ドル円の日足チャートをみると昨年の11月9日あたりと今年の1月10日あたりを起点にして相場の地合が変化していたように思われる。
昨年の11月9日は日経平均が一時400円以上上昇していたが、株式相場のボラティリティーが上昇し、コンピュータープログラムを使ったシステム取引の参加者などから利益確定の売りが出たようで今度は急落し日経平均は300円を超す下落となり、高値からは800円を越す下げとなるなど高値波乱となった。この株価の変動も嫌気されたのか、ドル円も114円近辺から一時113円50銭割れとこちらも大きく変動した。
日経平均の上昇基調は11月9日あたりでいったんピークアウトし、方向感に乏しい展開となる。これに対しドル円は下落トレンドとなり、一時111円割れとなった。11月24日に日銀は超長期ゾーンの国債買入を減額していた。しかし、11月末あたりから、再びドル円は切り返し、12月半ばあたりに113円台の後半まで上昇したが、ここが戻り高値となった。
東京株式市場は昨年末の米株の上昇などを受けて、今年に入り大発会で日経平均は741円高の高値引けとなった。北朝鮮の金正恩委員長が韓国との対話に柔軟な姿勢を示唆し、平昌冬季五輪に選手団を派遣する可能性について検討する姿勢も示したことで、北朝鮮の地政学的リスクの後退なども材料視か。ただし、ただしドル円の動きは鈍く、112円半ばあたりでの動きになっていた。このあたりから、日経平均が上昇するとドル円も上昇するパターンに変化が生じている。
1月9日に日銀は超長期の買入をさらに減額してきた。このため、指し値オペや買入増額への思惑、減額への懸念も出ていた。中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道について、中国政府筋は11日、誤った情報に基づいている可能性があるとの見解を示した。
1月10日あたりを起点にドル円は再び下落トレンド入りする。2月2日に日銀は指し値オペと国債買い入れを増額した。しかし、ドル円の戻りは限られ、2月16日には105円台半ばまで下落した。この間の日経平均は米株がしっかりしていたこともあり、26日に22000円台を回復している。ドル円も2月21日に107円台後半まで戻すが、107円台を維持できずにいる。
ドル安の背景のひとつとして、米国の通貨政策もあろう。1月24日にムニューシン米財務長官はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、明らかに弱いドルは我々にとって良い、と述べた。これに対してトランプ大統領はテレビのインタビューに答えるかたちで、「米国経済は非常に力強い。絶好調だ。それゆえドルはどんどん強くなるだろう。最終的に私は強いドルを好む」と答えた。
トランプ大統領は自らの発言でムニューシン財務長官によるドル安容認発言を否定したが、ドラギECB総裁がユーロは誰かのコメントのせいで上昇した面もあると発言したり、IMFのラガルド専務理事がムニューシン財務長官に説明を求められたりしたとも伝えられていたが、何らかの力が働いてのトランプ大統領の発言であった可能性もある。
結局、ムニューシン発言は米国の本音が出たのではないかとの思惑も手伝ってドルの上値を重くさせているとも考えられる。また、FRBの利上げペースも維持されるとみられ、米長期金利が一時2.95%まで上昇したものの、ドル円の戻りは鈍い。こちらも連動性を失っているが、これも米政権の意向などが意識されての動きなのか。
いまのところ何故、ドル円が下落トレンド入りしているのか、具体的な材料は見えてこない。しかし、何かしらドル円の上値を重くさせている要因もあるはずである。平昌オリンピック後の北朝鮮による地政学的リスクの再燃なども意識されているのかもしれない。今後のドル円の動向にも要注目となりそうである。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。