3月20日に雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁が就任した。4月8日に任期を迎える黒田東彦総裁は続投となり、4月9日から新執行部での体制がスタートした。雨宮理事の副総裁への就任により、空席となった理事ポストに内田真一名古屋支店長を昇格させる人事が4月1日付で発表されていた。内田理事は、国際局と国際関係統括を担当する一方、企画局・金融市場局、金融研究所は前田栄治理事が担うことになった。
新体制となったとはいえ、雨宮副総裁は理事当時、日銀の大胆な金融政策の道筋を作った人物でもあり、それを補佐していたのが当時局長であった内田理事である。黒田総裁も続投ということで、日銀の金融政策についてはこれまでの姿勢を維持するというか、維持できるような調節を行ってくるものと予想される。
企画担当となる前田理事は金融政策立案の責任者として、黒田総裁が率いる執行部を支えることになる。雨宮前理事の路線が継承されることになろうが、市場では日銀の出口戦略をかなり意識していることで、今後はどのようなかたちで出口戦略の道筋を示すことができるのかも注目されよう。
波乱要因となりそうなのが、リフレ派とされる若田部副総裁の存在となるが、こちらも結果として岩田前副総裁と同様のスタンスになるのではないかと思われる。総裁と副総裁の執行部が一丸となって、物価目標の達成に向けて現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を維持させていくスタイルを継続していくものと思われる。
若田部副総裁がリフレ派としての持論を押し通す可能性もなくはない。とはいえ片岡審議委員のように現状の政策に異議を唱えることは、いまのところは考えづらいのではなかろうか。それでも最初の金融政策決定会合となる4月26、27日の結果については念のため注意する必要がある。
現在の日銀の金融政策に大きな変化が生じるとなれば、その要因となりそうなのは安倍政権の動向と言える。目標とする物価については足元で前年比プラス1.0%となっているが、ここから2%まで上昇していくことは、原油価格の急騰等がなければかなり難しい。2%を絶対目標と置いている以上は、いまの金融政策そのものを動かすことは難しくなる。しかし、今秋の自民党総裁選の結果として、首相が変わるようなことになるとアベノミクスの柱でもあり、出口を封じ込めている格好となっている現在の日銀の金融政策の修正が迫られる可能性があるかもしれない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。