いま、AIについて取材を続けている。AIとは、人工知能のことだ。
このわずか数年間で、僕たちの生活の中でAIに触れる機会は一気に増えた。乗用車の自動運転の研究もかなり進んでいる。囲碁や将棋の世界では、すでに人間が負けている。
最近、発表された研究がある。この研究によると、現在ある職業の半数ほどが、将来、AIに取って代わられるそうだ。実際、金融業界では、「みずほ銀行が1万9000人削減」「三菱UFJ銀行が9500人相当の作業量削減」「三井住友銀行4000人の削減効果」などと打ち出している。AIの利用による成果だろう。
これらは、専門に特化したAIだ。対して、人間と同じように思考するAIがある。汎用型AIというものだ。この汎用型AIが進化すれば、近い将来、人間の知能を超えるときが来る。それを「シンギュラリティ」と呼ぶ。そのとき、AIはどうなるのか。人間のように感情的になって、暴走したりしないのか。そして、人間はどうなるのか。
テクノロジーの発展が、人間を不安におとしいれる。皮肉なことだ。だが、これは人類の歴史上、これまで何度も起きている。たとえば、19世紀の産業革命だ。このとき労働者たちは、自分の仕事が機械に奪われて、失業してしまうと考えた。だから実際にイギリスでは、機械の打ち壊し運動が起きた。
現代も、心情は変わらないようだ。AI時代への期待が高まる一方で、仕事が奪われるのではないか、AIが暴走するのではないか、といった不安を抱く人は多い。悲観論をあおる本も多数ある。
だが、それでもやっぱり僕は、イノベーションというのは、人間にとって希望だと思うのだ。既存の多くの仕事は、取って代わられるかもしれない。それでも、僕たち人間は、必ず新たな仕事を見つけ、つくり出すはずだ。
イギリスは、産業革命の結果、おおいに発展した。日本でも同じことが起きるのかもしれない。姿を消す職業は多いだろう。それでも、サービス産業やIT、ゲーム分野などで、新たな職業が数え切れないほど生まれるにちがいない。
先日、僕が信頼する2人の経済巨頭と激論をした。榊原英資さんと竹中平蔵さんだ。この鼎談は、『AIと日本企業』という本になっている。
そこでの結論は、2人とも僕と同じだった。「AIの進化によって、人間のチャンスはむしろ増える」というものである。我が意を得たり、という気持ちだ。
既存のものに縛られる人間は悲観的になる。この2人のように、テクノロジーをおもしろがり、それを使って新しく何かをしようと考える人間は、いつもエネルギーに満ちている。自分も、いつまでもそんな人間でありたい、と強く思った。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年6月15日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。