ローマ法王フランシスコは22日、イタリアのトリノ市のワルドー派教会を訪問し、「ローマ・カトリック教会が過去、キリストの名でワルドー派教会信者たちに対して行ってきた非キリスト的、非人間的な蛮行を許してほしい」と謝罪を表明した。
▲ワルドー派の創設者、ピーター・ワルドー(ウィキぺディアから)
ワルドー派は12世紀にフランス人のピーター・ワルドー(1140~1218年)によって始まったキリスト教会内のグループで、中世のローマ・カトリック教会から異端といわれ、関係者や信者たちは迫害されてきた。ワルドーは1182年、リヨン大司教から破門され、1184年には当時の法王ルキウス3世によって異端宣言を受けている。
ただし、ここにきて、「ワルド―派教会はルターたちの宗教改革に先駆けて現れた改革派教会であり、その教えは清貧を重視、聖書を翻訳し、原始キリスト教社会を理想としてきた」と高く評価する声が宗教学者の間で出てきている。
ワルドーの生き方、思想はアッシジの聖フランチェスコと酷似している。裕福な商人だったが、富と享楽の生活の虚しさを感じ、イエスの「山上の垂訓」に感動し、神の道を求めて修道僧として歩み出した。イエスの教えを守らない腐敗した当時のカトリック教会指導者を批判し、聖書で記述されていないことを行う教会を糾弾した。ワルドーは「リヨンの聖人」と呼ばれた。
バチカン放送独語電子版によれば、トリノのワルドー派教会指導者 Eugenio Bernardi 牧師は、「われわれは多くの共通点を有している。われわれは兄弟姉妹だ。カトリック教会から謝罪を受けた以上、われわれもいつまでもカトリック教会に恨みを持ち続けてはいけない。起きたことは起きたことであり、変えることは出来ない。重要な点はローマ法王がこのようなことを2度と起こしてはならないと表明したことだ」と述べている。バチカン放送はワルドー派教会指導者とローマ法王との会合を「兄弟姉妹の歴史的出会い」というタイトルで大きく報じた。
ワルドー派教会は現在、約10万人の信者を有する。彼らは主にイタリアに住んでいるが、一部はドイツ南部や南米諸国にいる。ワルドー派教会は、ローマ法王フランシスコのトリノのワルドー派教会の訪問を評価し、その謝罪表明を歓迎している。
フランシスコ法王は、「私の母国アルゼンチンでもワルドー派は非常に活動的で、社会分野で貢献している。カトリック教会とワルドー派教会は連携して、貧者救済に取り組むことができる」と喜び、「キリストの名で洗礼を受けた全てのキリスト者たちは互いに尊重しあって助け合うべきだ」と呼び掛けている。
故ヨハネ・パウロ2世は西暦2000年の新ミレニアムを「新しい衣で迎えたい」という決意から、教会の過去の問題を次々と謝罪し、ヤン・フス(1370~1415年)に対しても謝罪を表明した。フスはボヘミア出身の宗教改革者だ。免罪符などに反対し、コンスタンツ公会議で異端とされ、火刑に処された。フランシスコ法王のワルドー派教会への謝罪表明はそれに匹敵するものであり、キリスト教の再統合と和解を促進させる狙いがあると受け取られている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。