海賊版対策会議第2回の模様をメモします。
マンガが中心話題なのですが、コンテンツ分野でもジャンルにより市場構造はさまざま。2016年のマンガは電子が35%。アニメは配信が19%、動画は4%。音楽は配信が8%で、なんとライブが24%に高まっています。そんな中、電子の海賊版にどう対応するかがテーマ。
正規版流通の取組、削除要請や訴訟、海外との競技、広告対策などブロッキング以外の対策について状況を共有しました。
出版社の努力不足を批判する声もありますが、ぼくは被害者がよくがんばっているという印象です。
出版9団体で構成する出版広報センターが海賊版WGを3月に発足、正規版マークとホワイトリストを作成。出版各社は海賊版への削除要請、広告出稿停止要請、警察との連携などを進めているとのことです。
CODA(コンテンツ海外流通促進機構)のサイト削除要請による削除率はこの1年で91%。しかし応じないサイトに関し、中国政府やブラジルの警察と協議するがラチがあかない状況が語られました。
広告3団体も違法・不当サイト対策をCODAと連携して進めています。ただ、ネット広告市場に多数の事業者が参入し、運用型広告が拡大している状況で、実効性のある対策を打つのもなかなか大変です。
中高生への啓発法として、出版業界は人気キャラによるキャンペーンを張る準備をしているそうです。GoogleやLINEとの連携も進めているとか。一方、上野委員は、映像・音楽と違い出版は閲覧が適法だから、キャンペーンは効果薄ではとの疑問を呈しました。ダウンロード閲覧違法化に話が広がるかもしれません。
長田委員・瀬尾委員は、漫画村のような正規版をいかに作るのか、という大きな問いを示唆しました。知財本部・住田局長も、出版業界横断で作るべきではと示唆しました。ぼくもそれが第一テーマだと思います。音楽・映像に比べ、出版の対応は遅れています。それも共有すべき。
さて、この会議で面白かったのは、ドラゴン桜やインベスターZの作者、三田紀房さんの意見表明。まず、週刊の連載は月250万円のコストに対し収入は同額で、単行本で稼ぐというマンガ家のビジネスモデルを明らかにし、それが電子書籍で構造が激的に改善したことを教えてくれました。ネットは福音であると。
三田さんは、今後、国際競争が激化し、中国の攻勢が強まるとしたうえで、日本の戦略を問いました。ゴルフもサッカーも英国産だが、ゴルフは米国に覇権が移った。サッカーも世界的になったがプレミアリーグなど英国が存在感を保つ。マンガもサッカーのモデルを考えよう、と。
ただ、マンガは「読む力」が必要だと三田さんは言います。読み方=ルールを広げることが大切だと。京都・菊乃井の村田さんが、和食の海外展開にはダシや旨味を味わう舌を鍛えることが大事で、パリに舌を根づかせるのに20年かかったと話していたのを思い出します。
なぜマンガは音楽・映像のような動きにならなかったのかという問いに三田さんは「マンガは右肩上がりで儲かってきたので、著作権に関心がなかった」と言明。マンガ家が権利を管理するのは難しいが、エージェントビジネスがマンガ界にも起こっているとのこと。コルクのことですね。
会議を通じ、音楽・映像の分野では取組が先行しているので、それも参考に出版も対策を進める必要性を感じました。正規版の取組も大事だし、普及啓発を総務省の青少年ネット対策と連動して進めることも重要。これらを含む総合パッケージ対策が求められます。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。