「人工光合成」が実現する未来

アゴラ編集部

環境問題について、よくある誤解の一つに、植物は二酸化炭素を吸収し、酸素を放出している、というものがあります。植物も「生きている」以上、酸素を使って生命活動を行っている。酸素より二酸化炭素の使用量のほうが多いため、差し引きで前述したような説明が可能となるだけです。

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さらに言えば、植物がその生涯で吸収した炭素は、枯れた幹や枝、葉が腐敗したりする過程で自然環境へ戻る。ただ、水没したり酸素不足の環境で腐敗しない分の植物の死骸があるので、これも差し引きで酸素の排出量のほうが炭素より多いと考えられているだけです。

こうした植物の生命活動で我々のような動物と大きく違うのが「光合成(photosynthesis)」です。光合成とは、植物や植物プランクトン、藻類など、葉緑素などの光合成色素を持っている生物が行う生化学反応のことで、光エネルギーを使い、水と空気中の二酸化炭素から生命活動に必要な糖類やデンプンといった炭水化物を化学合成している。この光合成の過程で酸素が生じている、というわけです。

光合成を人工的に再現することができれば、太陽光線と二酸化炭素、そして水から無尽蔵のエネルギーを取り出すことが可能になります。世界中の研究者が人工光合成の研究開発に取り組んでいますが、日本では大阪市立大学の研究チームやトヨタ系のトヨタ中央研究所、さらにパナソニックなどの取り組みが世界を一歩先んじている、と言われていました。

しかし、科学技術の世界は日進月歩です。表題の記事では、米国カリフォルニア工科大学の研究チームが、人工光合成の実現に大きく近づくことができる新たな導電性フィルムの開発に成功した、と書いています。植物が行っている光合成は、太陽光を使って水を「酸素、電子、水素イオン」に分解し、さらにその電子と水素イオンのエネルギーを使って二酸化炭素から糖類やデンプンなどを作る、という多段階になっています。

人工光合成には、太陽光線を高効率で得ることのできる技術、酸素や水素を作り出す技術、二酸化炭素や水素などから糖類などを合成する技術、といったものが必要とされています。カリフォルニア工科大学の導電性フィルムは、この過程を実現させることができるらしい。つまり、人工的な「葉」になるフィルムというわけです。

酸化による「錆」を克服し、ニッケル原子やアルゴン原子などを半導体上へ並べて結晶化させ、このフィルムを作り出した研究者らは、この技術を使って人工光合成のシステムを構築することに挑んでいます。日本の大阪市立大学のロードマップでは、2019年までに統合モジュールを完成させ、2020年から実用化を目指している。青色LEDのように、本命を抑えて穴馬が出てくるんでしょうか。この世界も競争が激化しています。

PHYS.ORG
One step closer to artificial photosynthesis and ‘solar fuels’


8 ways you are killing the environment that you probably didn’t even realize
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我々が知らず知らずのうちに、地球環境に大きな影響を与えている8つの生活習慣について考えている記事です。中には地球環境に良い、と考えられてきたものもあります。たとえば、コーヒー。コーヒーのコーヒー豆を栽培するためには、広大な面積の熱帯雨林が犠牲になっている、というわけ。または、芝刈り機。日本では一般的ではない芝刈り機も、世界中で使用されている膨大な数のガソリンエンジン式芝刈り機からは大量の二酸化炭素や大気汚染物質が放出されています。芝刈り機の汚染対策はなぜか無策だったらしい。さらに、紙コップ。塵も積もれば山となる、というわけです。

Lockheed Martin laser weapon takes out truck
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SFの世界かと思っていたレーザー兵器が着実に実用化されているようです。海賊対策などで艦船に搭載したレーザー兵器はすでに使われている。この記事では、ロッキード・マーティン社が作ったレーザー兵器を紹介しています。30キロワットの出力で数千メートルの距離から自動車のボンネットを貫通させ、エンジンを破壊する能力を持っている。レーザー発射時の冷却方式も改良され、耐久性も向上。さらに従来の半分という省エネも実現したらしい。これを500キロワットの出力へ上げれば、飛行中の巡航ミサイルの撃墜も可能になるそうです。

Field Cameras Catch Deer Eating Birds—Wait, Why Do Deer Eat Birds?
io9
こないだテレビを見ていたら、南ヨーロッパのオオナマズがハトを食べる習慣を取得した、という内容のドキュメントを放送していました。もともと彼らは東欧の固有種で南西部のヨーロッパにはいませんでした。食用や釣り用として東欧から移植され、増え過ぎてしまい、食糧を確保するためにハトに目をつけた、というわけ。この記事では北米のシカが鳥の雛を食べていた、と報告しています。草食動物が肉食になる、という行動は珍しくなく、かなりよく知られている事実。現在のほ乳類の肉食動物は、もともと草食動物の食性が変化したと考えられています。

開発のベクトルが斜め上! 福井駅がなぜか「ジュラシックパーク」になっているぞ
トゥキャッチ
福井県から岐阜県にかけてジュラ紀から白亜紀にかけての地層である手取層があります。かなり以前からこのあたり一帯から恐竜の化石が出ていました。手取層のある九頭竜川の美濃街道沿いが「恐竜街道」と名付けられ、観光地化されている。かつて日本から恐竜化石は出ない、とされていましたが、地元の研究者や福井県立博物館などの努力もあり、今では日本の恐竜メッカになっています。福井県と言えば、科学雑誌『ニュートン』を創刊した地球物理学者、竹内均氏の故郷もである。福井駅前はすでに恐竜王国になっているようです。
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AR恐竜王国福井のPDFリーフレットより。


アゴラ編集部:石田 雅彦