こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
一般質問から一夜あけて、いくつか質疑の内容がニュースになっています。
都がLGBTで担当部署を立ち上げへ 東京五輪に向け(テレビ朝日)
教育や福祉など、組織横断的な対応が求められるLGBTなどセクシャルマイノリティへの対応は、縦割り行政の弊害でいわゆる「たらい回し」にされることも多く発生してきました。
そのため、レインボープライド等にも毎年参加されている龍円あいり都議からの総合窓口の設置を求める質問に対して、
「都も庁内のさまざまな部署で対応が求められている。総合的な調整を行う担当組織を設け、情報を共有、連携して施策を推進する体制の整備を図る」
と答弁したものです。
都庁という巨大組織の中で、担当部署が設立されるのは極めて重要なことです。
連絡調整機能が担保されるのみならず、「本気でこの課題に取り組むのだ」という強いメッセージを組織内外に向けて発することにもなります。
この前進は高く評価するとともに、総合窓口がどのような機能を発揮するか、引き続き注視をしていきたいと思います。
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多様性という部分に関連しては、私も直近のブログでちょうど取り上げた「婚活動画」について、議場がヒートアップする一面がありました。
●「おかしいだろ!」小池知事の婚活動画答弁に怒号(日刊スポーツ)
●婚活施策に自公で賛否 都議会一般質問 「行政押しつけ」「積極的支援を」(産経新聞)
小池知事主導の婚活動画に対して批判的な質疑を行った自民党都議に対する答弁で起こった一幕です。
ただ、上記の記事だけを読むと、なぜそんなに怒号が起こっていたのかはよくわかりません。
そこで怒号を飛ばしていた一人である川松都議のブログを読むと、もうちょっとその理由がわかります。
●小池都政は結婚希望者を喰いものにするのだろうか!?(川松都議ブログ)
しかし、ここで小池知事は突然、手元の原稿から目をあげて語り出しました。おそらく、ここは担当職員と打ち合わせなく自身のアドリブで付け加えたパートだと推測されます。それだけに、小池知事の本心が述べられたのでしょう。私は長年、自民党で婚活・街コン議連の会長を長年務めて参りました。婚活・街コン議員連盟が全国サミットを行いますと、地方自治体の担当者の方々が数百人、うわっと集まるんです。そこで婚活や街コンなどのビジネスモデルをお互いに共有しようということで大変賑わっております。と、このように述べました。
ビジネスモデルという言葉が飛び出した
ここだけ聞けば、何も違和感はありません。繰り返しになりますが、柴崎都議の質問は「理由と目的及びどのようにして都民のニーズを把握したのか知事の見解を伺います。」です。私は小池知事のビジネスモデルを共有と表現が腑に落ちません。ただでさえ、3000万円かけた動画の是非を問うているやり取りで、出てきた言葉がビジネスモデルです。
私はこの事業が予算に計上された時に、東京都政策企画局の職員に聞いていたんです。あくまで機運醸成であり、婚活や街コンの業者を支援することは東京都の事業としてふさわしくないという東京都の見解を。
しかも、墨田区のある公益法人が婚活事業をやっています。今の小池知事が前段で語られた生涯未婚率の数字も意識して社会貢献としてやっている法人の事業に対して東京都がこれは営利活動だから公益法人の活動とはみなさないとして対応されている事に幾度にわたって東京都に掛け合ってきたのです。確かに小池知事のいうように費用をかけて商売で婚活をやっている事業者もいれば、ボランティアでやっているような団体の活動も同じ枠で括られてしまうのはあんまりだと主張してきたのです。公益性とはどこで判断するのかと。だからこそ、機運醸成ならばこういう純粋な団体に支援すべきだと話をしてきたのです。私達は小池知事が都政の場で問題提起する前から、諸般の社会情勢に対して危惧をして様々な事をやってきています。
(上記ブログ記事より抜粋、一部強調の補足筆者)
自民党都議の質問は、確かに「動画を作成した理由と目的、そのニーズの把握方法」でしたが、前後の文脈から「婚活を行政が支援したことに対する批判」だったことは明らかでした。
そこで小池知事はアドリブで、
「自民党だって婚活支援を積極的にやっているじゃないか。それはブーメランだ」
と切り返したので、それに対して都民ファースト都議らが拍手喝采を送り、自民党都議は怒号を飛ばしたと、そういうわけですね。
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で、そこで自民党サイドが怒っているのは、ブーメランが突き刺さったことへの逆ギレではなく(それもあるんだろうけども)、「ビジネスモデル」という言葉を知事が用いたことに対してです。
川松都議の長文を私なりに要約すると、行政が「ビジネス新興」を目的に一部の事業者を恣意的に支援しているのでは?という懸念を示されているようです。
これは「民業圧迫につながる」として、婚活支援への税投入に否定的な私の見解とも一部重なります。
ただまあ、小池知事の今回の答弁には、そこまで深い意図も思惑もなかったように個人的には思うところです。
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「行政が公金を入れて支援する」というのは極めてセンシティブな問題を孕みます。
その是非の判断基準の1つとなるのは「行政にしかできない=民間に任せておくだけではダメ」かどうかです。
例えば東京都が新たに初めた婚活支援としては、前回ブログでも取り上げた「縁結日」の他に、島しょ地域での「縁結び」旅行商品の造成・販売を助成するというものがあります。
島しょ地域の”縁結び”旅行商品の造成・販売を助成します
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/04/14/04.html
都心で行う婚活イベントは、放っておいても民間事業者が企画するので行政が支援する必要はまったくありませんが、例えばこういう民間が採算を取りにくい分野・地域に公費を投入してブーストさせることには、一定の意味があるでしょう。
さらにこの場合は、いわゆる「島しょ地域の新興」という経済政策の側面も持っていますので、「行政がやるべきこと」としての説得力はそれなりに高いと言えます。
こうした観点から翻ってみると、今回の「婚活動画」作成にどこまで公的な意味があったかは、改めて疑問が残るなと感じるところです。
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市場問題や五輪などの大きなものばかりではなく、このような議論も展開されている都議会。
週明けの月曜日も一般質問が行なわれますので、ぜひ引き続きご注目いただき、都民の皆さまからも多くの意見をいただけますと幸いです。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年3月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。