教育の情報化についてシンガポールで開催された会合に参加した。僕が主に関わったのは教育政策に関する議論だが、初日には初等中等教育の中にどう計算論的思考を入れるか、各国から参加した小学校から高校までの教員と学習計画を一緒に作成した。僕のグループにはパナマ・ケニア・サウジアラビアなどからの教員が入った。
古タイヤを花壇の枠にして食料となる植物を育て環境保護の重要性を学ぶ、8週間の学習計画を作るのが課題である。クラスには5歳児から13歳までがいて、児童生徒は話し合い協力し、できるかぎり画期的な方法で栽培する。情報はネットも使って調べ、成果もネットにあげる。
高学年の子供たちは一つのタイヤでどのくらいの植物が育てられるか計算する。それで必要なタイヤの数が決まる。中学年は8週以内に収穫できる植物をネットも使って探す。そのためにはその地域の気候を知らなければならない。その間に低学年はMinecraftを使って花壇をデザインする。これが最初の作業であり、問題解決のプロセスを分解して一つひとつこなしていく計算論的思考の第一歩である。
二週目。高学年はMicro:bit(小さなパソコン)を使って自動給水器をデザインする。その間に花壇が実際に組み立てられ、中学年は苗床もつくる。こうして作業が進んでいく。植物の成長は写真・ビデオで撮影され記録される。収穫した植物は皆で食べる。
低学年の子供たちからMinecraftなどいろいろなアプリを使わせることに、誰も躊躇しないのに驚いた。日本ではアプリを使って学習することは、まだほとんどない。高学年になれば自動給水機が設計組み立てられるというのにも誰にも疑いをはさまない。ケニアからの教員が苗床作りを提案し僕も支持したが、パナマでは直播が当たり前だそうだ。気候風土を反映したそんな相違も知ることができた。
はるばるシンガポールまで集まったのだから、彼らはエリートで、平均的な教員よりもプロジェクト志向の学習プログラムになじんでいるのかもしれないが、児童生徒の挑戦を促す姿はとても印象的だった。
山田 肇
『ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』監修