新潟市長選と鷲尾議員の自民への接近を考察する

八幡 和郎

新潟市長選は28日、投開票され、元参院議員の中原八一氏(自民支持)が、保守分裂のなかで野党系の小柳聡、与党系の吉田孝志氏、飯野晋氏を破り、初当選した。

自民県連はいったん調整を諦めたが、党本部主導で中原氏にてこ入れして腕力を見せつけた。小沢一郎氏が非常に強い影響力をもつ新潟県で、知事選挙についで新潟市長選挙で自民党が勝利したことは、沖縄での敗戦の傷をいやすものであるし、小沢氏にとっては手痛い敗北となった。安倍首相が中国との関係改善に成功したことも、攻めどころがひとつ消えたことを意味しており、辛いところだろう。

新潟市長選初当選を決め、挨拶する中原氏(NHKニュースより:編集部)

さて、この選挙では、衆議院議員の鷲尾英一郎氏が中原陣営についたことが決め手になったといわれる。もともと、民主党でも保守寄りの人だが、希望の党の設立をめぐる騒動でのなかで、前回の総選挙では無所属で当選している。

鷲尾氏

しかし、こうなると野党で鷲尾氏の居場所はないから、遅かれ早かれ自民党に合流するのでないかともいわれている。もともとの考え方からしても、保守寄りの人なので、不思議はないし、見識もある人だが、私はあえて、こうした鞍替えに異を唱えたい。

すでに、『「立憲民主党」「朝日新聞」という偽リベラル』や『「反安倍」という病』(ともにワニブックス)でも書いたとおり、私はやはり中道左派と中道右派の二大政党があって、政権を交代で担うのが基本形であるべきだと思う。そして、憲法はいい加減、公明党や旧民主党の穏健派が納得出来る程度の温和な内容でいちど改正して不毛の論争に終止符を打った方が良い。

与党の派閥争いで政権がひんぱんに変わった中選挙区時代の政治がどれだけ国益を既存した考えた方がよい。

それでは、どうして、日本で二大政党の一翼を担う健全野党が成立しないのかといえば、それは、野党がかつての社会党と同じように、政権を奪取するのでなく、憲法改正を阻止することを目的とする、つまり、両院どちらかで三分の一を確保すればいいという戦略をとるからだ。

民主党政権の瓦解ののち、民主党はもっと中道寄りになって政権奪還をねらうべきだったのに、安保法制の熱狂のなかで左によってしまった。

そこで、希望の党に衣替えしようとしたが、不手際で立憲民主党の誕生を許し、しかも、これが野党第一党になってしまった。

その過程で、私は自民党が自党の議席数を増やすために、あえて希望の党を主敵にして立憲民主党を利したことを批判したことは当時のアゴラ記事を診て頂いても確認出来ると思う。

たとえば、自民・公明・維新・希望で大連立を組んで憲法改正を片付けてはどうかという提案もしていた。しかし、どうして、野党が左に寄ってしまうのかを考えたとき、少し真っ当ないい政治家がいて野党のなかで浮いてくると、自民党がスカウトしてしまうというのも理由だ。

たしかに、そういう人たちには使える人材が多いし、選挙にも強いから短期的には自民党にとっては便利だ。しかし、そうやって健全野党が育つのを邪魔していることが、日本の政治を悪くしていると思う。むしろ、よほど例外的なケース以外は、元野党党員はお断りでもいいのでないかと思う。

そのあたり、党内でもしっかり議論したほうがよいのではないか。

追伸:ちょっと似た問題に難民問題がある。中東などからの政治亡命者や難民を安易に受け入れていると、当該国の浄化能力を損なうのではないか。もちろん、冷戦時代の東欧ソ連のようにソ連の圧力を逃れてきた人を保護するのはいいが(東欧ではインテリに亡命されることを嫌っていたという事情もあった)、別に迫害を受けているといっても生きていけないほどでないケースでの難民受け入れなどするのは、悪い独裁者を喜ばしているだけなのではなかろうか。

「立憲民主党」「朝日新聞」という名の偽リベラル
八幡 和郎
ワニブックス
2018-02-26