米国の大学に圧力、不都合な講義を中止させる中国 --- 古森 義久

中国政府の意を受けた中国の外交官や留学生たちが米国の主要大学に工作活動を行い、教育や研究の自由を侵害している。この現状は学問の独立への深刻な脅威だ――こんなショッキングな調査報告がワシントンの大手研究機関から公表された。

全米25の主要大学の教職員や学生を調査対象としたこの報告書は、中国側の“工作員”が米国の教員や研究者に対して圧力、威迫、懐柔など多様な手段で影響力を行使している状況を伝えていた。

米国の25の主要大学で調査

米国議会が設立した半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」(公式名称は「ウッドロー・ウィルソン国際学術センター」)は9月上旬、「米国の高等教育への中国の政治的な影響と干渉の活動の研究」と題する報告書を公表した。

同センターは米国議会によって創設され、運営経費の30%は議会から出ているが、学術研究は完全な独立を標榜している。同報告書は、同センターのなかの中国研究部門である「キッシンジャー米中研究所」が企画し、ウィルソン・センターの研究員である若手女性学者のアナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏が中心となり、およそ1年をかけて作成した。

中国当局による米国の教育・研究機関への干渉については、これまで多数の事例が断片的に報告されてきた。だが、今回のように、中国当局による干渉や影響の全体像を150ページという長文で正面から調査した前例はほとんどない。

ロイドダムジャノビク研究員らは調査のために、カリフォルニア大学、ハーバード大学、ウィスコンシン大学、コロンビア大学、ジョージタウン大学など米国の主要大学25校を選び、それぞれの大学の中国・アジア関連学部の教職員ら合計180人から事情を聞いたという。

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