政府は先月、「デジタル教科書」を正式な教科書と位置づける学校教育法等改正案を閣議決定し、国会提出の運びとなりました。
学校教育法や著作権法上、教科書は「図書」であると定義されており、「紙」でないと教科書として認定されません。この法案は、通常の紙の教科書に代えてデジタル教科書を使うことができるようにするとともに、教科書を作る著作権法上の特例を紙と同様に与えるものです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/1401720_001.pdf
これはデジタル教科書教材協議会DiTTが2012年に政策提言して以来、アピールを続けてきた内容です。
以来6年、ようやく結実します。
感慨深いものがあります。
「DiTT政策提言2012」では「デジタル教科書実現のための制度改正:デジタル教科書を教科用図書とするための制度改正を行うこと」を掲げ、さらに法案検討WGも設置して学校教育法や著作権法を改正する法案の概要を公表しました。
http://ditt.jp/office/teigenpaper_0316.pdf
当時こうした提案を行うのはDiTTだけで、その意見は過激なものとされ、批判も受けましたが、提言を続けました。
産官学の有識者による「教育情報化ステイトメント」も発出、運動を広げました。
http://mirainomanabi.net/2012/index.html
これを受け政府「知財計画2012」は、
「デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度といった教科書に関する制度の在り方と併せて著作権制度上の課題を検討する。(総務省、文部科学省)」
と明記したのですが、文科省が「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」を設置して検討を開始するには3年を要しました。
それからさらに3年が費やされ、足掛け6年で法案の提出となったわけです。
DiTTはこれに対し、3点のアピールを発出しました。
1 「デジタル教科書」を正式な教科書と位置づける学校教育法及び著作権法の改正案の閣議決定・国会提出を評価し、歓迎致します。
2 法案の早期成立と円滑な施行を求めます。
3 並行して超党派の国会議員からなる「教育における情報通信の利活用促進をめざす議員連盟」が策定している「学校教育情報化推進法案」は、デジタル教科書の利用・普及を後押しするものであり、その国会提出・成立を求めます。
デジタル教科書の制度化、実に喜ばしい事態です。
しかし、小学校で6人に一台にとどまるPC・タブレットの一人一台化や学校クラウドの普及などデジタル環境の整備は日本は途上国なみですし、世界がAIやビッグデータの活用に動く中で、日本の教育情報化はまたも周回遅れになりそうな気配。
待ったなし状態が続きます。
DiTTアピールの3点目にある推進法案は、自治体に教育情報化計画を策定させるなど教育情報化全般を推し進める措置を盛り込むもので、デジタル教科書制度化とセットで揃うとかなりの推進力になります。
政官あげてのプッシュをお願いする次第です。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。