佐川氏証人喚問。野党は次の一手を打てるのか?

画像は衆議院インターネット中継より

佐川氏の証人喚問が終わった。メディアは各社各様の評価をしているが、おおむねの道筋はついたと考えられる。財務省と政権を守ったとして、佐川氏の姿勢を評価する人もいるだろう。証言拒否権を行使して、決定的はことは話さなかった。今後は、この結果を、国会審議にどう反映させるか考えなければいけない。

また、貿易政策や外交問題のほうが国益を左右する喫緊の課題であり、そちらを優先すべきだと考えている国民も多い。さらには、支持率は下がっても、政権交代を望む国民が少ないという現実もある。野党も解散総選挙は望んでいない。そう考えれば、方向性は見えてくる。佐川氏は「官吏として行うべき仕事を全うした」と考えることができる。

昨年のある事件を思い出した

私は、佐川氏の証人喚問を見ながら、あることを思い出していた。昨年の「豊田真由子代議士の暴言暴行事件」である。当時、数社から「暴言暴行について解説して欲しい」と番組出演や取材申し込みをいただいた。私は、すべてのメディアに対して、個人的な見解として「可能性としては有りうる」とお答えした。しかし、次のようにも補足もした。

秘書は公募をすることは少なく、信頼できる筋の紹介があり採用にいたるのが一般的であること。戦国時代の大名と家臣みたいな関係とでもいえばわかりやすく、つねに一蓮托生にあること。落選すれば秘書も失職すること。しかし、元秘書はメディアへのリークという手段をとってしまったことは得策ではなかったこと。

秘書に罵声を浴びせて暴行したといわれているが、これが事実ならいかなる理由でも肯定することはできない。しかし、結果的に、豊田氏は落選をして永田町を追われた。元秘書は、社会に対して「暴言や暴力は許されない」「議員秘書の仕事は理不尽」とする教訓を残すことには成功した。しかし、同時に大きな禍根を残してしまった。

コメンテーターの方々も、表面的な知識や推測でものを言っていたが、その多くは「的を得ていない」ものが大半だった。テレビの情報は信頼できる情報として受け止められるので、間違った情報を視聴者に伝えるリスクがあった。

状況をケースで説明する

ここであるケースを提示したい。ある大手企業で内部告発があり、社長が釈明に負われた。当該業務に関わった社員でなければわからないような内容を含んでいた。社長のとった態度は迅速だった。社内を調査し情報を公開したのである。さらに、「これ以上の問題はない」と会見をした。それでもマスコミは追及をゆるめない。

社長は次のように発言した。「マスコミを含む第三者を中心とした調査委員会を組織していただきたい。そしていま報告した内容に瑕疵があるか綿密に調査をお願いしたい。委員会には調査に関する最高権限を与える。当社はいかなる資料でも指示があれば提出を拒むものではない」。そして社長は次のように続ける。

「事実とは異なる結果が出てきた場合は、私を含めて役員は退職金全額返上したうえで総辞職する。会社は経営危機に追い込まれるかもしれないが、疑念を払拭するための調査をおこなう」。記者が質問をする。「新たな証拠が出てこない場合はどうしますか?」。

社長は答える。「調査に関わったマスコミのみなさんには廃業をしてもらう。私は、『これ以上の問題はないと確信している』と申し上げた。不測の事態には全役員の退陣も約束している。ならば、それに関わるみなさんにも同様の覚悟で取り組んでいただきたい」。

野党は次の一手を打てるのか

その後、マスコミは第三者委員会を設立したものの、当初から追及するつもりはなかった。最終的には証拠不十分で事態は収拾した。新たな事実もなく事態は終了したのである。

安倍首相は、「私や妻が関係していたということになればこれはまさに間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」と述べた。野党は次の一手を打てるのか、有権者として見定めていきたい。

尾藤克之
コラムニスト