若い市議会議員さんの投稿について色々思うところがあったので再投稿させて頂きます。
東京のみなさん、まだイケダハヤトで消耗してるの?(長坂 尚登さん・豊橋市議会議員)
この文章中に冒頭に出てくる「研究者」の私のことのようです。自分は研究者の肩書しか表に出していないの勘違いされていると思いますが、自分も経営者の端くれなので「まさか「最近、年商2000万前後になった」限界集落に住んでる個人事業主のにーちゃんを羨ましいと思うわけないだろ?もうちょっと大人の経営者感覚と仕事観を持って市政運営に携わってほしい」と思ったことは、脇に置いて内容について触れていたいと思います。
以下は政策的なお話。
都市部の出生率が低い原因とは何か
国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国調査(夫婦調査)」(2011年)によると、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(60.4%)ということです。つまり、十分な頭数の子どもを持つか持たないか、ということはお金の問題であると言っても良いでしょう。
件の市議会議員さんは、 市区町村別にみた合計特殊出生率(厚生労働省)を参照して、出生率が高い地方よりもむしろ出生率が低く高齢化が進む東京が備えを十分にするべき、という議論を展開しています。
このような議論は原因と結果が逆という典型的な事例です。つまり、「東京都から異常な金額の金を地方に移転している」のだから「東京の現役世代から子育て費用が無くなって当たり前だ」ということです。
都市の暮らしの価値観なども現役世代に十分にお金が足りていれば変わることもあると思います。東京の出生率が低くなる原因は諸説あると思いますが、何よりも地方が東京都などに住んでいる現役世代からお金を奪っていることを忘れるべきではありません。
沖縄県で出生率が高い理由をお金の面から考察する
たとえば、平成25年度・人口一人あたりで見た財政移転の事例として沖縄県を見てみましょう。沖縄県への国庫支出金は264千円(全国1位)、地方交付税は254千円(全国17位) 、両者の合計は518千円(全国 6位)となっています。沖縄県の平均世帯人数は2.5人程度であるため、1世帯につき「年間約・130万」を国から受け取っていることになります。何もせずに、毎月1世帯10万円以上のお小遣いが貰えるわけです。
子どもを一人育てる時にかかる月額の平均費用は3~5万円程度でしょうから、沖縄県の人は子育て2人分くらいの費用は毎月財政移転を受けていることになります。
若者の都市流出は交通インフラが整備されることによって加速していくでしょうから、沖縄のように少し離れたところに若者が残って子どもが増える事例もあるかもしれません。しかし、考慮されるべきことは沖縄県の子育てのためのお金は東京などの都市部で働いている人から税金で強制的に移転して手に入れたものだということです。
人口減少スパイラルから脱却することを真剣に考えるべき
地方で子どもが生まれる⇒成人したら東京に出る⇒東京から地方に財源移転する⇒東京で出生率低下⇒地方で(前より少ない)子どもが生まれる・・・、という人口減少スパイラルへの対応を考えるべきだと思います。
県内・域内GDPに対する政府支出が高い半社会主義化した息が詰まる出身地に、若者が成人した後も留まらないことは数字が証明しています。生まれる場所は選べないので最初は地方に生まれても多くの若者は都市を目指して移動します。若者にどれだけ地方移住を促進してみたところで雀の涙のような人口移動しかないでしょう。
真剣に考慮するべきは、東京という若者が集住している地域にお金を残して、この地域の出生率を上げていくということだと思います。また、海外からの移住者の受け入れ促進を通じた即効性がある人口増加を大規模に進めていくべきです。
東京の高齢化への対応として地方に高齢者を送りだすという話は介護人材などが根本的に不足するために絵に描いた餅です。地方創生で出生率を上げるなどの社会主義的な発想は一時しのぎで全体から見れば大きなマイナスを生み出すでしょう。
地方活性化伝道師や地域おこし協力隊を止めて都市部への若者集住を促進すべき
現在、国の政策として、地方活性化伝道師や地域おこし協力隊などの税金を使った人材・若者の地方への送り出しを推進していますが、貴重な生産年齢人口(かつ経験不足の若者)を生産性が低い地方に送り出すことに非常に疑問を覚えます。しかも、若い段階で国の税金で仕事を行うと民間経済を良く分からない勘違いした人材が育ってしまう悪影響もあります。
仮に地方創生を実現していくとしたら、それは民間経済の文脈で地方が活性化することであり、国の予算で若者を送り出すのではなく、自然な経済活動の結果としてもたらされるべきものです。
税金で推進されている地方創生は、地域から活力を奪い、更に足腰を立たなくする結果を生み出すことになるでしょう。若者には都市で民間のビジネス感覚を身に付けさせることが第一であり、その後に行きたい人が自発的に地方に行けば良いのです。
渡瀬裕哉
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事