英国で解明が進む「奴隷制」の記録

奴隷制が廃止された理由には、人道的な見地のほか、労働力の流動化を求める資本からの要請があったことは有名な話だ。奴隷が私有財産のままだと何かと不便であり、工業化の進捗とともに奴隷が労働力の供給源として期待されるようになった。資本主義では好不況が繰り返す。好況時に自由に雇い入れ、不況になると切り捨てることのできる労働力のバッファとして、さらに購買力のある市場としての役わりも持つ「奴隷解放」が求められた、というわけだ。

大航海時代の奴隷貿易は一種の既得権であり、英国はスペイン継承戦争に勝ってこの特権を獲得した。その後、ヨーロッパとアフリカ、北米を結ぶ、いわゆる三角貿易で巨額の利益を得る。エリザベス1世からナイトに叙せられたフランシス・ドレークらは英国海軍の基礎を築くが、海賊行為で掠奪した財宝も同時に英国へ持ち帰る。奴隷と泥棒で得た資金が産業革命の原資になったという説もあるが、その原資や「血の立法」による収奪は、資本の本源的蓄積のカタパルトやブースターとなったに違いない。

表題の記事では、英国の奴隷制の歴史を解き明かしている。私有財産だった奴隷は、所有者の財産リストと納税記録に残っている。米国の俳優であり映画監督でもあるベン・アフレック氏が、自身のルーツを探るというテレビ番組に出演した際、祖先に奴隷がいたことを公表しないよう制作会社へ依頼して話題になったことがある。このように米国の場合、過去の記録を調べれば、誰の祖先がいくらで購入された奴隷だったのかわかるが、英国ではこの種の記録が「負の遺産」として隠されてきたらしい。

英国における奴隷制は1833年に廃止されたが、財産を手放した奴隷の所有者には政府から補償金が支払われた。その額は、2009年の銀行救済まで同国で支払われた補償金の最高額として記録され、こうした記録などを元に奴隷制に関係するデータベース化が進められている。これまで隠されてきた英国でも、奴隷制の歴史が次第に明らかになってきているようだ。誰もが直視したくない過去の「負の歴史」を掘り起こす作業は、どうも世界的な潮流になっているのかもしれない。

the guradian
The history of British slave ownership has been buried: now its scale can be revealed


「カラヴァッジョ展」が国立西洋美術館で開催されます。
弐代目・青い日記帳
このへんのバロック絵画の具象性が好きな人は多いのではないだろうか。フェルメールやラ・トゥール、レンブラントなどとの共通点がある。とはいえ、人気美術展は平日も暇をもてあました団塊の世代でどこもごった返す。あと十数年はこうした状況が続くのだろう。

Hypertension, high cholesterol, other heart disease risk factors increasing In Asia
EurekAlert!
「Hypertension」は高血圧だが、欧米で減少している一方、アジア、とりわけ日本や中国で高血圧が増加している、という記事だ。塩分過多の食生活のせいで、高血圧が原因の心臓疾患や脳溢血などが日本人の死亡率のトップに長く君臨していた。その後、塩分が控えられて高血圧患者が減り、高タンパクの食事が増えたために血管系の疾患も減少する。しかし、西洋風の食生活が一般的になった結果、再び日本で血圧が高い人が増え始めた、というわけだ。

Here’s 240 Years Of United States Army Uniforms In Two Minutes
BuzzFeeD
2分間の動画で、240年間におよぶ米国陸軍の制服の変遷を見ることができる、という記事だ。第一次世界大戦時のヘルメットは、つばがついて底の浅いタイプだったが、その後、頭全体をすっぽりおおう深めのタイプに変わる。これは特に後頭部から首、延髄にかけての戦傷が多かったためだ。戦前のドイツ軍のヘルメットが有名だが、こちらのほうはもっと特徴的でおかっぱヘアのような形になっていた。この動画を見ると、現在の米国陸軍のヘルメットも、ドイツ軍ほどではないが後頭部と襟首を保護するタイプだということがよくわかる。

Australia: Tasmanian tiger ‘sighting’ proves it is not extinct
INTERNATIONAL BUSINESS TIMES
コアラなど、オセアニアには有袋類が多い。この記事では、フクロオオカミ(Thylacinus cynocephalus)の別名、タスマニアタイガーについて書いている。オーストラリアのタスマニア島に生息していたが、1936年に絶滅。イヌ科のオオカミに似ている有袋類で、背中にトラのような縞模様がある。下の動画は、絶滅したはずのタスマニアタイガーが生きていた、というもの。全くの別種なのでイヌなどと交雑した可能性はないが、個体がいるということは複数頭がまだ生きているのだろうか。

Tasmanian Tiger Filmed in Central Tasmania 2012


アゴラ編集部:石田 雅彦