さて、日本はどうやって北朝鮮との間に新しいパイプを築いたらいいのだろうか
米朝首脳会談でトランプ大統領から拉致問題について何らかの言及はあったはずだが、北朝鮮側からは何の応答もなかった、というあたりではないかと思っている。
朝鮮半島の非核化や北朝鮮における金正恩体制の保証が今日の首脳会談のメインテーマになったはずだから、拉致問題については日本と北朝鮮の直接交渉で解決すべし、ぐらいの曖昧な合意で終わったのではないかと推測している。
日本側としては、今日の米朝会談で拉致問題が一挙に解決に向かうことを切望していたが、そこまでは無理だったということになりそうである。
米朝会談で言及されたはずだから、北朝鮮側が既に解決済みの問題だ、などと一蹴できるほどの軽い問題ではないが、答えがないからと言って会談を決裂させるほどの問題ではない、ということになったのではないかしら。
これからが難しい。
どうやって北朝鮮との間にパイプを通すか、ということだ。
既に安倍総理は日朝首脳会談の開催に向けてのメッセージを送っているが、どうも北朝鮮側がこれを無視しているような雰囲気である。
さて、どうなるか。
私たちは、今日の米朝共同声明をどう受け止めるのがいいのだろうか
事務方の事前の周到な調整を省略して、いきなりトップ同士が直接会談して合意を纏めようとするとこの程度の大雑把なものにするしかないのかな、と思うような内容である。
完全で検証可能、かつ引っ繰り返すことが不可能な非核化の約束を求められていた方々からすれば、不完全でとても満足できるような水準ではないだろうが、アメリカのトランプ大統領がこの程度でも当面は満足だ、と思っているのであれば、日本としては今回の米朝首脳合意についてあまり否定的なメッセージを発しない方がいいだろう。
もっと詳細を詰めて欲しいと思うが、アメリカも北朝鮮もどうやらトップダウンの国のようだから、今日の米朝共同声明を受けて事務方でこれから作業を始めるということだろうと思う。
ちょっと心配なのは、トランプ大統領を支える事務方の体制が私たちには如何にも脆弱に映ることである。
トランプ大統領が気分屋で、簡単にちゃぶ台返しをやってしまいそうで、いつまでトランプ体制が続くのか不安になってしまう。
本当に大丈夫かな、と内心では心配しながら、これからの展開を見守っていくしかなさそうである。
上手く行きますように、と祈るしかない。
もはやアメリカは世界の盟主とは言えそうにないな、というのが、私の率直な感想である。
参考:米朝共同声明の全文の訳文
[シンガポール 12日 ロイター] – 米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による、米朝首脳会談の共同声明。
米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は6月12日、シンガポールで史上初となる歴史的な首脳会談を行った。
トランプ大統領と金委員長は、新たな米朝関係の確立と朝鮮半島における恒久的かつ揺るぎない平和体制の構築に関する問題について、包括的かつ真摯な意見交換を徹底的に行った。トランプ大統領は北朝鮮に安全保障を約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への揺るぎない、固い決意を再確認した。
新たな米朝関係が朝鮮半島と世界の平和と繁栄に貢献することを確信し、互いの信頼構築により朝鮮半島の非核化を促進できると認識し、トランプ大統領と金委員長は以下の通り宣言する。
1.米国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国国民の願いに従って、新たな米朝関係の確立に取り組む。
2.米国と北朝鮮は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制の構築に共に取り組む。
3.2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
4.米国と北朝鮮は、戦争捕虜/行方不明兵の遺体回収に取り組む。その中には、すでに特定されている遺体の即時帰還も含まれる。
トランプ大統領と金委員長は、史上初となる米朝首脳会談について、何十年にもわたる緊張と敵対的な関係を乗り越え、新たな未来に道を開いた非常に重要な画期的出来事だと認識しており、この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを約束する。米朝首脳会談の結果を実行に移すべく、今後はできるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うと約束する。
トランプ大統領と金委員長は、新たな米朝関係の発展、そして朝鮮半島と世界の平和と繁栄、安全保障の促進に向け協力する決意である。
2018年6月12日
セントーサ島
シンガポール
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。