の経営者に話を聞くと、ほぼ唯一の理由は「決済手数料を払いたくない」という答えが返ってくる。

つまり、電子マネーを使って商品を売ると、現金を扱わないでいい代わりに、手数料を引かれて銀行の口座に入金される。売上を現金で受け取って銀行に持っていって入金すれば、手数料無料である。小規模店舗だと、この現金を扱う手間が省けるからと言って、その分手数料を払って省力化しようという気にならないのが現状なのだ。結果的にどちらが経済的か、という問題にはなっていない。店主が自分で手間をかけるコストはタダだ、というのが、小規模商店主の感覚なのである。

日本の銀行にも問題がある。ネットバンクで振込手続きをするのには手数料がかかるが、預金を現金で引き出して、その人が相手先の銀行に現金を持っていって入金すれば、手数料無料である。また、同一法人が同一銀行に開設している口座であっても、支店が違えばネットバンク経由だと振込手数料がかかる。ところが支店の窓口に行って通帳を2冊出して印鑑を押せば、手数料はかからない。

ネットバンクでもシステム開発費や維持費などのコストがかかるから手数料が必要だ、という言い分はあろうが、現金を引き出したり受け取ったりする窓口の人件費なりATMの維持費なりにもコストがかかっていて、それは全額銀行が負担しているのだ。

ここで銀行が考え方を変えて、窓口のコストを削減するために、電子マネー決済に関わる手数料を全額銀行負担にするという発想にできないだろうか。つまり、小規模店舗に対しては電子マネーに関わる手数料を一切無料にする、という方針に変えるのである。

現状だと、大企業ほど現金を扱う人件費等のコストに敏感なので、電子マネーを導入するインセンティブが働く。だから、この部分ではきちんと銀行が手数料を取り、そうでない小企業に対しては、電子マネー利用のコストを銀行が負担するのである。多分、銀行の窓口で費やすコストの多くは小企業相手だと思われるので、銀行にとってもメリットがある、というように考え方を変えることは、不可能ではないだろう。

もし三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行がこの方針を取り、多くの地銀もそれに従えば、日本でも一気に電子マネーが普及すると思うのだが、いかがだろうか。

 

前田陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師